第67魚 1月13日~1月15日①
すみません。火曜日の投稿はできないかもしれないので、2話目として今日投稿いたしました。
1月13日 午前8時00分
昨夜、メリルからハヅキの現在の状況を聞いたヒロは、【看破】を取らせたことを後悔していた。
……いや、あの槍を見せたこと……が正しいかもしれんな。それさえしなければ、きっとハヅキが引き篭ってしまうような事態にはならなかったはずだからだ。
メリルから聞いたところによると10日の夕方ヒロが預けた槍を【看破】したハヅキは茫然自失となりログアウト前にメリルに槍を手渡しログアウト、そのまま自室に引きこもってしまったとのこと。
その日から食事をすることもなく、家族が非常に心配しているという。
「どう考えても俺のせいだよな……」
洋もいつもどおり早く起床したがいつものようにフラグメントにログインする気が起きずメリルから聞いた葉月の状況について考えていた。もう3日も引きこもっており食事もろくにとっていないとなれば普通の精神を持つものなら心配して当然だ、……それに俺自分が発端となっただろうからな。
しばし考えた後、洋はメリエル宛に携帯メールを送信。その返信は素早かった。
『そんなに心配なら今日お昼過ぎにウチへ来なさい。あの子も洋がくるなら反応を示すかもしれないから』
メリエルとのメールのやり取りで13時に駅前で待ち合わせと決めたヒロは、時間が来るまでログインすることにした。
1月13日 9時00分
ログインするとそこはアーリルの街だ。すぐにクトゥルフと話すため魚神島に向っても良いのだがまずは色々と確認するべきこともあるので先にそれを済ませることにした。
【新陣営作成】:今までにない陣営を作る事ができる。陣営の方向性を決めることができる。
【陣営勧誘】:他陣営から人員を勧誘することができる(0/5)
【陣営クエスト作成】:他の陣営同様NPCから相談を受け陣営クエストとして作成できるようになる。
上記は大雑把な説明だが、詳しくヘルプを見るとこうなる。
【新陣営作成】の作成条件は力ある者から認められた人が作ることができるようになる。大抵の場合、国もしくは巨大組織内で活躍した上位ランカー。初期所有資源は少なく全ての資源を奪われた場合、その陣営は消失する。
※ヒロの場合は、強大な力を持つ魔王2名に認められたため指輪にこの固有能力が表示された。
そして現在ある各陣営の方向性だが
【空の陣営】の場合は《迅速な行動》・《資源ポイントの誘致》
【大地の陣営】は《新資源探求》・《戦いによる資源奪取》
【海の陣営】は《新資源探求》・《防衛力強化》
となっている。
ここで予想がつくだろうがやはり【大地の陣営】は人が多く一番強い勢力のようだ。
次に【陣営勧誘】だがこれは説明文どおりだな。他の陣営から数人だけ自陣に引き入れることができるようになる。当然、有能な人を引き抜くのが基本だが知り合いで固めても良いだろう。その辺りは陣営の主が決めることなのでどうしようもない。
最後に【陣営クエスト作成】だがこれは、色々な場所にいるNPCから話を聞くことで作成可能になる。(例えば、漁場(猟場)でモンスターが大量発生して困っている……などだな)
NPCと仲良くなることで作成できるクエストは増えていくので、NPCとの交流も密にしなくてはならない。
「ふぅ、思ったよりも大変だな。だが今日中に陣営を作って参加登録を済ましておかねぇと明日からの《奪陣武闘祭》に参加できねぇもんな。……別に毎回、出場し続ける気はないんだがどんな物か位は知っておきたいからな。それに作ったとしてもすぐに陣営消失とか悲しいもんな」
続けて行ったのは、アクセサリスロットが4つになったことでつける装備を考えることだ。
新年イベントでアクセサリは結構入手しているのでどれをつけるか迷うな。
〔孤独のリング:一人で行動する際ステータスに補正がかかる。効果ソロ時攻撃力+20・ソロ時モンスター遭遇率アップ〕
〔無情なる指輪:凄腕で冷酷なアナタにお勧めの逸品!効果:一撃でモンスター討伐・PK達成時30分間攻撃力+10 効果は5回分まで重複する〕
〔絶海の指輪:海に生きる亜人種が作り上げた指輪で水に関する場所で行動時に良い方向にも悪い方向にも補正がかかりやすい。
効果:水中で行動する際、状態異常攻撃にかかりやすくなるが、状態異常中は攻撃力が2倍になる〕
これに六海星封神の指輪★★を装備すれば4つだな。さすがにブーストリングは使わなくなっちまったなぁ。長い付き合い?だったが売り払っちまうか……。
