表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。  作者: 友坂 悠@書籍化しました!!(電子書籍配信中です!!)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/86

[次元嵐]マトリクスレイヤー。

※エルザ視点に戻ります。

 ■■■


「ベアトリーチェ!!」


 フリード様が苦しそうにそう叫ぶ。

 彼の胸のゲートから抜け出すように出てきたベアトリーチェ様は、洞窟の天井付近にポッカリと浮かんでこちらをみている。


 幽霊?

 少し半透明に見えていた彼女。

 その姿はどんどんと実体化していくように、輪郭がはっきりとしてきた。


(あれは……マナのレイヤー?)


 魔獣がその表皮として纏うマナのガワ。

 マナで構築したレイヤーと言われる膜に、その形質を映し出したもの。

 実際の生き物の肉体とは違うそんなマナの表皮は、魔獣や魔人のような精神生命体の仮初の肉体。

 この間講師としてきていただいた先生は、そんなふうにおっしゃっていたっけ。

 マトリクスレイヤー。

 って、そういう名前で呼んでいらした。


 だとしたら、あそこにいるベアトリーチェ様は人の肉体を持った存在ではない?

 少なくとも、今あそこにいる彼女は、元々のベアトリーチェ様の生き霊? みたいなものなのかしら。


 フリード様が、お辛そうな体を鼓舞し、支えていた騎士たちの手から離れ、一歩前に出た。

 膝が折れかがみ込むも、顔だけは中空に向けて声をあげ。


「お前、どうして? いや、お前はベアトリーチェ、なのか!?」


 洞窟のほぼ天井の近くに浮かぶその姿。

 ヒラヒラと舞う赤いワンピースから覗くその顔に浮かぶ妖艶な唇を、フワッとひらく。


「あら、フリードお兄様は妙なことをおっしゃるのね。わたくし、ずっとあなたの中におりましたのに」


「でも、いや、違う」


「何が、違うのかしら?」


「ベアトリーチェは、お前のようには笑わない!」


「あら、ひどいわ。お兄様はいつまで経ってもわたくしのことを子供扱いして。女は、変わりますのよ。そう、そこにいらっしゃる聖女さまだって、きっと変わってしまうわ」


 宙に浮かび両手を開いてそう妖艶に微笑む彼女。

 わたくしも、変わってしまう?

 だって、そんな。


 ベアトリーチェ様から真っ赤なオーラがその体から滲み出て。

 だんだんとその周囲に赤黒い粒子が広がっていく。

 あれは、アウラ? ううん、アウラだけど、ちょっと違って。



「なあ、痴話喧嘩はそこまでにしてもらってもいいか? あれは、魔、厄災だ。私にはあれを滅する義務がある」


 勇者様がそう言ってわたくしたちのところまで下がってきた。

 剣聖様もシルバー様もラプラス様も。

 わたくしたちを守って下さろうとしているのはわかる。


「フリード、さま」


「エルザ、すまない」


「いえ、わたくしは。あれ、は、ベアトリーチェ様なのですか?」


「みかけは確かにベアトリーチェのものだ。しかし、あれは」


「あれは、少女に取り憑いた魔ですよ。それもかなり上級の魔ですね」


「パルツィファルさま」


「さっきから、また一段と魔の濃度が上がっています。間違いなくG線級の魔でしょうね」


「「G線級!!?」」


 そんな声があがり、皆の顔が強張って。


 それもそうだろう、彼らにとってそんな最上級の魔、最上級の厄災との遭遇など、想定外の脅威であろうから。


 こんな洞窟の奥で、こんな少数で、勝てるわけがない。

 もはや逃げ出すことも難しい。

 そんな状況だもの。



「まあ、いいわ。兄様がわたくしのことを違うというなら、違って見せましょう。そうね。今のわたくしは紅竜レッドクリムゾン。最上級の魔ギア、アウラクリムゾンと一体化しているのだから!」


 その真っ赤な口がそう言い放つと同時に、周囲にアウラによる次元嵐が巻き起こった。


「ダメ、いけない!」


 わたくしは両手を高く掲げ、心の奥底にしまってあったアウラの翼を魂のゲートから放出した。


 あれは、ダメ。

 空間ごと切り裂いてしまうあんな嵐、普通のシールドじゃ防げない。

 アウラにはアウラで相殺しなくちゃ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新作です♬
連載版
『あなたのことはもう忘れることにします。探さないでください』
もよろしくおねがいします♬
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