7.アキと
「ほら!もういくよ!」
「待って…… 心の準備がまだ…………」
「それもう10回目だよ?」
「わかってるけど…………」
あの特訓をはじめて数週間、
「もういけるでしょ?」
このアキの一言で、翌日ついに外に連れ出されることになった。
といっても庭を歩くだけ。
あれだけの啖呵を切っておいて情けない話だ。
ともかく、引き篭もり脱出計画はアキの特訓のおかげ?で成功しようとしている。
アキに罵倒され続けた私は、アキになら何を言われても感情を抑えられるようになってきていた。
他の人にはまだ会ったこともなくてわからないけど、一応成長しているという実感はあるにはある。
正直、私の趣味も入ってるけど。
それ以外にも、アキは様々なことを提案してくれて助けてくれた。
耐えられず泣いてしまった時は、寝る前に抱きしめてくれた。
お昼には外に出て、夜には私の子守り。
本当にアキには頭が上がらない。
そうした特訓の甲斐があって私は、外に出れるかもと思いはじてめていた。
いや、これは建前だ。答えは今の自分が一番わかってる。
私は誰かの手をとって、救われたかっただけだ。
最初は本当に傷ついていた。
あんな経験は二度としたくないし、自分の犯してしまった、取り返しようのない罪は、これからも抱えて生きていかなきゃならない。
でもいつしか私は、それを自分を変えない言い訳にしていた。
こんな経験をしたんだから仕方ない。
これはしょうがないことなんだ。
そうやって自分自身から逃げてきた。
そして、あの部屋で過ごす時間が、気持ちを本当に変えて、恐怖で外に出れないということが、私の中で事実になってしまった。多分それだけ。
でも、その救いの手を差し伸べてくれた人がアキで本当によかったと心から思ってる。
アキ以外の人が私を救ってくれたかなんてわからないし、そんな未来はもうどこにも存在してない。
私を救ってくれて、全てを与えてくれたのは間違いなくアキだ。
これから生涯をかけて返していかなきゃならない。
そして思う。前の人生でも彼女の手をとっていたら変わっていたのかもしれないって。
今、考えても無駄だとはわかってる。
でも、考えずにはいられない。
それだって私の罪だから。
その後悔も抱えて、前を向いて生きてかなきゃならない。
一度、いや二度、本当にしてしまったことを乗り越えることがこんなにも辛くて苦しいとは思ってなかった。
でも、
「よし……………………」
「覚悟は決まったかな? ハル?」
「うん…………」
「じゃあ行こう?」
アキの手を握る。
今までの恐怖が嘘のように、心が軽くなる。
これなら大丈夫。
アキは忘れてもいいって言った。
でも私は忘れない。抱えて生きていく。
いつか、本当に向き合わなきゃならない日は来ると思う。
それもアキと一緒なら全く怖くない。
だって間違ってきた二回の人生を変えるための、一歩目は、もうアキと手を繋いで踏み出しているから。
4年ぶりの外。
私を照らしつける太陽と、晴れ渡った空。
それを直視してしまった私は、目が痛くてまともに開けていられなくなる。
でも、それすらも心地よかった。
そして、痛みがだんだんと引いていき、恐る恐る目を開ける。
空の下、目の前にはいっぱいの花が植えられた綺麗な庭。
周りを少し見渡せば、前世の小説で想像していたような街並み。
言葉を失ってる私にアキは、
「ようこそ!私達の王都へ!」
そういって笑いながら私の手を強く握った。
一章 - 終 -
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