十話 サイズを教育すると決意しました
十話 サイズを教育すると決意しました
要の部屋に帰って、テーブルの上に二人を下ろすとサイズが言った。
「就の家より狭い」
息を吸うように出た文句なので唖然とした。しかし許すわけにもいかない。ここは要とエスパーダの愛の巣なのだ。
「就君の部屋ってどれほど広いの? 間取りは?」
とりあえず情報収集。
「2LDK。お父さんが買ってくれたとか」
要の部屋よりデカい。金持ちの子なのか。
「だったらなんで能ちゃんの事好きなんだろ? 金に汚いのに」
エスパーダの疑問はもっともだが妹を貶されると腹が立つ。フィアンセでもだ。
「就は愛人の子なんだって。本妻に男の子がいなかったから優遇されてたけど、孫が生まれて本妻の子が盛り返したらしいよ」
サイズはやけに詳しかった。そして目を輝かせていた。この年でゴシップが大好きなようだ。
「なるほど。能ちゃんにとっては確実じゃないんだね、玉の輿」
「そうなんだ。それにあの人は博士の身内だからね。ハンデだと思うよ。一回捨てられたでしょ」
「親父はサイズに良くない事をしたのか?」
サイズは当然とばかりに頷いた。
「血まみれのおねずの傷口にキスさせるし、死んだおねずにキスさせるし、血取られたり、変な機械付けられて計測されたり」
なかなかハードな日常だ。
「ゲームはいつしてた?」
「一日のノルマが終わってから、兎がスマホ貸してくれるの。エスパーダと出会えて楽しかったよ」
サイズは聞いてきたエスパーダに笑いかけた。
エスパーダは同情してしまったようで、涙ぐんでいる。
「私の事はお姉ちゃんだと思って良いからね」
母親代わりとは言わないところが女性だなと要は思う。
「そうだな。サイズに小人族の常識を教えてあげると良い。俺は料理を作るよ」
要はウサギの唐揚げを作ってあげた。
エスパーダはその間に小人族の神話を話していた。
サイズは何も言わずに完食した。そしてこう言った。
「要、おかわり」
要は笑顔になって、エスパーダの分をサイズにあげた。