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最後の着信

作者: 水曜
掲載日:2026/07/20

 午前二時三十七分。


 昔使っていた古いスマートフォンが鳴った。


 ♪――ピロン。


 画面を見る。


 通知はない。


「……空耳?」


 そう思って眠り直そうとした。


 ♪――ピロン。


 今度は確かに聞こえた。


 しかし画面は真っ黒なまま。


 充電も切れている。


 電源すら入っていない。


「……気持ち悪い」


 電源ボタンを押しても反応はない。


 壊れたのだろう。


 そう思い、机の引き出しへ放り込んだ。


 翌日も。


 翌々日も。


 決まって午前二時三十七分。


 ♪――ピロン。


 引き出しの中から通知音が鳴る。


 修理店へ持ち込んでも異常なし。


 店員は首をかしげた。


「これ、完全にバッテリーが死んでますよ。鳴るわけありません」


 私は笑ってごまかした。


 言っても信じてもらえない。


 その夜。


 また鳴った。


 ♪――ピロン。


 引き出しを開ける。


 真っ暗な画面が、一瞬だけ光った。


 通知。


『あと七日』


 心臓が止まりそうになった。


 スクリーンショットを撮ろうとした瞬間、文字は消えた。


 翌日は。


『あと六日』


 誰にも見せられない。


 私にしか表示されない。


 毎晩、数字だけが減っていく。


 あと五日。


 あと四日。


 あと三日。


 あと二日。


 そして最後の夜。


 午前二時三十七分。


 ♪――ピロン。


 画面にはこう表示されていた。


『迎えに行きます』


 部屋中の電気が消えた。


 静寂。


 その中で。


 廊下から足音がした。


 コツ。


 ……コツ。


 ……コツ。


 ゆっくり。


 こちらへ近づいてくる。


 私は震えながらドアを見つめた。


 コツ。


 コツ。


 コツ。


 ドアの前で止まる。


 息を殺す。


 音は消えた。


 数秒後。


 安心しかけた、その時。


 ♪――ピロン。

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