第6魚 12月23日 終
23時45分
「どうしようかな。これってどう考えてもサービス初日に手に入れるようなスキルじゃねぇよな」
ヒロは技術球(統率)を見ながらぼやいている。サハギンリーダーを倒してから10分程経過し間もなく寝る予定時刻の0時になろうというところである。
もちろんヒロが考え事をしているその後ろのほうにある崖には普通のサハギンが居座っている。
「まあいいか。戻る時に死んでデスペナで消えても困るし使っておこう。ポチっとな」
《スキル(特・技)統率がリストに追加されました》
「これでよしっと。とりあえずサハギンからゲットしたアイテムもいっぱいあるし予定よりはちと早いが装備を整えてしまおう……と思ったけど、問題は此処から戻れるかどうかと次に此処まで来れるかどうかなんだよなぁ…。
島を一回りした時も転移門に準ずるものがなかったし。一応マップで大体の場所だけでも覚えておいたほうがいいよな?」
メニュー画面からマップを表示させるとテアトル到着当時には記されていなかった魚神島が表示されていたのだ。
「なるほど!一度確認した場所なら隠しエリアだろうとマップ表示は可能なのか。これなら次来る時に何度か死んだとしても目指すことはできそうだ。デスペナがきつそうだけどな」
とりあえず試練2の達成報告を済ませると試練3を受けるかの確認が出たのでキャンセルしておいた。
これで一応〔市民3つ〕か〔王1市民1〕があけれるのだが無事に持ち帰れる保証が無いため今回は諦める事にしたのだ。
ヒロが魚神島に上陸した浜辺まで戻ってくるとそこに大きな魚っぽいのがいるのだが……。
その大きな魚っぽい何かは寝ているようでヒロの事に気づいてない為ヒロはこっそりと横をすり抜け……
ようとしたのだが次の瞬間魚っぽい何かが寝返りを打ちヒロの方へ倒れこんできたのだ。
「えっ?まじで?これマジでかーー!!いぎゃぁぁぁぁーーーーーーー」
プチッ……。
0時05分
気がつくとテアトルの街の神殿だったとさorz
「あぁ、ひどいめにあった。まさかあんな死に方をするなんてな。まあ死んでしまったもんは仕方ないから受け止めるさ。技術球使っておいてよかったぜ全く。…それよりサハギンドロップは無事かなっと」
ひーふーみーよー……。あらら1/4程アイテムなくなってるかぁ。
まあいいさ。とりあえずショップに行って売り払って装備整えてしまおう。
テアトルの町のNPCショップへ行くとムサイおっさんが店番をしている。
アイテムを売りたいことを言うと港町で海産物系素材を売っても二束三文にしかならんぞ?という
ありがたーい助言を頂いた俺はテアトルで売ることを止めて転移門で最初の町アーリルへ戻ったのだ。
0時15分
「て訳でこの素材売りたいんだけどいくらになる?」
ヒロはアーリルの街の素材屋にサハギンドロップを並べて聞いた。
『ほう?サハギンドロップか。港町からわざわざ持ってきたんだな、ご苦労さん。
あっちでどう聞いたか分からんが、このアイテムなら単価40s~60sだな。リーダー素材もあるようだからそいつが100sってところだな。どうだ売るかい?』
「てことは全部で10000~12000の間ってところか。武器とか揃えられるか微妙な所だな。先に値段調べておけばよかったぜ」
少し考えたが取引OKを押す直前大声で呼び止められ手を止め振り向くとプレイヤーがいて何やら手を振っている。
『そそそ、そこの魚っぽい種族の人ぉぉ、ちょっと待ってぇぇぇ~!!』
よく見るとそこには長く蒼い髪で目がパッチリしていてそこそこの主張をするパーツを持った可愛い系の女性プレイヤーでおそらく俺に向って『その取引待ってー』と叫んでいるようだ。
NPCの店主との間に開いたウィンドウはそのままに女性プレイヤが息を整えるのを待ち俺は話しかける。
「どうかしましたか?」
『あの突然ごめんなさい。私はハヅキといいまして鍛冶を主とした生産をメインに活動しているものです。本日から正式サービススタートということで狩りを終えて素材の売却に来た他のプレイヤーさんから素材を分けてもらう代わりに、武器等に加工して返すということをしてるんですけど……もしよろしければあなたの持っている素材を少しでいいので分けていただけませんか?』
生産職メインかぁ。どんなゲームでも生産職にとって初めは育成に関しては鬼門だから大変だろうな。
まあそういうことなら別にいいかな。ただのクレクレちゃんじゃないみたいだし俺にもメリットがあるし。まあ可愛いからクレクレちゃんでもいいんだけどな(笑)
「そうですね。俺は別に構いませんよ。でもどういったものが作れるのか聞いてからでないと、お渡しするのは厳しいですよ?」
俺の了承する返事にハヅキさんは喜びの表情をみせる。可愛いな。同じ位だと思うけど何歳くらいなんだろう?
あ~でもリアルのこと聞くのはマナー違反だしなぁ。…なんて事を考えている俺はダメな男なんだろうか?
『ほ、本当ですか!ありがとうございます。それじゃあ早速なんですがどういった素材を持っているか見せてもらってもいいですか?』
おれはすぐにNPC店員との取引をキャンセルし、ハヅキへ取引申請を送りサハギンドロップをドサドサッと表示させる。それも見て目を丸くしているハヅキ。
『え?これってどこの素材なんですか?こんなの見たこと無いですよ?』
俺は一応秘密としておいた。だって魚神島の事バレたらもったいないじゃんか。
「で、ハヅキ……さんは武器系統しか作れないんですかね?」
『あっ、ハヅキと呼び捨てで構いませんよ。…で質問の答えですが、武器と道具と薬作りのスキルで後は生産じゃないスキルですので秘密です』
「へー武器も道具も作れるんだね。すごいな。じゃあ俺がこの素材のうち……使えそうなものを30個ずつ位渡すから槍と釣竿を作ってほしいんだけどできる?」
俺の要望に少し考え込んでいたが、ハヅキは何とか頑張りますというので俺は素材をハヅキに渡しておいた。
『はい。それではきっといい物を作って見せますね。えっとそれでフレンド登録させてほしいのですけどあなたの名前はなんていうんですか?』
む!俺としたことが名乗り忘れていたなんて一生の不覚!あわててハヅキに名乗りを返した。
「やぁ~やぁ~我こそは魚人族のヒロであるぅぅぅ!」
と戦国時代っぽい名乗りを返すと一瞬呆気に取られていたが次の瞬間ハヅキに笑われてしまった。
……ふむ、空気を読める女だなぁ。ますます気に入ったさ!
これから素材アイテム手に入れたらハヅキのところへ持っていこう。絶対にだ!
ハヅキとフレンド登録をしたあと依頼品ができたら連絡するといわれそれを了承し別れた。
間もなく深夜1時になる時間だ。さっさと寝よう………おやすみ~。
変更なし。
技術球を使用しましたがスキルを取得したわけでは無いのでお間違えないようにお願いします。