表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

小虎




 駄菓子屋の居間にて。


「ほかの子どもにバカにされて、悲しくて。母ちゃんと父ちゃんのふるさとにいる時は、母ちゃんも父ちゃんも厳しいし。すんごく厳しいし。じいちゃんもばあちゃんもおばさんもおじさんもいとこもみんな。みーんな。厳しいし。俺の味方は誰もいなくって。そしたら、すんごく、あっちゃんに会いたくなって。でも、俺一人じゃ、母ちゃんと父ちゃんのふるさとからここに帰る事もできないし。ただ、みんなからすんごく離れた鬼灯畑で一人でしょんぼりしてたら、小虎が俺に抱き着いてきてくれてさ。一緒に遊んでたら、楽しくなってきて。小虎が翼を背中から出してさ、一緒に飛ぼうって言うから、うんって言って。俺、飛ぶの、苦手だったけど。小虎と一緒だったら、飛べるって、高く早く飛べるって、思って。先に飛んだ小虎を追いかけようとして、飛んだら。いつの間にか。ここに戻って来てた。トランポリンの上にいた。だから。どうやったら、母ちゃんと父ちゃんのふるさとに行けるのか。わからない」

「お母さんとお父さんのふるさとに行く時はどうしてたの?」

「家で母ちゃんと父ちゃんと一緒に手を繋いで、母ちゃんと父ちゃんが一緒に行くよって言ったら、いつの間にか、母さんとお父さんのふるさとに来てた」

「じゃあ、てっちゃんの家に行こう。家に行ったら、ふるさとに行ける方法があるかもしれないよ」

「そう。か。そっかそっかそうだよね!うん!行こう!俺の家に!」

「うん」


 元気いっぱいに飛び出したてっちゃんの後に続いて、私も駄菓子屋から元気いっぱいに飛び出した。




 結局、麦茶もサイダー瓶も駄菓子屋のばあちゃんからご馳走にはならなかった。

 それだけが心残りだった。











(2024.8.16)




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