[対峙]ベアトリーチェのシルビア。
底が、見えてきた。
ううん、ちがう。
あれはこの世界の中心。
この、シルビアの心の中の宇宙の真ん中。
そこに、シルビアのような人影が見えてきたと思うと、その女性がスッと手をかざし。
ふんわりとその手の中に、アウラクリムゾンが落ちていった。
♢ ♢ ♢
カッと目を見開くそのシルビアのように見える少女。
でも。
その目は氷のように、冷たくて。
やっと辿り着いたわたくしをその冷酷な目線で射殺すかのように、みつめる。
シルビア? じゃない?
「あなた、ベアトリーチェ? なの?」
…………。
「そう、ね。そうかもしれないわ」
一瞬の沈黙ののちに、そう返事が返ってくる。
妖艶な表情を浮かべたシルビアの顔。
その唇が、赤く艶かしく動く。
白濁した空間。
ほんの少し先さえも、もう見えなくて。
その隔離された空間に、目の前の彼女と相対し。
「シルビア! だめよ、負けないで!」
そう声をかけていた。
ふっと、吹き出すような仕草をして。
「あなた、バカなの?」
そういう彼女。
「だいたいね、貴女にこの子を心配できる権利があるとでも思ってるの?」
「権利、って」
「言い換えるわ。あなたになんか、この子シルビアに何かを言う資格なんかないのよ!」
「だって」
「妹だから? 姉だから? そんなのなんの理由にもならないわ。あなた、今までこの子のことを見てもいなかったくせに」
ぎろりとこちらを睨む目が強くなる。
「この子のこと、理解しようとしたことも、仲良くしようとしたことも。家族としての心配りをしようとしたこともないくせに!!」
「だって!」
「だって、じゃ、ないわ! そうよね、自分はさぞ不幸だったって思ってるんでしょうよ! 確かにあなたのお父様は馬鹿よ。好きな女が不義をしていたかもしれないだなんてそんな妄想に囚われてあなたを邪険にしたんだものね。ああ、証拠はないんだった? あなたはアルベルト様の娘なのかもしれないんだものね!」
「それは違うわ!」
「ふん、どうだか。どちらにしてもよ。そのせいでシルビアが不幸になるなんておかしいじゃない! この子にはなんの罪もないのよ? なのに、お父様が本当に愛してるのはあなたで、自分はおまけだなんて知ったらどう思うとおもう? お父様が犯した罪のせいでこの子だけ貴族じゃなくなっちゃうだなんて、そんなこと、許せると思うの!!?」




