最終話 夜に電話がありました
最終話 夜に電話がありました
夕飯も食べて狭い部屋になじんだ頃、要のスマホに能のスマホから電話があった。
「もしもし」
「あ、お義兄さん」
電話に出たのは就だった。しかもお義兄さんと来たもんだ。
「就君、どうかした?」
「サイズの事が気になりまして」
「さっき晩ごはん食ったところだよ。おかげでサイズはおいしそう派になっちまった」
要はスピーカーにして悔しそうに言った。食後にエスパーダがサイズに対してウサギの食材としての価値を熱弁して、おいしいものだと刷り込みし、自分がおいしそう派であると言うように仕向けたのだ。
それから要が説得しようとしても無駄だった。ウサギの唐揚げは実際うまかったようで、サイズはウサギがおいしい事に確信を持ってしまった。要は確実に上がった自分の料理の腕がうらめしく思えた。
「え? おいしそう派?」
就が聞き返してきたか、それに答えたのは能だった。
「あの、サイズをくだらない争いに巻き込まないでください」
説明を聞いた就は文句を口にする。それにエスパーダが噛み付いた。
「ちょっとくだらないってどういう事? ウサギがおいしそうか、かわいいかは重要な問題なのよ」
エスパーダは本気で文句を言っていた。あまりファミレスで話さなかった彼女から言われて就は驚いているようだ。
「この問題はデリケートなんだ。迂闊な事を言うもんじゃないぞ」
「……すいません」
「分かれば良いの」
エスパーダは偉そうだ。
「サイズは電話に出られますか?」
「ああ」
要はテーブルにスマホを置いた。軽く合図を出すとスマホに向けて四つん這いになったサイズが話しかける。
「もしもし?」
「サイズ、大丈夫か? 寂しくないか?」
「え? うん」
なんでそんな事を聞くのかと戸惑っているように見えた。
「明日迎えに行くからな」
「あの人とはうまくいつたの?」
「ああ、サイズが二人きりにしてくれたからな」
「ふーん、じゃあスマホ貰ったらね」
サイズは勝手に電話を切ってしまう。要にはまだ能に言ってあげたいセリフがあったのに。
「就のバカ」
「サイズも女って事かな」
エスパーダはサイズをフォローしていた。怒れなくなってモヤモヤした要は、明日直接言ってやると心に決めた。