[激情]黙って、いられないよ!!
わなわなと怒りに震えているように見えるベアトリーチェ。
違う。
違う。
そんなことない。
そう反論したくて。
でも、勢いに押されてしまった。
「わたくしの父はグラームスです。それはこの体に流れる聖女と勇者の血がその証拠です!」
それに。
あの時のお母様の言葉に、嘘はなかったって、そう信じられた。
お父様だって、お母様の残留思念の言葉だからこそあんなふうにつきものが落ちたようなお顔になっていたんだと思うから。
「あなた、ご存知ないの? 由緒あるローエングリンの家系には、初代勇者の血が流れているのよ!」
え!?
「わたくしはこうしてアウラクリムゾンの記憶と融合したからわかるの。初代勇者ロムルス。その奥様である大聖女マリア。この地はロムルスの実家のあった場所だから、確かに彼の家系の血筋のものが代々領主を努めているけど、ロムルスとマリアの息子が興した家がローエングリン伯爵家だもの。随分とその血も薄まって、伝わる魔力も少なくなってたみたいだけど。あなたがその直系なら。わかるでしょ? あなた、グラームス様の血をついでいなくたって、その力に目覚めていた可能性があるんだって」
あ、あ、
「勇者ロムルスと大聖女マリアの直系のあなたが、バルバロス家のような魔力の濃いアルベルト様の娘だったら、今みたいな力が生まれても全然おかしくないじゃない!」
ああ、でも。
確かにそれなら……。
ああ、ううん!! そんなはず、ないもの。
アルベルト様のあのわたくしをみる瞳は確かにすごく優しくて。
もしかしてわたくしのお父様なの? って、本気でそう思った時もあったけど。
みんなしてそこまで嘘をつく必要、ないじゃない。
もしあのお母様の残留思念の言葉も。
もしあの悲痛なお顔のアルベルト様のお声も。
みんな嘘だったら。
もう何を信じていいのかわかんないじゃない!!
「そんなはず、ないもの!! わたくしの心の中にあるお母様の残留思念がそう言ったのだもの。なんで、なんであなたはそんなにいじわるを言うの!? どうしてそんなにわたくしが憎いの? どうしてよ!!」
そう、心の底から叫んで。
もう、何もかも、吐き出してしまいたくて。
「そんなの、決まってるじゃない! あなたがわたくしのほしいものをみんな持っていっちゃうからよ! フリード、様も。シルビア、だって!」
え?
「わたくしがずっと大好きだったフリード兄様の心を盗んどいて、それなのに不幸な顔をしているあんたが許せなかったのよ! 幸せなら幸せでいればよかったんだわ。あんたはなんでも持ってるのに、いつもいつも自分がこの世で一番不幸、だって、そんな顔して! どうしてよ! どうしてわたくしじゃなくてあんただったのよ! フリード兄様、どうして……」
目の前のベアトリーチェが泣き崩れて。
しゃがみ込み、うく、ひく、と、嗚咽を漏らす。
って。
ううん。
同情、なんて、してやらない。
こんなの、ない。
言うだけ言って泣けばいいと思って。
「いい加減にしてよね!!」
思わずそう、叫んでた。
「自分勝手にもほどがあるわ! なんであなたがフリード様に選ばれなかったことで恨まれなくちゃなんないのよ!! わたくしだって、心があるんだからね!! いつもいつも叩かれて黙っていられるほど、優しくなんかいられないんだから!!」




