最後の着信
午前二時三十七分。
昔使っていた古いスマートフォンが鳴った。
♪――ピロン。
画面を見る。
通知はない。
「……空耳?」
そう思って眠り直そうとした。
♪――ピロン。
今度は確かに聞こえた。
しかし画面は真っ黒なまま。
充電も切れている。
電源すら入っていない。
「……気持ち悪い」
電源ボタンを押しても反応はない。
壊れたのだろう。
そう思い、机の引き出しへ放り込んだ。
翌日も。
翌々日も。
決まって午前二時三十七分。
♪――ピロン。
引き出しの中から通知音が鳴る。
修理店へ持ち込んでも異常なし。
店員は首をかしげた。
「これ、完全にバッテリーが死んでますよ。鳴るわけありません」
私は笑ってごまかした。
言っても信じてもらえない。
その夜。
また鳴った。
♪――ピロン。
引き出しを開ける。
真っ暗な画面が、一瞬だけ光った。
通知。
『あと七日』
心臓が止まりそうになった。
スクリーンショットを撮ろうとした瞬間、文字は消えた。
翌日は。
『あと六日』
誰にも見せられない。
私にしか表示されない。
毎晩、数字だけが減っていく。
あと五日。
あと四日。
あと三日。
あと二日。
そして最後の夜。
午前二時三十七分。
♪――ピロン。
画面にはこう表示されていた。
『迎えに行きます』
部屋中の電気が消えた。
静寂。
その中で。
廊下から足音がした。
コツ。
……コツ。
……コツ。
ゆっくり。
こちらへ近づいてくる。
私は震えながらドアを見つめた。
コツ。
コツ。
コツ。
ドアの前で止まる。
息を殺す。
音は消えた。
数秒後。
安心しかけた、その時。
♪――ピロン。




