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転生少女は間違える -アキを知ってハルになる-  作者: qay
4章

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28.俺


 辺境の村に捨てられていたところを拾われて育った。僕は本当の父と母を知らずに生きてきた。

 

 それでも、僕は寂しくなんてなかった。

 僕を捨ててしまう本当の親なんかとは違う、素晴らしい4人の人達に育てられた。

 そして、僕は特別な力を持った人間だったから。


「いつもありがとうね。シキ」


 そう言ってくれる、お義母さん。


「ほら、大変だっただろ? こっちにきなさい」


 優しく向かい入れてくれる、お義父さん。


「シキは凄い! すごいよ!!」


 ぴょんぴょん跳ねながら、そう言ってくれるユユ。


「シキは本当にすごいな」


 そして、親友のリク。


「そうだろ! 俺は特別なんだ! 王になる男だからな」


 そういって胸を張る小さい頃の僕。

 この家族の、そして兄妹のためならなんだってできる。なんだってやってみせる。

 幼少期の僕は自信しかなかった。

 根拠なんて、この魔法だけで十分だった。

 

 村に時々現れる魔物。

 それを狩るのは幼い僕に全て任されていた。

 数は1匹だったり、2匹だったり。

 多くても5匹を超えたことなんてなかった。

 一対多を得意としてる僕の魔法なら、この程度の魔物は脅威にすらならない。


 全く怖くなんてなかった。

 攻撃をすることにしか使い方を思いつかなかった僕の魔法。

 それを使って、村の役に立つ。

 たくさんの感謝をもらった。


 でも何より、


「シキ! いつもありがとう!!」


 そう言って僕に抱きついてくるユユ。


「シキ? 大丈夫か? 怪我はない?」


 体の心配をしてくれるリク。


 この2人を守るためならなんだってできた。


「ふ〜ん、ふ〜ん」


 鼻歌を歌いながら、いつも頑張る僕のために料理を作ってくれるユユ。


「できたよ!!」


 この瞬間はいつも、いつだって高揚する。

 これを超える喜びを僕はまだ知らない。


「美味しい? シキ?」


「うん! うまいよ! ユユ!!!」


 そう言うといつも、


「ユユ、いい加減もっと料理を上手くなれよ」


 そう言ってユユをからかう兄のリク。


「うるさいよお兄ちゃん! いいじゃん! シキは美味しいって言ってくれてるよ!」


「はぁ…… そんなんじゃいつかシキに捨てられるよ」


「そんなことないもん! ないよねシキ……?」


「ないよ。ユユとリクから俺が離れるなんてことは絶対にない」


「ほら! シキはそう言ってくれてる!」


「はぁ………… シキ、こんな妹でいいの?」


 当たり前の事を聞くリク。


「あぁ! 俺はユユとリクだからいいんだ」


「ありがとう。シキ」


 そう言うリク。


「大好き! シキ!」


 僕に抱きついてくるユユ。


 いつものやりとり。

 当たり前になった日々。

 いつだってこの瞬間が、この日常が心地よかった。

 永遠に続いてほしいってそう願ってた。

 

 そしていつか叶うなら、ユユと本当の家族になって、そして親友のリクと本当の兄弟になって幸せな日々を送りたい。

 それが僕の夢であり、目標であった。


 

 でも叶わなかったんだ。

 永遠に叶うことはなくなってしまった。


 

 でも僕の幸せは、あの日に一瞬で奪われた。


 今の僕ではどうにもならない数の魔物を一体の魔物が率いていた。


 今までの雑魚とはまるで違う。

 連携のような行動と統率のとれた動き。

 幼い僕では、僕だけではどうにもならなかった。


 焼ける村と僕達の家。

 そして僕の家族も魔物に襲われた。


 咄嗟に選ばなきゃならなかった。

 どちらを救うのか。

 

 僕の体は心は、ユユとリクを選んでいた。

 

 気づけば目の前に転がる、尊敬していた義母と義父。

 心が張り裂けそうだった。


 それでも僕達3人は走って逃げた。

 暗い森の中をあてもなく走り続けた。

 

 でも奴らは逃がしてなんてくれなかった。


「お兄ちゃん!!!」


 僕の前を走るリクが喰われた。

 横から魔物が飛び出してきて反応することすらできなかった。

 

「いけ! シキ!!!」


 喰われる親友のリクを置いて必死に逃げた。

 奴らは人間狩りを楽しんでいる。

 僕らを試しているそう思った。

 ユユを励まして、引っ張って逃げ惑う。


 それは一瞬だった。

 

 急に引っ張る腕が軽くなった。


 急いで振り返る。

 よかった。ユユはまだいる。

 一瞬そう思った。

 

