エピソード4 読者の厳しい感想には慣れているので、ノーダメージです(嘘)
この作品は、今日中に完結します。
8時、12時、16時、20時、23時に投稿です。
アイラとアラン王子は、次の日から連日、喫茶室に2人で籠って作品作りに勤しんだ。
「兄さん!まさか、僕の婚約者に手を!」
ある日、2人で作業している喫茶室に、オリバー王子が踏み込んできた。
学校中で、アイラとアラン王子の仲が噂になり始めていたのだ。
「さすがアイラ様、2人の王子を手玉に…」
「アイラ様の事です。あらゆる可能性を考え、アラン王子もキープしようと…」
学校中で、アイラの巧妙な罠にアランが引っかかったと噂されていた。
それを聞いた、オリバーが喫茶室に踏み込んだのだった。
「おいおい、オリバー。俺が、こんな冷血女に手を出すわけがないだろう」
アランは、オリバーに弁明する。
『冷血女!アイラの記憶の中に思い当たる事が多すぎる!』
アイラの胸に、アラン王子の言葉の剣が突き刺さり、もんどりうつ。
「確かに、彼女は我儘な女性だが、私にとっては大切な婚約者なんだ!軽率な行動はしないでくれ!」
オリバーが、アランに抗議する。
『我儘な女!さらに、思い当たる事が多いぃい!』
さらに、アイラの胸に、オリバーの言葉の剣も突き刺さった。
「ふひぃいい」
アイラは、テーブルに突っ伏した。
「大丈夫か!アイラ!」
二人の王子は、アイラに駆け寄る。
「おーまーえーらー」
黒いオーラを放ちながら、アイラは立ち上がった。
「いい事、思いついたわ!これで、全て解決よ!」
アイラは、目を輝かせて叫んだ。
「これでどうかな?」
オリバーが、油絵のキャンパスの前で、アイラとアランに言った。
そこには美しい令嬢と、2人の王子のデッサンが下絵として描かれている。
「完璧よ!私のイメージ通り!」
アイラは、嬉しそうに言った。
3人は、美術室にやってきていた。
アイラは、オリバーに自分の小説のイメージを伝えて、下絵を描いてもらったのだ。
「この私の作品を出版するには、絶対に素敵な挿絵が必要!オリバー、あなたにしか頼めないわ」
アイラは、オリバーに懇願する。
「それにしても、相変わらず上手いな」
アランが、オリバーを褒めた。
「兄さんが褒めてくれるなんて、珍しいじゃないか。何か兄さんには出来ない事を身に付けたくて、子供の頃から練習していたからね」
オリバーは、照れくさそうに言う。
「これからは、3人で頑張りましょうね!」
アイラは、アランとオリバーの手を取った。
「えーと、僕にはまだ理解出来ないんだけど、説明してくれるかな?」
オリバーは、二人に説明を求めた。
3人は、その日から力を合わせて本を作り始める。
ほどなくして、本の試作品が完成した。
職人の手作りによる、ハードカバーの立派な本だ。
「全20万文字。私史上、最長の本よ!」
アイラは、本を抱えて喜んだ。
「よし、まずこれを学校の図書館に何冊か置いて、みんなの反応を見よう」
アランは、それを学校の図書館に置いてもらうように学校に掛け合った。
図書室に納品されてから数日後、アイラが教室に入ると、人だかりが出来ていた。
「アイラ様、ごらん下さい!」
取り巻き達が、その中心に置いてあった本を、アイラの元に持ってきた。
『これは、私の本!既に大ヒットの兆し?』
アイラは、思わず顔が緩む。
「この下品な本を、図書室から撤去してもらおうと、みなで相談していたのです!!」
取り巻き達は、アイラにうったえた。
「ぁ、ぁぁぁ…」
アイラは、声にならない音を喉から発した。
ショックで、目の前が真っ暗になる。
「この恋愛小説に出てくる令嬢の言葉使いの、みっともない事!とても貴族とは思えません!」
「ぬぁ!」
「この主人公の令嬢、正直言って気持ち悪いです!」
「ぐぁ!」
「ストーリーも、どこかで見た事がある展開ばかり。おまけに下品ですわ!」
取り巻き達の作品への批判の言葉を聞く度に、アイラは変な声を出しながら、よろめいて後退した。
「ちょっと待って下さい、みなさん!」
その時、一人の金髪セミロングの美少女が、話に割って入った。
「私は、この主人公の言葉使い。素朴で庶民的なところが好きです。人付き合いが下手なところにも共感が持てます。撤去を学校に申し出るのは、もう少し待っていただけませんか?」
彼女は、マーガレット。
強い魔法の才能を持っていて、特別に貴族の集まる、この学校に入学した農民の娘だ。
一時期、オリバーといい感じになっていたので、アイラが裏で色々工作して彼から遠ざけた少女だ。
『さすがヒロイン系、ええ子やぁ~』
アイラは、心の中で感謝の涙を流す。
「ちょっと待て、何の騒ぎだ?」
教室の入り口から、アランとオリバーが入ってくる。
騒ぎを聞きつけて二人でやってきたのだ。
「この本を置くように学校に頼んだのは俺だ。文句のある奴は、俺に言え」
アランが、教室にいた者達を睨みつける。
「ま、まあ、撤去までは必要ありませんわよね」
文句を言っていた生徒達は、ばらばらになって自分の席に戻っていった。
誰しもが、彼の事を恐れていたのだった。
「気にするなアイラ。みんなが面白いと思う小説など存在しないんだ」
喫茶室に集まった、アイラ、アラン、オリバー。
アランは、アイラに慰めの言葉をかけた。
「いいえ駄目よ。明確な荒らしはともかく、感想は常に考慮に入れないと。それにリサーチが足りなかったのは間違いない。この世界の恋愛小説を読みまくって、好まれる言動や展開を研究しないと!」
アイラは、既に気持ちを切り替えていた。
『それに、完璧な令嬢の記憶は、私の中にある!それを思い出せば…』
彼女は、拳を握りしめて闘志を燃やす。
「あ、それから…」
アイラは、扉を開けるとマーガレットを部屋に招き入れた。
「話してみると、なんと彼女も小説をかいているそうでーす。私の初めての筆友よ!これからは、彼女も一緒に活動します」
アイラは、マーガレットを仲間に入れる事を宣言した。
「やっぱり、あの本の作者はアイラ様だったんですね。小説の令嬢のモデルがアイラ様だとすると、ちょっと変…いや、少し面白い方だったんですね。今まで、怖いだけの方と思っていました」
マーガレットは、少しうつむき気味に言った。
「そうなのよ~、とーっても怖いの。でも、その私が味方になれば、敵なしだからね」
アイラは、マーガレットに覆いかぶさるようにして言った。
「そうだぞ~、AAコンビは、あらゆる悪事をしてきたからな」
アランも調子を合わせて、マーガレットに覆いかぶさって言う。
「あ、あははは…」
マーガレットは、作り笑いをしながら顔を青くした。
「二人共!彼女がドン引きしているよ。その辺にしておいて下さい。」
オリバーが、二人の悪ふざけを咎めた。
日葵はリア充相手には喋れないが、オタク仲間とは普通に喋る事が出来た。
アイラになった彼女は、彼等相手に普通に喋れるようになってきていた。
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