少年の花嫁
これは、まだ大空に飛ぶ鯨がどうすれば海を泳ぐ象より早く走れるか努力していた頃の話です。
とある所に貧しいけれども民が幸せに暮らしているエルフの国がありました。エルフの王様はとても慈悲深い人だったので、常に民が平和に暮らして行けるように良い政治を行っていました。ところが、その国に住むへそ曲がりの魔女は、それが面白くありません。
人が困っているのを見て喜ぶ魔女は
「皆が幸せに暮らしてる世界なんて見ていて退屈だ!」
と、いつもムシャクシャしておりました。
ところがある冬の日のこと、王女様が元気な王子様をお産みになられました。そして国民の全てが王子のもとへ行き、祝福の言葉をかけて行きました。
その話は、へそ曲がりの魔女の耳にも届きました。その話を聞いたへそ曲がりの魔女は、シメシメと笑い、王子の祝福をするふりをして、謁見の間に訪れました。王様と王女様もへそ曲がりの魔女が祝福に来てくれると思っていなかったので驚きましたが、王子を祝福してくれると言うので魔女に王子を会わせることにしました。
魔女は、王子の前に跪くと声高らかに祝福しました。
「この王子は、この国を貧困から救う偉大な王子に育つでしょう!ただし、そのためには、この国に同じ日に生れた子を妃にしなくてはいけない!」
魔女の呪いの言葉は、国中に届きました。魔女は、知っていたのです。王子が生まれたのと同じ日に生まれたのは、この国で服屋に息子だけだったことを。
大変な事になりました。魔女の呪いは、呪いをかけた魔女にしか解けなかったので王様は魔女に呪いを消すように頼みましたが、魔女は、それを断り、カラスになって何処かに飛び去ってしまったので、誰も魔女の呪いを解くことが出来なくなってしまいました。
魔女は、ケタケタと笑いました。退屈な日々がもうすぐ終るとなると思うと楽しくて仕方ありませんでした。
王様と王女は、頭を抱えましたが、どうすることもできません。
王様と王女は、魔女に謁見を許してしまったことを毎日王子に謝りましたが、成長した王子は、少しも慌てず
「何も心配ありません。私は、この国を貧困から救うために私と同じ日に生まれた少年を花嫁に貰って幸せに暮らします。」と、笑って答えるのでした。
そして王子が生まれてから17年の時が過ぎ、とうとう、王子がお嫁さんを貰う歳になってしまったのです。
結婚式の当日、噂を聞いた近隣中の国々からも人々が駆けつけました。何しろ少年の花嫁など、聞いたことがありません。人々は、少年の花嫁を一目見ようと王子の国に押し掛けて来たのです。
王子の妃となる少年の花嫁を乗せた籠を見た人々は、ため息を漏らしました。真っ白な花嫁衣装を着た少年の花嫁があまりにも美しかったからです。少年の花嫁も王子と同じように魔女の呪いを受けていたので、呪いの力で恐ろしいほど美しく成長していたのです。
そして、王子の元に少年の花嫁が訪れ、二人は誓いの言葉と熱いキスを交わし、結婚式は、無事に終了しました。
遠くから隠れて見ていた魔女は、楽しくて仕方ありません。それからは毎日、使い魔のカボチャたちと楽しく歌って踊り、ケタケタ笑って過ごしました。
ところが、不思議なことに結婚式から一年経ってから、少年の花嫁が子供を産んだと噂がたったのです。
魔女は、気になって仕方ありませんでした。そこで王子の子供を一目見たいばかりに危険をおかして変装し、再び新たに生まれた王子の子供を祝福しに謁見の間に訪れました。
魔女は、王子の子供を見て怒りました。
「やいっ!よくも騙したな。男が子供を生むものか!お前は、少年の花嫁を貰わなかったな!」
魔女は、思わず正体を現して王子を罵ってしまったので、衛兵たちに捕まってしまったのです。
王子様は、その様子を見てケタケタと笑いました。
「間抜けな魔女め!服屋の息子を嫁に嫁に貰ったのは、事実だが服屋の子供は、男女の双子だったのだよ!」
そうです。幼い頃から賢明だった王子様は、服屋の子供が双子だった事をこの日が来るまでずっと秘密にさせていたのです。そして、王子は少年の花嫁と一緒に少年の花嫁の姉も一緒に花嫁として貰っていたのです。
魔女は、地団駄踏んで悔しがりましたが、お城に仕える魔術師達が作った牢屋に幽閉されて、それからは、悪いことをすることがありませんでした。
ところで、王子が少年の花嫁を貰った時に近隣の人々が国に訪れたので、町は活気になり、多くのお金が民に行き渡り、貧しかった国は、幸せになりました。
それに王子は、少年と少年の姉を妻にしたまま、その後も幸せに暮らしました。さらに不思議な話を聞いた国々の人々が一目見ようとそれからも沢山、来訪したので、国はますます栄えました。
また王子は、魔女の呪いのおかげで不思議な賢さを身につけていたので、その後も素晴らしい政治を行い、ますます国は栄えたと言うことです。
魔女の呪いの言葉通りになったということです。
少年の花嫁を貰うと言う不思議な不思議なお話でした。




