吟遊詩人の憂鬱(ゆうつ)
だからダメなんですよ。
歌っている途中でいきなり先生にダメだしされ、全てが中断した。
「歌に感情がこもっていなんです。」
数分前に、発生が喉だけになっている。腹式呼吸でしっかり声を出せと言って、
基本の発声練習をやらせる。
さらに遡ること、数分。
マイクトラブルで、広い会場の後ろまで聞こえるように、強めに発声していた。
「あなたは、悲しい時にそんな「か・な・し・い」って大きな声で言うんですか!?
今まで平凡に、楽に生きてきたから悲しいなんてわかんないんでしょうね!
あなたは何においても稚拙なのよ。
自分に何が足りないのか、よく考えて歌ってください。」
大勢のスタッフがいる前で、それはないでしょ。
そんなやり取りを何度も何度も繰り返している。
ぐるぐる回っているが、課題は一つだ。
・マイクが壊れた環境で、広い会場の隅々まで、悲しさを伝えるにはどう歌えばいいか。
マイクが使えているなら、小さく声を震わせるとか、あえてブレスの音を大きく聞かせるとか、いろんな引き出しは持っている。
だが、今の私には、この環境での解決策が思い当たらない。
先生とは、この環境で悲しさを表現する方法を議論したいが、
出てくるのは、「腹式呼吸」と「聞こえない」の2点だけ。
そしてつける言葉は「自分に何が足りないのか、よく考えて歌って」という丸投げ。
議論がかみ合うことがない。この人と話しても答えにたどり着けるとは思えない。
周りのスタッフが見かねて、照明で効果をつけましょうか?と提案してきたら拒否。
効果音つけましょうか?と提案してきても拒否。
「今は、歌の話をしているの。邪魔しないで頂戴!」
皆が、舞台をどうするか考えているのに、
怒り狂っている先生には、何も伝わらない。
私に何が足りないんだろう?
その時、「テス・テス・マイク復旧しました」
マイクの音が場内に響き渡った。
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楽屋でスタッフの一人と話した。
「今日、先生機嫌悪かったっすねー」
「いつもは、聞き分けのあるいい先生なのに、私に足りないものはマイクだったのかな?」
「そんなー、まさかっすよね。
昨夜のスタッフ全員決起集会に先生、不参加だったの、体調悪くて、引きずってんすかね?」
!!!!
先生未だにガラケーだ!
先生に招待送るの漏れてた。。。。
私に足りないのは、気配り?
まさか、そんな事で怒らないよね?
・・・・・・・
そんなことで。。。。
それ以外の事で、あんなに怒られるとは、、、
「あっちも、あんなこと言うって、中身は相当子供っすよ。
自分の非礼だけは謝っといた方がいいすよ。
非礼の相殺なんて、絶対だめっす。」
相手は年老いた子供か、、、、
私は、しぶしぶと先生のところに向かった。




