[愛]生涯フローラだけを。
そして。
両親のお友達も集まったのだろう集合絵。
こちらには、真ん中にはお父様とお母様。そしてその隣に、アルベルト様がいらっしゃった。
周囲にたぶん同級の方が何人も集まって。
端のほうに、あの部屋の絵にあった、アルベルト様とよく似た、もう少し無骨にした感じの若者の姿があって。
「こちらはアルベルト様ですよね。で、こちらは? アルベルト様に少し似ていらっしゃるお方」
わざとらしくならないように気をつけて。
わたくしはその絵を指差して聞いてみる。
わたくしの勘が間違っていなければ、このお方は……。
「ああ。彼はゴットフリート。僕の一歳下の弟。君のお母さんと同じ疫病にやられてね……。僕ら、僕がグラームスと一緒に国中の疫病対策に奔走してまわっている間に病に罹って……」
「お亡くなりに、なられたのですね……」
口ごもってしまったアルベルト様にかわって後をつなぐ。
「ああ。無骨で口下手な弟だったけれど、本当に優しいやつだったんだ……」
ああ。間違いなかった。
たぶん、彼が、フリード様のお父様。
だって、ゴットフリート様がフリード様のお母様の恋人だったのであれば、フリード様が産まれる直前に亡くなったゴットフリート様と別れアルベルト様と結婚していたとは考えにくいもの。
それよりも、フリード様を宿していたお母様を、弟の忘れ形見のフリード様ごと妻に迎えたというのが正解なのかもしれない。
アルベルト様のこの優しさが、フリード様とお母様を見捨てることができなかった。
そういう可能性の方が絶対に高い。
だとしたら。
もしもグラームス父様が疑うようにわたくしの本当のお父様がアルベルト様だったとしても、わたくしとフリード様は姉弟ではなく従姉弟になる。結婚するにもなんの支障もなくなるわけで。
だから?
グラームス父様は当然ゴットフリート様の事も知ってらしたはずだから。
だから余計に疑ったんだ!
そっか。そういうこと。
でも。
「アルベルト様。アルベルト様がフローラ母様を愛していたというのは、本当ですか?」
思わず、そう言葉に出ていた。
彼は。
一瞬驚いたように目を見開いて。
そして、改めてわたくしをその優しい瞳でしっかりと見つめて。
うなずいた。
「ああ、本当だ。僕は、フローラを愛していた。いや、フローラだけを生涯愛し続けてきた」




