八話 課金でモメてます
八話 課金でモメてます
想から返事が来る間に済ませておかない事がある。
「就君はサイズにスマホを使わせてないんだよね?」
「はい」
「サイズは俺達とゲーム仲間なんだけど出来れば使わせてあげて欲しい。強硬手段に出る前に」
「?」
就は理解してない。小人がその気になれば経済的損失を与えられるという事を。要はエスパーダに使い込まれた分を未だに返してもらっていないのだ。
「でも勝手に課金とかされると困るんですよ」
「それは分かる。痛いほど分かる」
思わず言ってしまい、エスパーダの視線が突き刺さる。ここでモメていては就とサイズに対して示しがつかない。
「サイズはゲームで課金してた?」
「兎が課金させてくれてたよ。経費とか言ってた」
なんで小人族は人の金でゲームするのだろう。
「俺は課金させないぞ」
そして就は頑固だ。サイズはぶんむくれた。
「ケチ」
「じゃあ、課金させてくれる研究所に戻るか?」
結構キツめな事を言われ、サイズは泣きそうになっていた。よほどイヤな体験をしてきたのだろう。だが誰も助けはしない。ただ一人を除いては。
「就、あんた酷すぎ」
今まで蚊帳の外だった能が参戦してくる。それにはみんな目が点である。味方になってもらったサイズさえも。
「能には関係ない」
「はぁ⁉︎ 私の事フっておいて、サイズを取ったくせに関係ないわけないでしょ。被害者よ、被害者」
「俺は別に能の事は……」
「じゃあさっきの何? サイズのために服作っていきたいんでしょ? しかもタダで」
「サイズからはお金取れないだろ」
「私はお義姉様からお金が取れない時にはお兄ちゃんから徴収してたわ。この場合、あんたがポケットマネーで払って売り上げに加えれば良いのよ。それから課金も払いなさい」
理不尽な物言いに就は迷ってる。
そこでエスパーダが言った。
「課金を許可制にしたとしても、ゲームはさせるべきだと思う。私達の繋がりをあなたに断つ権利はないわ」
「ちなみに能もゲーム仲間だ」
要に言われ、就は顔をこわばらせていた。四面楚歌と言わんばかりの状態だ。
「就、ゲームさせて」
「俺だってバイトしてるし、スマホだって使うんだ」
情と我欲の狭間で苦しそうである。現代人にとってスマホは大事な物だから仕方がない。
要は解決案を口にする。
「シールドに相談してみようか? 小人のスマホ会社の社長だし」
「どんなのと知り合いなんですか?」
就は思わずシールドの事を「そんなの」と言ってしまっている。それくらい驚いたのだ。
「全てはエスパーダと知り合ったからさ」
就は要に委託した。
要はメッセージを送ったが、すぐに既読はつかなかった。
「すぐには無理だろうから、就君のスマホに間借りさせてもらうのはどうだろう?」
「小人のスマホも勿論お金がかかるでしょう?」
「それはしょうがないさ。君はサイズと暮らしていきたいんだろう?」
「現代人にスマホは必須よ」
また追い詰められそうになっていた。だがまた能が割って入る。
「スマホ代は私が貸してあげる。お兄ちゃん達から巻き上げた金まだ使ってないもんね」
「どうして……」
「恋愛で繋がれそうにないから、金で繋がっておくの。利子はしっかりもらうかんね」
槍が降るのではないかと要が思うほどの提案だった。能が就を好きなのは分かった。
「貸しを作るわけには……」
「一緒に小人の服作ってあげっから」
能に説得され、就は気持ちが揺らいでいるようだ。後一押しという時、想からメッセージが来た。
それを教えると就は観念して了承し、今日サイズに遊ばせるために異界大戦のアプリをダウンロードした。