……そういえばハヅキに頼んだアクセサリが倉庫に入ったままになってるから後でそれも確認しておくか。
11時15分
ヒロは魚神島で巨大魚と相対している。その足元には件の亀もいる。
『やっときたのね。私ずっと待ってたんだよぉ!ダーリン!』
「だ、誰がダーリンだ!知らない間に夫婦設定されてるし意味わかんねぇから説明してくれよ!」
『むぅ、そんなに怒らなくてもいいじゃない。あの亀ちゃんをこの島で育てる為に必要な措置だっただけだから、気にしないでいいわよ。亀ちゃんが大人になったらこの関係も切れるからね……あと亀ちゃんの名前はアナタが決めてねダーリン』
ダーリンダーリンと五月蝿いクトゥルフを無視し、亀のステータスを開くと名前の設定ができるようになっていたので必死に名前を考えるヒロ。
5分(短い)悩んだ末に決めた名前はこれだ。
タイラントタートル(子):大海亀の子供。生まれたばかりで戦闘能力も生存能力も無いのでしっかり面倒を見てあげましょう。
名前:タルト
生息地:魚神島 親:(トリトーン)ヒロ &(深海神)クトゥルフ
好物:海産物全般(高品質アイテムだと成長速度が上がる)
成長度:2200/50000 満腹度:50/3500
この亀はオスらしいが悩んだ末タルトとなる。名前の由来など特に意味はないぞ?甘そうとか思わないでくれよ?タルト自身は名前をもらえたことで喜んでいるし問題なかろう。喜んでいるついでに満腹度が非常に減っている事に気づいたのでまずは来る時に倒した島周辺モンスターの肉を食べさせ、満腹度が300を超えたあとは、昨日と同じように遺跡内だけでなく島中にエサを撒き散らしておいた。この行為をタルト自身は遊んでくれていると勘違いしているようで嬉々として遺跡の外へエサを探しに行ったのだった。
その後クトゥルフと世間話をすると陣営を作成したらこの魚神島やその周辺海域を初期の資源として良いとの事。しかしなぜクトゥルフはヒロが陣営を作ろうとしていることに気づいたのだろうか……それは一切の謎である。
12時00分
現在、洋は待ち合わせの駅に向うべく家を出たところだ。葉月の家に行くので途中で手土産を買っていこうと思い早目に家を出たのだ。
手土産にはお菓子セットを用意し、葉月本人にもお詫びの意味もこめてあるものを購入しておいた。
12時40分
待ち合わせ場所には20分前にも関わらず既にメリエルが待っていた。メリエルは洋に気づくと安心したような顔を浮かべながら近づいてきた。
「よう、メリエル。今日は案内よろしくな」
『こんにちは、洋。男にしては珍しく早く来たので感心したわよ』
どうやらメリエルの知り合いの男達は時間にルーズらしい。洋はハハハッと苦笑しながら本題に入った。
「早速で悪いが葉月のところに案内してくれるか?あれからどう考えても俺のせいで引きこもってしまったのなら謝らなくちゃならん」
『……別にあなただけの責任じゃないけど、葉月のところへ行くのは賛成よ。じゃあ、こっちにきて』
メリエルに案内され電車を何本か乗り継ぎ到着した駅からさらにバスで移動をする。移動時この辺りではメリエルは目立っており(後日知った話によると葉月の家自体が地元の有力者らしくそこに居候しているメリエルも目立っているのだ)一緒に行動している洋も凄く注目を浴びた。
バスで揺られること数十分し葉月の家へ到着し洋はまず敷地の広さに驚く。メリエルは勝手知ったるなんとやらで敷地内を移動していくので慌てて洋も追いかける。
たどり着いた葉月の家の本邸をみて洋はその場で固まってしまう。敷地から予想はできていたが大きさが半端なかったからである。
『何してるの?早く行くわよ?』
とメリエルに声を掛けられるまで動けなかった。本邸に入った二人は使用人らしき人に案内され大きな部屋に入る。そこでメリエルはちょっと待っててと言い、部屋を出て行くとしばらく後にお茶のセットを持って戻ってきた。しばらくお茶をしていると黒髪の綺麗な妙齢の女性と小学生らしき男の子が入ってきた。
『こんにちは。始めまして、私は葉月の母親の詩織と申しますの。こっちの子は葉月の弟で大樹といいます。……今日は葉月のことを心配して来てくださったということで本当にありがとうございます』
「えぁ!?……コホン。すみません。私は海島洋と申します。葉月さんとは先月の23日からお話をする間柄となってます。今回はおそらく俺……私の発言のせいでこのような事態になったと思い謝罪もかねてまいりました」
