デート改変①
遅れて浮上!
ちゃんと生きてました。
家を出てからは前回とほとんど変わった出来事は起こらなかった。
駅に着いたのは,待ち合わせ時間の15分前だった。
にもかかわらず美麗は駅前のオブジェの下で待っていた。
「おーい。美麗。お待たせ~」
ぼくはそんなことを言いながら近づいて行った。
美麗は僕がこんなに早く来るとは思っていなかったようで,あわてて声のした方を見てびっくりしたが,すぐに笑顔に戻り
「びっくりした~。まさかりょうがこんなに早く来るとは思わなかった。でもうれしいな,りょうの方も楽しみにしてたんだね!」
そう言って美麗は先ほどの笑顔よりも眩しい笑顔をこっちに向けて来た。
「ああ。もちろん。楽しみにしてたさ。ん~。でもちょっと早いし駅前に喫茶店があったから,そこで少し時間つぶそうか」
僕はそう提案してみた。今までの変化でもかなり影響があったので,これくらいするとどんな感じになるのか少し試してみたかった。
「ん~。まぁ時間は十分あるしそれもいいか。それじゃ行こ~!」
よかった。断られて即行で遊園地行ったら,前回とあまり変わらなかったから心配だったが美麗は結構のりのりで承諾してくれた。
そして提案した僕よりも先に美麗が手を引っ張って「早く早く!」と言って喫茶店の中に入って行った。
引っ張るなよー。ちゃんと付いて行くからさー。みたいなやり取りっていいな。
っと心で思ってた今日この頃。
僕たちが入って行った喫茶店は平日の日中と言う事もあって,あまり人がいなかった。
「いらっしゃいませ。二名様ですね。こちらへどうぞ」
店員が席に案内してくれて
「注文がお決まりになりましたらお呼びください」
っといてまた入り口前に戻っていた。
僕たちはメニューを見て・・・と言っても余りがっつりしたものは食べる気にならないし僕はカフェモカを頼んだ。・・・なんだよ。僕苦すぎるの苦手なんだよ。ついでに言うと亮輔もそうみたいだし。
美麗はと言うと,男前にブラックコーヒーを頼んでた。・・大丈夫だよ。なんか注文する内容逆転してっけど。
注文も決まったので僕は店員さんを呼んでさっきの注文をした。救いだったのは美麗が追加で小さめのフルーツタルトを頼んだ事だった。まぁそれでも,内容的にはやっと,トントンぐらいだったけど。
「りょうって,ニガイの苦手なの?」
「ああ,いっつもMAXコーヒー飲んでて。あの甘いのに慣れてしまってね」
「そうなんだ~。私は甘いものに合わせて飲むからブラックにしたけど,単体だったらさすがに無理かも知れないね~」
よかった。これで単体でブラックOKって言われたら,もう僕の面目立たないしな。
そのあと二三会話をしてから,店員が注文した品を持ってきた。
カフェモカの甘い香りに混じって,ブラックの酸味と苦みが混じった香りが,肺の中にしみ込んできた。
その中にフルーツタルトの甘酸っぱいにおいが混じってきた。
ろくな朝食を取っていなかったので,今更になってお腹が減ってきたが,この後のため、あまりお腹には物を入れないようにしておいた。
「ごゆっくりどうぞ」
店員はぺこりと礼をして下がって行った。
僕はカフェモカを一口口に含んだ。カカオのほのかな香りとマイルドな甘さが,口いっぱいに広がる。でも,少し苦かったなぁ。
美麗は目をキラキラさせて,フルーツタルトを一口食べて,飲みこんだ後、一口ブラックを飲んだ。少し顔をしかめたが「おいしい!」と言ってタルトとブラックを交互に食べて行った。
僕はそんな美麗を見ながら一口一口,ちびりちびりと飲み進んで行った。
会話がなかったのはあまりにも夢中にタルトを食べていた美麗が可愛かったから,その顔をずっと見ていて声をかけていなかっただけである。
ただ,途中で美麗が「なんか顔に付いてる?あ!もしかして一口欲しいの?」
っと言ってきたので僕は遠慮がちに一口貰った。
やべ旨いぞこれ!やっぱ頼むべきだったかな~。
そうして一服していたら,結構いい時間になってきたので僕たちは店を出た。
「おいしかったね~。あのタルト」
「ああ,そうだな」
そんなかけ合いをしながら駅に行き,切符を買って電車に乗った。
11時20分発の電車だった。
*
電車でも,さっきの喫茶店の話は続いていた。
「っていうか,あそこの店の服結構かわいかったね!私もあそこでバイトしてみようかなぁ~」
「確かにかわいかったな。美麗もけっこう似合うと思うぜ」
「なに?お世辞?でもありがとう。そうだね~、私も高校の時は,ずっと動きやすい服とかしか着た事無かったし。実はああいう服とか憧れてたんだ」
そういう彼女を改めてみると最初に気づくべきだった事に今更ながらに気が付いた。
美麗の服が前回と違う。
前回はどちらかと言えばかわいい系で,ピンクの花柄ワンピースにお腹くらいまでの丈の薄手の白いカーディガン風のものを羽織っており,胸元にはアシンメトシーに傾いた小ぶりのハートのペンダントを下げ,小指にピンキーリングを付けていた。
腕時計は白の皮ひもに小さな時計盤が付いてあるタイプだった。
だが今回は全くもって違う。なんで気づかんかったんかと言うと,わかんない。
美麗の顔に見とれていたのかな。キリ!
そんなこんなで,今着ている服装はと言うと,なんとも動きやすそうな服装だった。下はハーフパンツに足元はランシュー。それでも足にゴールドリングを入れているところに彼女なりのこだわりが見える。上の方は花と唐草の模様がランダムにプリントされたシャツに,丈の長い見た感じだと太もも下までくらいの長さのシンプルなデザインのシャツを羽織っていた。胸元には長めの革ひもに、トップにトルコ石をあしらったインディアン系のものを下げていた。
なんちゅーか男みたいな感じだな。まぁ,前よりもこっちの方が似合ってるけどね。
そんなこと考えながら僕は一つ伝えないといけない事を思い出して,とりあえずの話の区切りを見付けて,
「そう言えば俺って遊園地行ったこと無くって,ついでに言うとあんまり絶叫系に自信ないんだよね~。」
「あ。そうなんだ。それじゃあ、あんまり無理しちゃだめだし絶叫系は極力やめにしよっか~」
「わりぃいな」
とりまジェットコースターは回避。
夢の中の女性が言っていたけど,体が慣れるまでとか,あんま信用ならんし,こうしとけば絶対的に乗らなくても大丈夫だろう。
「でも残念だな~。私結構絶叫系好きなんだけど・・・」
「・・・知ってるよ」っと僕はつい漏らしてしまった。
「え!私、この事りょうに話した事あったっけ?」
「い,いや,美麗の性格上そんな感じがしたってだけ。言葉のあやだよ」
「なんだ。そうか。それじゃあ,今回はだめでも次回乗るために軽めのものから挑戦してみよう!今日は」
・・・なに!回避できたと思ったら,また問題が浮上してきたぞ!
これまでは,なんとなしで変化したのに,
今回は変化したものの、
余り確実な問題解決にはならなかったな。
なにか,他にしないといけない事でもあるのか?
そんなことを考えていると電車は遊園地近くの駅にとまった。僕たちはまだ少ししゃべりながら,電車を降り,駅を出て遊園地に向かった。
次回もあっぷ遅れるかもです……………。
すんません。