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吹奏万華鏡♪ 特別ページ♪  作者: 幻創奏創造団
各奏者の解説
30/30

【限定②】 茂華町クリスマス点火祭 [後編]

クリスマス限定のイルミネーション祭り。瑠璃は本当に1人で来ていた。

「…綺麗」

ひとりただ感想を溢す。

結局、誰も受験勉強優先で来なかった。そして後輩たちも明日に行くという。結果、瑠璃はたった1人だった。

「でも、ひとりかぁ」

それが仕方のないことだと諦めていた…時だった。


「…あれれ」

瑠璃は誰かを見つける。それは先輩友達の小倉優月だった。小さく手を振ると、彼も気付いたように手を振り返してきた。

そしてふたりは再会した。

「…優月先輩、どうして?」

「明日は家族でクリパだから。今日しか来れなかったの」

その理由は奇しくも、瑠璃と同じ理由であった。

「…私も!一緒だよ!」

「そ、そうなんだ」

思わず優月も驚きの声を上げてしまった。

「……」

すると瑠璃は突然、モジモジしはじめた。何か言いたいことがあるのだろうか?

「…瑠璃ちゃん、どうしたの?」

何かを察した優月は瑠璃に問い掛ける。

「あの、優月先輩…」

そして――彼女はとんでもないことを言い出した。

「…イルミネーション、一緒に回らない?」



それを聞いて、優月は全ての神経に衝撃が走ったような衝撃を受けた。

「え…、僕と?」

それは全然構わない。ただ瑠璃は良いのだろうか?想大にまだ未練があったのなら、それは少し遠慮するべきではないのだろうか。

悩む。

しかし彼女は苦笑で返してきた。

「あ、嫌なら…大丈夫だよ。私ひとりでも大丈夫だから」

瑠璃はそう言っているが、明らかに声はうわずっている。1人が嫌だという彼女の特性は、優愛から沢山聞いていた。

「…ひとりは危ないよ。僕で良かったら」

瑠璃の言葉に合わせるように優月は頷いた。

「…えっ?本当?」

「6時30分までなら、だけど」

「私と帰る時間おんなじだー」

そう言って瑠璃はとにかく喜んでいた。ならば大丈夫だろう。優月は瑠璃と共に歩き出した。


広場の時計を見ると5時40分。まだまだ時間はある。ひとつひとつゆっくりと見ることにした。

「このイルミネーション、電気代いくら掛かるんだろうね」

優月が思ったことをとにかく言葉にして紡ぐ。

「優月くん、夢なーいっ」

しかし瑠璃には苦笑で返されてしまった。あまり芳しい発言ではなかったか。

「ごめんね…」

(優愛とはまた違う性格だなぁ)

