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騎士と悪魔

この世の全てが嫌になった騎士が家を捨てて、あての無い旅に出掛けました。

ある時、夜の山で騎士は道に迷ってしまいました。騎士は、どこか安全な所で朝が来るまで過ごそうと思いながら、歩いて安全な場所がないかと探していると、山道を通る馬車に出くわしました。

「そこの方。こんな夜更けにどうされましたか?」

スケルトンの御者がそう尋ねたので、騎士は安全な場所で夜を過ごそうと探していると答えると、馬車に乗っていた美しい悪魔の少年が顔を出して「それならば、今夜は、私の神殿に泊まりなさい」と、言いました。騎士は、悪魔の勧めに従って、悪魔の神殿に泊まることにしました。

悪魔の神殿は、とても大きく立派でした。

騎士は、そこでこれまで味わったことが無いほどの歓迎を受けました。豪勢な料理にフカフカのベッド。そして、とても美しい悪魔の少年と一晩中、楽しい話をしました。

次の日の朝。悪魔は出掛けようとする騎士の腕に抱きついて、「ずっと私と一緒にいてください。ずっと私を可愛がってください。」と、泣きつきました。騎士は、悪魔がとても愛しく思えたので、悪魔と結婚することにしました。

それから、毎日、騎士は、この美しい悪魔の少年と甘い生活をして過ごしました。

漆喰よりも白い肌に美しい金髪。エメラルドのような瞳に子猫のように可愛らしい声。抱き締めたら潰れてしまいそうな細い体。

騎士にはもう、悪魔の事しか考えられませんでした。

ところが、ある日、悪魔の神殿の近くの村に宣教師がやって来ました。宣教師は、村人から悪魔の神殿の事を聞き、悪魔に神殿を譲って出ていけと、脅迫に来ました。

悪魔は、毎日、しくしく泣いて許しを請いましたが、宣教師は、許してくれず、とうとう、神殿を明け渡す事になりました。

騎士は、悪魔と一緒に馬車に乗り、遠くの山に神殿を建てて移り住む事にしました。

そして、二人が遠くの山に住んでから数年後に悪魔は騎士の子を身籠りました。騎士は悪魔が男なのに身籠ることを不思議に思いましたが、悪魔は、それが当たり前のようにしていたので、悪魔ではそういうものなのだと、思い込みました。

さて、ある日、山の麓の町に騎士が買い物に出掛けたときに、騎士は宣教師に会いました。

宣教師は、騎士の顔を見て、騎士が悪魔に取りつかれていることに気がつきました。

「あなたは、悪い悪魔にたぶらかされています。悪魔は、子供を生む前にあなたを食べてお腹の赤ん坊の為に滋養をつける気です。今すぐ悪魔が追ってこれないほど、遠くの土地に逃げなさい。」

騎士は、それを聞くと、恐ろしくなりました。そして、宣教師が貸してくれた馬に乗って、とうとう遠くの土地に逃げ去ってしまいました。

悪魔は、お腹の子と共に山に残されてしまいました。

騎士は、数日間、馬に乗って遠くに行きましたが、だんだん、悪魔とお腹の子の事が心配になってきました。

そして、宣教師から悪魔に食べられてしまうと聞かされていましたが、馬に乗って悪魔の住む山に帰ってきてしまいました。

悪魔は、家を出ていった事を怒りもせずに騎士を暖かい抱擁とキスで迎えました。

そして、悪魔は涙ながらに自分の身の上話を語りだしました。

「私は、元々は、異国の女神でしたが、教会が来てからは、悪魔に貶められました。私は、生けにえを求める悪い神だと恐れられました。そう言われるうちにだんだん、悪魔の少年になってしまったのです。それでもあなたの子供を宿したことで、再び女神に戻れそうなのです。私の事を今でも愛しているならば、私のそばにいてくれませんか?」

騎士は、その話を聞くと黙って頷き、全てを流れのままに任せました。

それから、悪魔の山から騎士が降りてくることは、ありませんでした。悪魔の山の麓の町に住む人々は、騎士が悪魔に食べられてしまったのだろうと噂しあいました。

ところが、騎士が山から降りてこなくなってから数十年後、山の麓の町が日照りにあいました。このままでは、町も畑も干上がってしまいます。町の人々は頭を抱えて困りました。

すると、山から騎士が降りてきて、蛇神に雨乞いをするように指導しました。町の人々は、騎士が生きていた事に驚きましたが、藁にもすがる思いで雨乞いを始めました。

町の中央に櫓を立てて、毎日毎日雨乞いをしていると、悪魔の山から雲が立ち登りだしました。

人々が大喜びしていると、山から二匹の羽の生えた大蛇が飛びあがり、雲の中に消えていくと、大雨が振りだしました。それで町は救われました。

人々が雨に喜び躍りを踊っている姿を見て、騎士は、何も言わずに山に帰ってきてしまいました。

それから、この町では、夏になると町を救った騎士と山の悪魔とその子に感謝するお祭りをするようになりました。そして、山の入り口に石碑を建てて、日照りが続くとお祈りを捧げたと言うことです。


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