母親の詩織さんに丁寧に挨拶をされた洋は慣れない丁寧語で返しているとその横でメリエルがブフゥッ!と吹き出し笑い始めた。
『プッ…あははは。なによヒロ。アンタがそんな丁寧語を使ったらおかしすぎるわよ!詩織母さんならアンタがいつもどおりの話し方をしても問題ないわよ……はぁ~苦しい』
「ちっ、メリエルぅ後で覚えてろよ~」
『フフフッ、メリエルの言うとおり言葉遣いなど気にしないで良いですよ。あと謝罪と言ってましたがおそらく家の問題の事も含まれてますから海島さんだけの責任じゃないので気にしないでくださいね』
『兄ちゃんとメリエルって仲が良いのか?もしかしてメリエルねぇちゃんのコレとか~?』
メリエルと言い争いをしていると弟の大樹が親指を立てながらニヤニヤしている。
……小学生なのにこういうことを覚えるのは早いんだなと感心した洋であった。
『そ、そんなことああああるわけ無いじゃないの!大樹のバカ!』
その大樹のジェスチャーをみたメリエルが真っ赤になり慌てたことで更にからかいがヒートアップしたのは内緒と言うことになっている。もちろん洋と詩織さんはそんな二人を生暖かい眼で見ていた。
お茶の時間が終わると洋はメリエルに案内され葉月の部屋に向う。部屋の前には食事が湯気の立っている状態でおいてあり用意されたばかりとわかる。詩織さんが言うにはお菓子の袋は減るがゴハンは減っていないというので洋はもってきたお菓子セットを葉月の部屋の前に置き様子を見る。お菓子を置いたことを知らせるのはメリエルにお願いし、洋が来ていることはまだ葉月に気づかれていないはずだ。
ちなみにマスターキーを使えば葉月の部屋には入れるらしいが詩織さんはまだそこまでしないと言う。
心配なら無理やり踏み込むことも必要だと思ったが、そこは葉月の家庭の問題なので洋がとやかく言う筋合いは無い。
なのでここは釣りのようにエサ(お菓子)を用意し、部屋の扉を開けお菓子の回収をするときに踏み込むことにしたのだ。……なに?年頃の女の子の部屋に踏み込むなって?大丈夫だ詩織さんの許可は得てある!
そんな訳でエサを設置して30分ほど経過し、ご飯はもうすっかり冷めてしまっているのでそれは回収してもらった。ご飯を下げた後、しばらくするとようやく部屋の中から手が現れお菓子の袋を手繰り寄せている。それを確認した洋とメリエルはドアに向って走り出す。
「御用だ!!!葉月ぃ!」葉月の部屋のドアに手をかけしまらないように引き戻す。
『ひぇ?なな、なに?……って…ヒロさん……? っ……キャアァァァァァ。なんでヒロさんがここにいるのよぉぉぉ』
『落ち着いて葉月。洋はアナタを心配してきてくれたのよ!』
『イヤァァァ、こ、こんな格好してるところを見ないでぇぇぇ』
こんな格好と言うことからわかる様に、葉月の服装は、見事に引きこもりファッションである。
必死に部屋のドアを閉めようとする葉月を必死に宥めるが聞く耳を持たなかった。
「それなら、葉月の部屋に入るしかないな……」
それを聞いた葉月は自分の部屋の惨状に気づき、一瞬我に返ると慌てて
『だだ、ダメですっ!部屋に入るのだけは許してくださいぃ』
「なら葉月が部屋から出てきて話をしてくれよ。そうじゃないと……」
『う、うぅ……分かりました。ちゃんとでますからせめて着替えだけはさせてください……』
「そう言ってドアを閉めてまた閉じこもるんだろ?それはダメだぜ?」
『!!ヒロさんがやっぱり意地悪です……。私にあんなことをしておいて!』
「あ~やっぱ、怒ってるよな。それも謝りたいからちゃんと話をさせてくれよ」
『……っ……分かりました』
その後メリエルが葉月の部屋に入ると言う条件で着替えをしてもらい、身だしなみを整えて部屋から出てきた葉月は……うむ、やはり可愛いな!フラグメントの時と違い、素体の可愛さが滲み出ているぜ。
あの手この手で説得(脅迫じみた言動含む)で3日ぶりに部屋を出てきた葉月を見た詩織さんは喜んでいて、何度もお礼を言われた。大樹君はメリエルにやったように葉月に対しても親指を立てるジェスチャーをして葉月に怒られていた(顔は真っ赤で怒っていたのか照れていたのか不明だ。後者なら嬉しいのだがね)
落ち着いた状態になり改めて葉月に謝罪をし『凄く傷ついたんですからねっ!』と文句を言われながらも許してもらえた。お菓子と一緒に用意しておいた謝罪の為の品物を渡した時の葉月の笑顔は忘れられないぜ!
