【第6話:目標は、自分を動かす言葉】
「今日のミーティング、ちょっとだけ時間もらっていい?」
営業前、店舗をまたいで幹部たちが集まった小さなスペース。
社長のレナが、少し緊張した面持ちで切り出した。
カノンが動き出してから、レナの中でも何かが変わり始めていた。
自分の実績だけでは、もう会社は動かない。
「社長として、何をするのか」を言葉にする時が来ていた。
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「私、ちゃんと社長やるね。」
短く、でも強い言葉だった。
「今まで、“現場で頑張る”ってことしか見てなかった。
でも、これからは、私自身が“この会社をどうしたいか”を決める。
そのために、数字も、育成も、全部見ていく。」
幹部たちの視線が集まる。
「だからまず、私がやることを言葉にした。」
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レナが広げたのは、手書きのメモ。
店舗の売上目標
自分の稼働時間と役割の分配
SNSや広報に連携する動き方
育成マニュアルのラフ案
理想の“社長像”のメモ書き
「これが、今の私の目標。
完成してるわけじゃない。でも、“これをやる”って決めた。」
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そしてもう一つ。
「同じように──みんなにも、自分の目標を書いてほしい。
数字でも、働き方でも、理想の未来でもなんでもいい。
“私はこうなりたい”っていうのを、一回ちゃんと考えてみてほしい。」
カノンが少しだけ、表情をゆるめた。
ミユ、リリ、ナナは戸惑いながらもうなずいた。
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「提出とか言わない。
でも、私は“全員分を把握したい”。
それが、私の“仕事”だから。」
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目標は、数字だけじゃない。
言葉にした瞬間から、それは“自分を動かす力”になる。
社内に、新しい風が吹き始めていた。
ひとりひとりの想いが、
会社を“組織”へと変えていく。