死神の話
ある時、男が死にました。
その瞬間、人が亡くなると悲しくて泣き叫ぶ精霊のバンシーが笑って躍り狂い、その男が住む町の人々は、大喜びで酒盛りを始めました。
その男は、とてもとても酷い男だったのです。
貧乏人に高い利子を付けてお金を貸し、お金が払えなくなると、相手が病人だろうと借金の替わりに家ごと奪い取りました。また、職人に仕事を依頼しておきながら、商品が出来上がると、あれこれ言いがかりを付けて代金を負けさせました。
それに男は役人にお金を渡して、仲良くなっていたので、男に逆らうと役人に言いつけられて、役人に逮捕されて酷い目に合わされるので、誰も男に逆らえませんでした。
そんなとてもとても酷い男だったので、町の人々やバンシーが喜んだのです。
さて、町の人々が喜んでいるのを死んだ男の体から抜け出した男の魂が見ていました。男は、その様子を見て悪態をつきました。
「くそ! どいつもこいつも覚えてやがれ!!」
男が地団太踏んで悔しがっていると、あの世のお迎えの死神がやって来て挨拶しました。
「やぁ、ろくでなしの魂め。地獄のお迎えが来たぞ。」
男は、驚き、死神を非難しました。
「地獄! 何で俺が地獄行きなんだ! 俺は何も悪いことは、してないぞ! 何かの間違いだろ!」
それを聞いた死神は、呆れ返ったように言いました。
「お前さん。本当に自分が悪いことしてないって思うのかい?」
「ああ。本当だとも! なぁ、あんた。取引しないか? あんたの望みを叶えてやるから、俺を天国行きに変えてくれないか?」
男が死神に取引を持ちかけてきたので、死神は、ほとほと呆れましたが、取引に応じることにしました。
「ようし。それじゃ、お使いをしてもらおうかい。私の言う場所にお届け物を三回したら、天国行きを考えてやろう。」
男は、喜んで引き受けました。
最初に死神は、橋の下の病人に銀貨6枚を届けさせました。
橋の下の病人を見て、男は、不思議に思って「あんたは、どうして、こんな橋の下で暮らしているんだい?」
と、尋ねました。
橋の下の病人は、答えました。
「何を言っているんだい? あんたが私が病人で働けないのに、借金の替わりに家をとったから、私は橋の下で暮らしているんだ。」
次に死神は、人通りのない町外れに店を構える職人の所に銀貨6枚を届けさせました。
職人を見て男は、不思議に思って尋ねました。
「あんたは、どうしてこんな人気のない所で店を構えてるんだい?」
職人は、答えました。
「何を言っているんだい? あんたがいつも無理難題ばかり言って、品物の料金を払わないから、お金がなくなって、こんな所にしか店を構えられなくなったんだよ。」
最後に死神は、みなし児の所に銀貨6枚を届けさせました。
みなし児を見て、男は、不思議に思って尋ねました。
「お前は、どうして親がいないんだ?」
みなし児は、答えました。
「何を言っているんだい? あんたが私のお父さんとお母さんを役人に嘘を言ってつきだしたせいで、お父さんとお母さんは死刑になったんじゃないか。」
死神が男の肩に手を置くと、男は、黙って頷き、大人しく地獄に旅立って行きました。