「でも、確かにお金凄そうだよねー」

だが、瑠璃はそのまま話しを合わせてくれた。なら少しは、と身の上話をすることにした。

「…僕ね、高校卒業したら…1人暮らしなんだ」

そう言うと、瑠璃が意外そうに目を丸めた。

「え、優月先輩、大丈夫なの?」

思ったより彼女の反応は良かった。心配する響きも多少含まれていたが。

「…うーん、駄目かも」

優月は不安そうに答えた。正直ひとりでやっていける気がしない。

「お料理できる?」

「えっ?一応料理はできるよ。皿洗いも毎日やってるし」

「すごーい」

「まぁ…カレーの焦げとか洗うの大変だけど。よく使ったスプーンとかフォークで取ってるから」

「カレーかぁ…。私、そういうの苦手なんだよね」

「え?そうなの?」

それは驚いた。瑠璃は何かと手先が器用そうだからだ。

「私、よく爪で剥がしてるかな」

「それだと効率悪いよー。スプーンで掬うように剥がさないと」

取り敢えずアドバイスすると瑠璃はニコリと笑った。

「優月先輩って凄いんだね」

「…えっ?」

褒められて思わずビックリした。 

「優月先輩のお嫁さん、いいなぁ」

更にあからさまな脈あり発言。

「お嫁さんって…結婚したあと?」

思わず動揺しつつも尋ね返した。

「…そうだよ。優月先輩のお嫁さん、家事とか何でもできる人と一緒なんて羨ましいなぁ、って」

「へ、へぇ」

「まぁ、私は一緒にいてくれる人なら、誰でも良いんだけどね♪」

「そういうこと…」

どうやら優月と結婚…などという都合の良い話しはないらしい。瑠璃は純粋な発言が多いので、男子と話せば脈あり発言が出てくるのはザラだ。

少し肌触りの悪い会話を記憶に残しながら、点滅するライトたちを見つめる。光の粒子たちは音もなくただ無機質に光る。

「…そういえば、瑠璃ちゃんって妹さんいるんだっけ?」

突然、優月が会話のタネを見つけて問う。

「うん。ふたりいるよ」

「…5月くらいに1番下の子といたよね?」

「ショッピングモールの時かぁ。懐かしいなぁ」

瑠璃は目を細めて笑った。幼さの残るその双眸は光に当てられ無邪気に照れる。ひとつに結んだ髪が左右に可愛らしく揺れた。

「…そういえば、夏休みの旅行のとき、見たっけ?」

「え?誰を?」

「小麦」

その名前は全く知らないものだ。

「…瑠璃ちゃんの妹さん?」

「うん。小麦、全然話さないからなぁ」

瑠璃にはふたり妹がいる。次女の小麦と末っ子の樂良。小麦は昔の瑠璃みたいな物静かな性格。樂良は小麦とは正反対の明るい性格だ。例えるなら次世代の瑠璃である。

「…どうして小麦ちゃんだけ静かなの?」

優月がまだまだ続く光の通路を歩きながら尋ねる。

「…」

すると瑠璃の声が少し小さくなった。

「…私のせいなんだよね。小麦が物心ついた時って、私が天龍を辞めたときなんだよね」

「…そうなんだ」

「だから、かなり私の性格も暗くて。小麦はそれを見て育ったから」

何だか悲しい理由だなあ、と思いながら優月は眉をひそめた。美優はただ単に自分から陰鬱な性格になったらしい。

「…逆に樂良が物心ついた時が、優愛お姉ちゃんと会ったときだったから」

「ああ、そういうことね」

瑠璃の妹たちはどうやら長女を見て育つらしい。なんか可愛らしいな、と思った。


ふたりが他愛もない話しをしていると、あっと言う間に大広場へと到着した。今までとは比べものにならないくらいの大きなイルミネーション。人工的な光がふたりを照らす。

「…ここが1番綺麗だね」

優月が何とない様子で言う。

「うんっ」 

そんな言葉に瑠璃は大きく頷いた。その赤い瞳はダイヤモンドのような光を映す。白い肌は赤く染められ、黄色い髪も光を受けて輝いている。

「…すごく綺麗」

いつもの純粋な口調ではなく、感嘆を伸ばしたかのような声だった。

「瑠璃ちゃん…」

優月はリュックから袋を取り出した。

「1個食べる?」

そう言ってチョコレートシュークリームを取り出した。それを見た彼女はキラキラと瞳孔を大きくする。

「美味しそう」 

羨ましがっている。そんなことはすぐに分かった。

「いいの?」

瑠璃は首をかしげる。期待が瞳の光に溢れる。

「…いいよ」

優月はニコッと笑って渡した。

「だって…僕の分もあるし」

もう1つ、同じシュークリームを見せると、瑠璃は目を猫のように細めた。今までにないほど柔らかい表情をしている。

「…ありがとうっ!」

「瑠璃ちゃん…」


その姿はなんだか優愛と重なった気がした。

(…なんか分かった気がする) 

瑠璃の笑顔はイルミネーションの光でよく映える。

「…ここで食べていい?」

「うん。汚さないように気をつけてね」

「はーい♪」

(…優愛がここまで瑠璃ちゃんのことが好きになった理由が)

入口で、瑠璃はいつものツインテールに戻すと、優月の方を見た。

「優月くん、ありがと」

「…ううん。受験頑張ってね」

「もちろん!」

瑠璃は「ばいばーい」と言って消えた。


(…これで良かったのかな)

優月は胸に残ったほんのりとした感情を撫でるように、そっと胸に手を置いた。

「…また来年かな。次に会うのは」



そんな思い出は家に帰っていても残っていた。

「…優月クン、遅いー」   

「いいじゃん、イルミネーション見たかったんだし」

「なに?彼女とでも見てたの?」

「…彼女なんていないって」

目の前に出された大量の餃子。それを見つめながら答えた。

「ふーん、じゃあ古叢井先輩?」

「…なっ!そんなわけないでしょ!?」

「怪しい〜」

すると父の雅永たちがやってきた。

「美優、餃子もう食べていいよ」 

「やったー!私が先!」

(夕飯、餃子で良かったぁ)

誤魔化せた事に安堵しつつ、優月も餃子を口へと運んだ。

クリスマス・イブは至って普通の日常だった。



翌日。古叢井家。

「…またドラムやってる。小麦ー」

山の中にある瑠璃の自宅。今日もドラムセットの音が響いていた。

「瑠璃姉、吹部終わったのに何してるのよ」

小麦はやや呆れ気味にドアを開ける。

「…!?」

ドアを開けた小麦は驚いた。

「樂良!?」

すると瑠璃と小麦が頷いた。

「…瑠璃姉、樂良に何を吹き込んだの?」

なんと瑠璃は樂良にドラムを教えていた。樂良は楽しそうに彼女を見る。

「え?ドラムやってるのー。しょうらい、あたしもすいそうがくやるんだー」

「…えぇ」

それを聞いた瑠璃がクスクスと笑った。

「…だってさ」

しかし小麦は表情を全く変えない。

「全く、ケーキ食べないの?」

「食べたい!」

「お母さん呼んでる」

「分かったよー。樂良行こ」

「うん!」

瑠璃と樂良は楽しそうだ。それでも小麦は気に入らなかった。

(…全く、音楽の何が楽しいんだか)

小麦はあまり音楽が好きではなかった。



「やったあー!ホールケーキだぁ!」

「樂良も子供だなぁ」 

瑠璃はクリスマスという日を楽しんでいた。

「…瑠璃姉、今日もドラムやってた」   

「楽しいし頭がスッキリするんだもん」

「…ちゃんと勉強しなさいよ」 

「はーい」

楽しいクリスマスはあっという間だ。


また年が明ける。

そして――新たな扉が開かれるのだ。

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