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ソリット・スクア  作者: そうしょう
2.運命と天才与えられる愛
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1.運命診断 

天才と 呼ばないで


何も出来やしないから。それなのに、どうしてそんな肩書きを描くのだ。


そんな風に、呼ばれたくないのに。


自分の力で、自分だけの力で、ただ、生きたかっただけなのに。


―――あぁ。


世界は、なんて、暗い。











光のない虚ろな眼に、何かが映ることもなく、ゆっくりと閉じられた。


*


高校の説明会で渡された課題。そのテストが先日行われ、返却の時期がきた。

お世辞にもアカリは頭が良くはない。中の上――ぐらいがベストだ。


アカリは、ソリット・スクアに入った。


それはもう、1週間も前のことだと思うと時間が経つのは早いなと感じた。

未だに、『きぃ』先輩とは出会ったことがない。

……タイミングが悪いらしかった。


「テスト返却するぞー」


わけられていくテスト。………あぁ、ほら、微妙な点数。


「今回は百点1人だけいたな。頑張ったな」


そういって。

差し出した相手。


「ありがとうございます」


微笑む、マフラーを首に巻いた少年。


「コウ、くん…?!」


なんだと。


*


「コウくんって頭よかったのね!」

「あれ、頭悪いと思われてたんですね」


ぽかぽかとした昼下がり、自作のお弁当を持ったアカリと、青いお弁当箱を持ったコウの2人は屋上に行く為に廊下を歩いていた。屋上までの階段はそう遠くはない。あまり人も来ないのは、恐らく皆、外という場所に移動するのがめんどくさいからなのだろう。


苦笑してコウはアカリの素直な感想に応えていた。


コウ。

そういえば、と、アカリはまばたきをする。


私、何にもコウくんのこと、知らないなぁ。


何だかんだでアカリとコウは仲がいい。気が合う、とゆうのだろうか。まぁ相変わらず、放課後や昼食以外では隙あればナンパをしているが(そしてことごとく成功しない)。


屋上へと出る扉を開くと、胡坐をかいたルカと、正座をしてサンドウィッチを頬張るカナの姿があった。


「先輩たち、早いですね。」


と、アカリが言うと、ルカは魚を箸でつまみながらぱくん、と口に入れる。もぐもぐと口を動かし、それを食べ終えると


「そんなことねぇよ、いつも通りだ」


そういって、次はたこさんウィンナーに箸を滑らせた。どうでもいいけれど、かわいい。

カナはにこにこと笑って、二人が座るスペースをうまく作ると「お疲れ」と声をかけた。


「こうしてみんなでごはん、楽しいねー」


こうして屋上に集まって昼食をとるのはまだ二回目だ。一回目はアカリがソリット・スクアに入って次の日で、いろいろと説明を受けた。結局、ソリット・スクアの面々と出会った初日に先生のところにいくのをすっかり忘れてしまってて、帰り際に、しっかり言った通りルカ…と、カナとコウが職員室の場所を教えてくれたのだ。

コウは「入学説明会で場所覚えたんですよ」とにこにこ笑っていたが。どうせ物覚えが悪いですよ、とぐちぐちいった私は悪くはないだろう。


「きぃ先輩、まぁたいらっしゃらないんですね……」

「…どーせ保健室だよ、あいつは。いいんじゃないか、それはそれで」


保健室に通いながら、学校に来ているらしいきぃ。本名はもちろん違うらしいけれど、というかここにいるメンバーは基本愛称で呼んでいるけれど、特にきぃの名前は大分本来の文字をいじったらしかった。もしかしたら名前を聞いただけじゃぁわからないかもしれないな、と以前ルカに言われたことがある。


「そういえば、コウくんは…初日からソリット・スクアを知ってたんだよね?どうして??」


誰かから訊いた、というわけでもないだろうし――…ましてや、そもそも彼が普通に出入りしていてもカナはおろか、ルカは何も言わないし、いて当然のような反応をしている。彼だって新入生なのに。

そう思って疑問を出すと、ルカは「ん?」と首をかしげた。


「……あー、別に。コウは元々俺が誘ったからな。」


お弁当があるからなのか、定かではないけれども、彼の存在感が強まっていてなんとなくうれしい。それはそれとして、えっと、あれ?誘った?首をかしげていると、ルカの言葉に付け足すように、コウが頷いた。


「それに、僕、ルカ(にい)とは従弟ですから」

「あ、そうなんだ……、……え?」


え。


今、なんて。


「え、ええええええ、ええええ?!誰と誰が?!!ルカ先輩と、コウくんが?!!」

「わかるわかるー!!!!あたしも最初びっくりしたよ!でもホントのホントだよ?!」


驚きを隠せないアカリにカナが激しく同意する。アカリは思わず、まじまじと二人を見比べた。

ルカとコウでは大分違うところが多い。むしろ、同じところを探すのが難しい。至極丁寧なコウとぶっきらぼうな口調なルカ。丸目がちな瞳のルカ、吊り目がちなコウ、と。大分違う。

そう思っていると、少しだけコウが微笑んで指を一本立てた。


「そうですね…似ているところ、といえば。強いて言うのなら、今は染めているルカ兄の髪ですけど、地毛は僕とそっくりの、茶色っぽいのが強い髪質なんですよ。あと、寝起きは髪の毛かなりぼさぼさです。そこはそっくりですn「っるせぇ!!!とっとと食え!!!」痛った!!」


ゴンッ、と遠慮なく落とされた鉄拳にコウが頭を押さえて涙目になった。ルカは呆れたように、けれど怒ったような表情でコウを睨みつけている。なるほど、寝起きは寝癖がかなり酷いらしい。これは時間をかけて髪の毛を直しているとみた。

そう考えると、ふふっとアカリの口から微笑がこぼれた。カナは我慢せず、といった感じで大爆笑をしている。喜怒哀楽がとても豊かなこと、それがカナの長所である。


「てめぇらそこ二人も!!笑うんじゃねェよ!」


なんて、和やかな雰囲気が四人を包んでいた。

なんてことのない、昼下がりである。まだまだ、春のにおいは途絶えることを知らない。

ここから章が変わりまして、コウ中心の話となります。

運命診断という力を抱くコウは、果たしてどういう運命の中で生きてきたのか?―――スタートです!

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