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転生少女は間違える -アキを知ってハルになる-  作者: qay
3章

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21.依存


「アキ………… どこにもいなくならないよね」


「うん。ずっと一緒にいるから寝よう?」


「うん………………」


 私のアキへの依存は取り返しのつかないレベルにまできている。

 お母さんが見えるようになってから余計に酷くなって、そしてあのデートの日、私は怖くて仕方なくなった。


 私の本当を暴かれた気がした。

 

 本当の私は醜い人間だって私自身はわかってる。

 アキを縛りつけるために本当の自分を隠して、アキに必要とされる私を作り上げた。

 

 本当の私は誰にも求められていない。

 アキに私の本当を知られたら、失望されるに決まってる。

 私から離れていなくなるに決まってる。

 

 自分から逃げて逃げて逃げ続けた。

 その成れの果てが今の私。

 私の本質はあの時からなにも変わってない。


 だからあの時、アキに言われた気がした。

 アキには私の全てがバレてるんじゃないかって。

 

 お前の本性はわかってる。

 もうお前は必要ない。

 もう面倒だからお前を捨てたい。

 お前が邪魔だから離れたい。


 そう言われてる気がした。


 私が成長しているなんて、心にも思ってない嘘をついてまで、私から離れようとしたんじゃないかって怖くなった。


 アキが私の邪魔をしているなんてあり得ない。

 ここまで来れたのは全てがアキのおかげで、ここまで進んでこれたのはアキの役に立ちたいから。


 変わったように見せかけてでも、それだけは偽りなくしてきたはずだった。

 

 アキに求められるように自分を演じた。

 アキに失望されないように心を殺した。


 それができるようになったのも、私が人間に変われたのも、日常を送れるようになったのも、アキが助けてくれたから、アキがいてくれたから。


 私はなにも成長してない。

 

 依存して、成長してるフリをしてるだけの臆病者。

 私はアキがいなきゃ生きていけない。

 でも、これじゃ足りないのかもしれない。

 

 アキの側にいるためなら私の全部が私じゃなくなってもいい。


 これ以上、アキに失望されたくない。


 

 ◇



「アキ? 大丈夫?」


「うん。大丈夫だよ」


 私はアキに尽くした。


「アキは休んでて」


「……わかった。ハル、気をつけてね」


「うん。ありがとうアキ」


 私ができることはなんでもやった。

 アキに必要とされるためなら、なんだってできた。


 アキは受け入れてくれた。

 料理以外の家事も買い物もできるだけ私がした。


 そして魔物をシキと協力しながら、できるだけはやく殲滅する。

 アキに失望されないように、否定されないように、私は私にできることを繰り返す。


 お母さんはあの日以来、ずっと視界にいる。


「すごいハル! また上手に殺せたね! そして傷ついたフリをすれば、これでまたアキに甘えられるね!」


 私が何かするたびに貶してくれる。

 醜い私を肯定してくれている。


 本当の私をお母さんは知ってくれている。

 幻だって頭で理解していても、それだけで満足した。


「アキ? 一緒に寝て?」


「いいよハル。こっちにきて話そ!」


 この僅かな時間だけで満足だった。


「ねぇアキ?」


「どうしたの? ハル?」


 馬車の中でするこのやりとりだけで心地よかった。

 

「アキ? いなくなったりしない?」


「……しないよ」


 このやりとりだけで安心した。

 

 私の全てはアキに染まってる。

 手遅れだから、歪だってわかってても、もう引き返すことなんてできない。

 その選択肢は、もうどこにもない。


 視界にはお母さんがいる。

 怒っているような、悲しそうな、なんとも言えない表情をいつもしてる。

 この人を見るたびに思うんだ。


 今度は間違えてはいけないって。

 アキに捨てられたら、次はないんだってそう思う。


 だから私はアキを繋ぎ止めるためならなんだってする。



 ◇



 いつも通りの日常。

 アキのため、私のために魔物を殺す日。

 今日は、とてつもなく数が多いって聞いた。


 そして、アキはいつもと少し違った。

 

 あの部屋を出る前、アキはあの部屋の本棚に一冊の本を置く。

 暗くてどんな本なのかは、よく見えなかった。

 その本以外に本なんて一冊もない。

 ただの飾りの本棚に一冊の本を置いた。

 

 それはなにって聞きたかったけど、それを聞いてはいけない気がした。

 なぜなら、その本を置いて振り返ったアキは決意に満ちた、何かを決めた、そんな目をしてたから。


「アキ! あのね! 今日は、……」


「…………うんそうだね」


 必死に話をする。


 怖かった。

 私は捨てられるんじゃないかって。

 アキがその決意をしたんじゃないかって。


 あの目を見て怖くなった。


 あの本を見て、決めてしまったんじゃないかって。

 そう考えたら怖くて聞けなかった。


 馬車は目的地へと向かう。


「ねぇ……ハル?」


「な、なに…………?」


 怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。

 

 それでもアキの言葉を待った。


「今日、帰ったら話があるの」


「うん…………」


「大事な、大事な話」


「そ……れは……」


 私が必要なくなったって話?

 そう言ってしまいたかった。


「私達が始まったあの場所で、あの部屋で」


「……………………」


「ハルに伝えたい、伝えなきゃならないことがある」


「今じゃ…………ダメなの?」


 素直にそう聞く。


「あそこじゃなきゃダメ。今、伝えてもハルには伝わらない気がする。それに渡したい……物があるから」


「それは………………」


 なんなの?

 そう聞こうとする。

 でも、


「もう着くね…………」


「うん………………」


 なにかは聞けなかった。

 

 そして、

 


「アキ! アキ! 目を覚ましてよ!お願い!!!」


 それをアキから聞くことも私はできなかった。

 無様に泣き叫ぶ私を、お母さんが笑って見てる。


 私は性懲りも無く、また間違えた。

 





明日は複数の更新できたらいいなって思ってます。

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