 でも、僕が握っていたのはユユの腕だった。

 ユユの腕しかなかった。


 そして顔を上げると、少し遠くに腕を失って蹲っているユユ。

 そして、そのすぐ後ろにはあの魔物がいた。

 

 ユユを喰おうとしてる。

 直感的にそう感じた僕は手を伸ばそうとする。


 その瞬間、ユユは僕に向けて顔を上げた。

 

 ユユは笑ってた。

 いつも僕に向けてくれる優しい笑顔だった。


「この世の何よりも誰よりも愛してるよ。シキ」


 一筋の涙がユユの頬に流れる。

 そして喰われるユユ。


 全てがスローモーションに感じた。

 目の前が真っ赤になった。


 その後のことはよく覚えていない。

 気づいたら、全て終わっていた。

 僕が終わらせていた。


 僕の目の前にはユユとリクだったもの。


「俺は、俺は!!!」


 涙を流しながらひたすらに叫んだ。


 できたはずだった。

 救えたはずだった。

 その力を持っていたのに。


「………………僕は王になる」


 世界一尊敬してる親友を真似る。

 それだけで一緒にいられるような気がしたから。

 遺体は僕達の家があった場所に埋めた。

 僕の時間はここで止まった。

 

 

 そして僕は王都を目指した。

 王になると決めていたから。

 ユユとリクに約束していたから。

 

 僕は王都に出てきて、そして王位継承権を貰って色々な事を知った。

 

 この歪んだ国のこと。

 王は王都しか守らないと言うこと。

 そのせいで僕のような人がたくさんいると言うこと。

 そして僕達の村が王都に助けを求めていたにも関わらず、先延ばしにして初めから救う気なんてさらさらなかったこと。


 この国を恨んだ。

 滅ぼしてやりたいってそう思った。

 そして僕は誓った。

 この国への復讐を果たすためなら。


「…………僕は、なんだってやる」


 もういない人にそう誓った。


 文字通りなんだってした。

 この国を変えると言って、同じ境遇の人に協力をしてもらった。

 

 あの魔物の死体から、魔物をある程度は集められるそういう薬を開発させた。

 それができるっていう確信があった。

 そして実験も任せて死者を多く出した。

 それでも迷わず進んだ。


 最初は魔物を集めて殺す。

 このことだけに薬を使っていた。

 それだけでも多くの功績を立てることができた。

 だけど、もう一つの使い道に気づいた人がいた。

 

 任意の場所に魔物を集められるということ。

 それは任意の場所と時間で、魔物に狙った人を襲わせることができるということ。

 そして彼は僕らは迷わず、その方法を使っていた。


 気づけば、僕が作ってしまった悲しい過去を持つ組織は、王になりそうな、脅威になりそうな人間はできるだけ排除していた。僕は本心では望んでなんていなかった。でも開発した未完成の薬を使って、僕達と同じ思いを他の王候補者にさせた。それだけが事実として残った。


 僕を王にしたいから。

 しなきゃならないから。

 この国への恨みを晴らしたい。

 そのためだったら何をしてもいいって思ってる人達を僕は抑えられなかった。


 止まれなかった。

 どんどん過激になっていく、歪んでいく組織を抑えられない。それでも進み続けるしかなかった。


 こんなことはダメだって思う自分と、復讐を願う自分で心が引き裂かれそうだった。

 でも、止まれなかった。


 それほどに僕はこの国へ復讐したかった。

 それに止められなかった僕だって同罪だ。


 結局、王と同じことを僕もしていた。


 ある時、生き残ってしまった人がいた。

 それは幼い女の子で、彼らはそれすらも殺そうとしていた。でも、その時は必死に説き伏せて自分の家に囲い込んだ。


 やりたいことは全部やらせた。

 この子を育てている。

 そうすれば罪の意識から逃れられたから。

 

 ある日、その子は泣きながら帰ってきた。

 救いたい人がいる。

 強い目で言ってきたから、惜しみなく協力をした。


 今、彼女が救いたかった人、そして彼女が救った人が僕の目の前に立つ。周りにわまって、誓いの大きな障害になってる。

 

 彼女の力を見てしまったから、こんな強引な動きをしなきゃならなくなった。

 計画も全て前倒しにしなきゃならなくなった。

 皮肉な話だって思う。

 

 あの時、彼女を………… アキを殺していれば、人であることを辞められていれば、こんなことにはならなかっただろう。


 2つに引き裂かれそうだった心を繋いでくれたアキ。

 そんな彼女は本当に大切だった。

 彼女といる時だけは普通のシキになれた気がした。

 彼女の前では父のようにカッコをつけたかった。

 

 だから大切なアキが救ったハルも助けてしまった。


 リクには笑われるだろうか? 怒られるだろうな。

 ユユは肯定してくれるかな?許してくれるかな?


 僕は目の前の運命と向き合う。

 僕は…… 俺は王になりたいから。

 

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