『デアイ』
入学式から二週間が経った。
僕の日常は相変わらず変わっていない。
一日中ボーッとして時間だけがすぎていく。
そんなかんじだ。
今日も時間だけがすぎていき気付けば放課後になっていた。
「はぁー・・・・・」
ため息をついて思わず机に突っ伏した僕に大地が話しかけてくる。
「あらあら。ためいきなんてついちゃって。元気だせって」
「・・・・・・・・」
「帰ろうぜ」
誘われるものの今日はどうもノル気になれなかった。
「わりい、先帰っててくれ。しばらく休むよ」
「・・・・・・・そうか」
気を遣ってくれたのか大地は何も言わずに教室から出ていった。
本当いいヤツだよ、あいつは。
どれくらい眠っていたのだろう?
起きれば外は暗闇に覆われていた。
「やべ!?」
急いで荷物をまとめて教室を出る。
夜の学校ってのも以外とスリルがあるなぁ、なんて思っていると廊下の向こうの教室に明かりがついているのが見えた。
「? こんな時間にまだ人がいるのか」
部活もとうの昔に終わったはずだ。なぜいまさら校舎なんかにいるのだろう?
気になったので覗いて見ることにした。
足音をたてないように慎重に歩いていく。
そして教室のドアの前まで来た。
と思った瞬間。
ガラララッ。
いきなりドアが開いて人が出てきた。
「ちょっと待ちなさい!」
「え?」
そのまま抗議する暇もなく縄で縛られる。
「ええっ!? い、いったい何なんですか!?」
僕はいきなり縄で縛られその辺の床に転がされた。
「黙りなさい変態!」
「へ、変態!? 何のことですか!?」
僕を縄で縛った女は僕を見下ろして。
「とぼけないで。あなた筑紫さんの下着を盗んだでしょう?」
「下着!? そんなことしてない!」
身に覚えのない罪を被せられ、僕も声を荒げてしまう。
「嘘ね。だってこっちにはちゃんとした理由があるもの」
「理由?」
「そうよ。理由があるの」
「じゃあ言ってみてくださいよ」
そう言って、先輩と思わしき女は僕を犯人だと決めた理由を語り出した。
「筑紫さんはね。今日は部活あったから私たちが目の前いるこの部屋に荷物を置いて行ったの」
「・・・・・・」
「そして、部活から戻ってきて着替えようとしたら、自分のカバンにいれておいたはずの下着がなくなっていた」
先輩は続ける。
「普通に考えて、筑紫さんの下着が盗まれたのは筑紫さんが部活をしている時間。けれど、その時間には生徒は部活動やもう帰宅していて校舎に人はいないのよ」
「そこに僕が残ってこの辺をうろついていたから犯人だと・・・・・・」
「その通りよ」
僕がしばらくその事について思案していると。
ガラララッ。
またドアが開いて人が出てくる。
ヤバいヤバいヤバい! 今の会話を聞かれていたら誰だって僕が犯人だと思うだろう。
教室から出てきたその人は。
「筑紫、先輩?」
そう、筑紫先輩だった。
さらにヤバい。 本人来ちゃったよ。
「今のは本当の事なのかな? 水沢くん」
僕は筑紫先輩が名前を知っているのに違和感を覚えながら。
「ち、違いますって! なんなら調べてみてくださいよ!」
するともう片方の先輩が。
「だめよ。隠してるに決まってるわ」
「だから盗んでないって!」
もう暗くなり、明かりがついた廊下に僕の叫び声が響き渡る。
「水沢くん」
筑紫先輩からはなしかけられ僕は若干緊張してしまう。
「は、はい」
「本当に、盗んでないんだね?」
ズイ、と筑紫先輩はしゃがんで僕の顔を見つめる。
ち、近すぎる。
「あ、当たり前です」
僕が言うと、筑紫先輩は僕を縄で縛った先輩に。
「だってさ」
「じゃあ、いったい誰が盗んだのよ?」
自分の潔白を証明できたのでホッとしていると。
「ところでさ。水沢くんは何で学校に残ってたの?」
「え?」
筑紫先輩にいきなり話かけられ頭が処理に追っつかない。
「あ、ああ。それはちょっと体調が悪かったので寝ていたらこんな時間に」
「怪しい・・・・・」
隣では?先輩がまだ僕を疑っていた。
「ふーんそっか。じゃあお大事にってことだね。もう時間も遅いし私たちはそろそろ帰るね」
「え、あ、はい」
筑紫先輩ともっと仲良くなりたかったなぁ、と僕は少し残念だった。
「じゃ、またね」
筑紫先輩のこの去り際の笑顔、僕は生涯忘れることはないだろう。
そのあとも、僕は筑紫先輩の姿が見えなくなるまでそこに突っ立っていた。