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迷路でまよっている

作者: 小雨川蛙

 迷路でずっと迷っている人がいた。

 ぐるぐるぐるぐる。


「道はこっちですよ」


 誰かがそう伝えるとその人は言った。


「分かっています」


 そう言って、またぐるぐるぐるぐる回りだす。


「一緒にいきませんか?」


 誰かがそう言うとその人は言った。


「放っておいてください」


 そんな態度に人々はやがて呆れ果てて何も言わなくなった。

 だから、その人は今も迷路でぐるぐるぐるぐる回っている。


 出口だって本当はもう分かっているはずなのに。


 ・


 ・


 ・


「人間と言うのは分からないな」


 水槽に浮く脳を見ながら博士がぽつりと呟いた。


「そうまでして死にたくなかったのかい」


 脳は何の反応も示さない。

 手もないし、足もないし、口もないし、目もないのだから当然だ。

 けれど、博士の前に置かれている機械が『生きている』ことだけはしっかり示してくれている。


「まぁ、金は貰ったから願いは叶えるがね。死にぞこないが」


 そう言って博士はその場を立ち去った。

 水槽の手前には『可能な限り長生きをしたい』という顧客の依頼書が雑にセロハンテープで止められていた。

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