表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/7

何処

ひらがなばかりで少し読みにくいです。




「それで、……此処って、何処なんですか?」


「此処は江戸の、試衛館っつー剣術道場だよ」


「……えど、しえいかん、けんじゅつ……」


分からないモノばっかりだ。"えど"は場所の名前なのだろうか。


「やっぱり分からないか」


「はい……あ、でもけんじゅつ、ってあれですか?あの、長いモノを振ったり、ぶつけ合ったりするヤツ」


さっきあの広い所で皆がやっていたのが、"けんじゅつ"じゃないだろうか。

私の問いに、いのうえさんは、パッと顔を明るくした。


「そう、そうだ!やっぱりお前は賢い子だ、真白!」


「ましろ?」


「お前の名だよ、真白」


少し話しただけで、沢山知れた。

この場所の事、私の名前。もっと色んな事を知りたい。


「物知りないのうえさん。他にも教えて下さい」


私がそう言うと、いのうえさんは「別に物知りではないんだがな……」と困った風に頬を掻きながら、私をとある場所に連れて行ってくれた。





「あ、此処ってさっきの……?」


「そう。此処は道場って言って、皆剣術の稽古をしてるんだ」


つまり、"けんじゅつ"の練習場所と言う事か。何となく、楽しみになってきた。


「いのうえさん、早く入りたいです」


「あぁ、そうだな。……でも、私もこれから稽古しないといけないんだ」


「いのうえさんもけんじゅつをするんですか?」


優しい いのうえさんも、あんなに激しい稽古をするんだ、と驚いた。


「どうする?一人が嫌なら別の人を呼んで、部屋に戻っても良いぞ」


いのうえさんは、そうやって気を遣ってくれた。


「大丈夫です。へやの端で見てますから」


「分かった。悪い事すんなよ」


「はい」


いのうえさんと約束をして、"どうじょう"の中に入った。さっきと同じ様に稽古をする人も居たが、棒を置いて座り込んでいる人も居た。


「おい、総司。ずっとそうしてたのか」


「あぁ、源さん……て、あれ?真白ちゃん?」


さっき少しだけ話した人も、稽古をやめて座り込んでいたみたいだった。

その人も、やっぱり私の名前を知っていた。


「えっと……そうじさん?」


「はい、総司です。やっぱり憶えてないんですね」


そう言って、少し悲しそうな顔をした。申し訳ない気持ちがこみ上げてくる。


「ごめんなさい。……あの、でもこれから、教えて下さい」


私がそう言うと、そうじさんは、不思議そうな顔をした。


「沢山、色んな事を教えて下さい。そうしたら、いつか元通りの私になるはずです」


「……そうなると良いなぁ」


初めて、そうじさんが笑った。ふんわりとしていて、心が温かくなる笑顔だった。


「ほら、総司。稽古に戻ろう」


「分かりました。真白ちゃん、後でね」


振り返って、手を振ってくれた。それに釣られて、私も手を振る。何となく、振り返したら良いんだと分かった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