[妹]勇者の権能。空間転移。
「ベアちゃん!! ベアちゃんよね!?」
「どうして!? シルビィ!」
「どうしてもなにもない! いきなり居なくなっちゃったら心配するでしょ!」
真っ赤な髪が、すうっと色が落ちるように金色に変化していく。
妖艶なアウラクリムゾンの顔も、まだ幼さが残るベアトリーチェのものに変わった?
生命値、みたいなエネルギーの値はずいぶん減ってる。
さっきの勇者さまの攻撃で、アウラクリムゾンが内包するマナそのものを随分と削ったおかげだろうけど。
「どきなさい、シルビア。わたくしは’ソレ‘を浄化しないといけないの」
——ごめんなさい勇者さま。
——いいよ。身体、貸してあげる。
わたくしは勇者さまの承認をうけ、身体の表面のマトリクスのレイヤーをわたくし自身、エルザのものに変化させる。
「お姉さま? どうして?」
驚いた表情でこちらを見つめるシルビア。
って、驚いたのはこちらです!
「どうして? どうしてじゃ、ないわ。貴女こそ、いったいどうしてここにいるのよ。どうやってこんなところまでやってきたっていうの!?」
「どうやって、って。って、ここ、どこ? あたしはベアちゃんの気を感じて、そこの空間を掴んでひっくり返しただけだもの」
え?
空間をひっくり返した、って。
——勇者の権能の一つ。『空間転移』だ。エルザ。
そんな! どうしてシルビアが!?
「そんなことよりどうして!? どうしてお姉さまがベアちゃんを攻撃してるの!? お姉さまは聖女なのでしょう? だったらどうして!?」
「その子が魔だから、よ」
「うそ! うそ嘘! そんなの嘘だよね? ベアちゃん!」
「シルビィ。そこをどいて。わたくしはその女だけは許せない。わたくしから全てを奪った、奪おうとしてるその女。あいつだけはこの手で……」
目の前のベアトリーチェがその両手にまたエネルギーを集める。
自分のマナを空間に落とし、そしてその空間の膜にエネルギーを溜めて行くのがわかる。
だめ。
このままじゃシルビアまで巻き添えになる!
「ウソだよ! ベアちゃんはそんな子じゃない。ねえ。ウソだと言って!」
そう叫んで。無防備にベアトリーチェに抱きつくシルビア。
あ、っと思った時にはもう遅かった。
ベアトリーチェの集めたエネルギーが、閃光と共に周囲に拡散した。




