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崩壊した世界で愛を叫ぶ  作者: ラー油
三日目
11/17

11.お披露目

 「そろそろ着くと思うよ」

 「結構あっという間だな」

 案外疲れていない自分の身体に驚く。

 「海の様子を予想してみない?」

 「う、うん。いいよ」

 僕が少し驚きながら返事をすると橘は考え始める。

 「私は虹色だと予想するよ」

 「虹色?」

 「そう。たまに工場とかがやらかして川が赤になったり緑になったりとか」

 プランクトンが大量発生したり染料が混じったりして起きることは多々ある。 

 「それいいね」

 「同じはダメだよ」

 橘にそう言われたので考える。

 「じゃあ、黒にしておくよ」

 「アンパイだね」

 「でもその黒は赤や緑といった色が混ざり合った結果の色ということで」

 「絵の具を混ぜ過ぎると黒になるってことね」

 「そういうこと」

 決して放射性物質に汚染された色ではないと予想する。

 「黒色でもいいかな。白が目立つし」

 橘はそう言ってからかうような目を向ける。

 「覚悟の上だよ」

 僕は恥ずかしいのを悟られないようにそう言う。

 「真剣な顔でいう事じゃないと思うんだけど……」

 橘が呆れてそう言うと急に恥ずかしくなっていく。

 「あ、逃げた」

 僕は自転車をこぐ足に力を入れて橘の前にでる。 

 「私だって恥ずかしいんだよ?」 

 橘は小さくそう呟くと足に力を入れて神谷に追いつく。

 「海に着いたらビーチフラッグで勝負ね」

 「いいけど、スタートのコールはどうするの?」

 「ふっふっふ、こんな事があろうかとしっかりとタイマーを用意しています」

 橘はそう言っていろんな道具が入った袋を見せる。

 「早く行くよ!」

 そう言って僕達はスピードを上げて海へと向かった。


 「うーん、予想は大はずしだ」

 「僕のも当たってはないな」

 海に着いた僕達は海を見ながらそう口にする。結局のところ海は真っ黒で波の色は茶色の混沌としたものだった。でもこの黒は放射性物質と海の生き物の残骸によるものだろう。

 砂浜は黄色と黒が混ざった変な色になっている。

 「海に近い方はダメそうだけど手前は平気そうかな?」

 奥の方には金属片といった放流物が散乱している。

 「あ、全然平気そうだね」

 「そうだね、思ってるより砂だね」

 砂浜をしばらく歩いた後僕達はそう結論づける。

 「それじゃあ、さっそく着替えようか?」

 橘はそう言って白のワンピースを手渡してくる。

 「ちょうどいいところに海の家もあるしそこで着替えようか」

 僕は頷いて無人の海の家に入る。

 「これ……どうやって着るんだ?」

 生まれてこの方ワンピースなんて着たことがない。二つの紐を肩に掛ければいいから頭から被るのかな?

 この予想を元にワンピースを輪っかのようにして被ってみる。

 「なんかスースーして変な感じだな」

 ズボンのように包まれている感覚がなく不安になる。

 「こんなもん女子は履いてるのか……」

 僕は恥ずかしいというより不安な気持ちが勝る。

 「うわ、これはキツイな」

 ヒビの入った鏡に映る自分の姿を見てそう口にする。不恰好なんて言葉すら相応しくないほど変だ。

 「神谷ー、着替え終わったー!?」

 「あ、うん。終わった――」

 僕はそう答えて海の家を出ようと思ったが急に恥ずかしくなって踏みとどまる。

 「神谷ー?」

 橘は不審そうな声が聞こえてくるが返事の声が出せない。

 「入るよ」

 「あ、待って――」

 僕が言い終わるより前に白の羽織ものを着た橘が現れる。まだ水着が見えているわけでもないのにビーチサンダルを履いた脚に大きく動揺する。

 「お、似合ってるじゃんワンピース」

 「あ、うん」

 「あれ?てっきり恥ずかしいとか言うと思ったんだけど」

 恥ずかしいには恥ずかしいのだろうがそれ以上に期待感が勝ってしまった。

 「私も見せないとフェアじゃないよね」

 橘は笑顔でそう言うが表情は硬い。上着を押さえる手にも力が入っているのも分かる。

 「だ、大丈夫?」

 恥ずかしいとは違う雰囲気を感じた僕はそう尋ねる。

 「……神谷が予想している肌とは違うと思う」

 橘はそう言うと上着を脱いで水着姿を露にする。その姿は僕の人生の中で一番の刺激的な光景だと言ってもいい。

 「ごめんね、出来れば綺麗な肌を見せたかったんだけどさ」

 そう言われて全体を見るとポツポツと黒い痣のようなものがある。

 「あ、そうか。影響があってもおかしくないよな」 

 放射線と生物兵器と化学兵器まみれのこの世界で身体に影響がない方がおかしい。それに痣があったところで直視出来ないほど魅力的だ。

 「こんなグロいもの見せてごめ――」

 「いやグロくなんかないよ!」

 橘が申し訳なさそうにそう言うのを僕は慌てて否定する。

 「ただ直視することが出来ないだけでグロいわけじゃないよ」

 「……本当に?」

 「本当だよ」

 僕がそう答えると橘は嬉しそうに笑った後すぐにいじわるな顔になる。

 「でもさー、気持ち悪いから目を背けてるかもしれないよね?」

 橘はそう言うと腕を後ろに組んで距離を詰めてくる。

 「ストップ。止まるんだ」

 「なんで?」

 橘は笑顔でそう言うと目の前までくると僕は硬直する。動いたら触れてしまう距離だからだ。

 「ちょ、本当に勘弁して!」

 僕は大きな声でそう言うと後ろに後退する。

 「私の水着の感想は?」

 「す、凄く可愛いです」

 僕は思ったままを口にする。

 「へへへ、それはよかったよ」

 橘は笑顔でそう言うと海の家を出る。

 「ビーチフラッグするから落ち着いたら来てね」

 「分かった」

 僕はそう返事をした後地面にしゃがみ込む。

 「落ち着いたところでまた動揺するんだけど」

 僕は赤い顔を押さえてそう呟く。

 「ふー、私も落ち着かないと」

 海の家に出た橘は有り得ない程早く鼓動を刻む心臓を押さえながらそう呟いた。

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