ちなみに傷ついた内容とは俺に【看破】を勧められたことではなく、その結果知ることになった運営コメントによってだった。……なのに何故俺が責められたのかが解せぬ。
今日からフラグメントに復帰するという葉月と今日もログインすると言うメリエルに新陣営についての話をしてみたところ二人とも勧誘してくれるなら入ってくれると言ってくれた。
二人は【海の陣営】に属しているが、最近は陣営関連の行動をしていなかったため、特に愛着も無いとのことだ。これで後3人まで勧誘できるな…と帰り道に思い出し悪い笑みを浮かべたのはこれもみんなには内緒だぜ?
そうそう、葉月の家から帰る時にもイベントが起きたんだった。葉月の父親が丁度帰宅し、俺を見て発狂したのだ!『娘は渡さんぞぉぉぉ』とか言ってたけか……。詩織さんと葉月の二人に叱られたあと、詩織さんに本邸内に連行されていた姿に哀愁が漂っていたな。
こうしたイベントを経たあと葉月とメリエルに見送られ帰宅したのだった。
ステータス
名前 ヒロ
性別 男
種族 トリトーン(魚神の僕)
体力 1130(150+780+200)
精神力 620(80+500+40)
攻撃力 441((75+366))
装備
武器:禍つ神の呪槍
サブ武器(非表示):トリプルホーントライデント
頭:水棲の額当て
体:鮫革のウェットスーツ
足:ヒレ(着脱不可)
アクセサリ1:六海星封神の指輪★→六海星封神の指輪★★new
アクセサリ2:孤独のリング
アクセサリ3:無情なる指輪new
アクセサリ4:絶海の指輪new
(武)上級槍技能LV3
(魔)上級水魔法LV1
(特・武)武芸百般 LV12
(技)看破 LV44
(技)水中戦闘 LV49
(技)体力増強 LV21
(特・技)水の加護 LV36
(特・技)水中回避 LV39
(特・技)処水術 LV32
(技)気合 LV22
(技)努力 LV15
控えスキル:(生)生け簀LV1(生)釣りLV11(生)船大工LV25
(武)弓技能LVMAX(魔)樹木魔法LV4(魔)氷魔法LV33(魔)霧魔法LV6
(技)波乗りLV17(技)機械術LV1 (技)船舶LV24(技)ソナーLV30
(特・技)統率LV8 (特・U)水マニアLV1
(技)超採取LV8 (魔)振動魔法LV9
子供:タルト/タイラントタートル new
所持スキルポイント:11
武器スキルの場合 偶数レベルごとに攻撃力3上昇
魔法スキルの場合 偶数レベルごとに精神力+5
技能スキルの場合 5LVごとに体力と精神力が5上昇
生産スキルの場合 奇数LVごとに生産性効率や品質に上方修正
特殊スキルの場合 5LVごとにで全ステータスが5上昇
Uスキルの場合 LVアップごとに全ステータスが5アップ
称号:臣下にすら認められない魚神(笑)
初めての魚神島発見者
初めてボスを単独で討伐した者
五大海魔王(蛸)の友達第一号
初めてユニークスキルを解放した者
単独でダンジョンを制覇した者(初級)
不屈なる者
バカは死んでも治らない




