美しい少年
これは、少し長いお話になるが、大切なお話なのでよくお聞き。
まだ巨人がエメラルドの海からルビーを掘り出せないかと懸命になっていた頃の話です。
エルフの旦那様が商売の取引が長引いたせいで帰りがすっかり夜遅くになってしまいました。
そんな帰り道の途中に道のわきに座り込むこの世の者とは思えぬほど美しいハーフソップの少年を見かけました。
お日様のように輝く金色の髪に、翡翠のように深い緑の瞳、ルビーのように鮮やかな唇をしたそれは美しい姿の少年でした。
エルフの旦那様は、生唾を飲んで馬車を止めて、ハーフソップの少年に話しかけてしまいました。
「これこれ、君。どうして道のわきに座っているのかね?もし困っているなら、私の屋敷で面倒を見てやってもよいぞ?」
そう、尋ねられたハーフソップの少年は、ゾッとするほどキレイな笑みを浮かべて
「ああ、旦那様。私は旦那様のように優しいご主人様を待っていました。どうぞお側でお仕事をさせてくださいませ。」
その声は、ガラスのように透き通っていたので、エルフの旦那様は、すっかり骨抜きになってしまいました。
そして、エルフの旦那様は、お屋敷につくとハーフソップの少年が望むものを何でも買い与えました。
ハーフソップの少年が温かい食事をねだれば、温かい食事を与え、ハーフソップの少年がキレイな洋服をねだれば、キレイな洋服を買い与え、ハーフソップの少年が馬をねだれば、馬を買い与えました。
そして、その度にうわ言のように
「ああ、美しい君。君が望むのなら、何でも与えよう。その代わりその美しい唇で私にキスをしておくれ。」
と、繰り返しました。
そんな日が毎日続けば、大きなお屋敷をもつ旦那様でもお金がなくなります。そのうちに旦那様の家は没落してしまいました。そしてその後、誰もエルフの旦那様を見かけなくなりました。
それから何年か後にリザードマンの旦那様が商売の取引ですっかり帰りが夜遅くになってしまいました。
そんな帰り道の途中に道のわきに座り込むこの世の者とは思えぬほど美しいハーフソップの少年を見かけました。
お日様のように輝く金色の髪に、翡翠のように深い緑の瞳、ルビーのように鮮やかな唇をしたそれは美しい姿の少年でした。
リザードマンの旦那様は、生唾を飲んで馬車を止めて、ハーフソップの少年に話しかけてしまいました。
「これこれ、君。どうして道のわきに座っているのかね?もし困っているなら、私の屋敷で面倒を見てやってもよいぞ?」
そう、尋ねられたハーフソップの少年は、ゾッとするほどキレイな笑みを浮かべて
「ああ、旦那様。私は旦那様のように優しいご主人様を待っていました。どうぞお側でお仕事をさせてくださいませ。」
その声は、ガラスのように透き通っていたので、リザードマンの旦那様は、すっかり骨抜きになってしまいました。
そして、リザードマンの旦那様は、お屋敷につくとハーフソップの少年が望むものを何でも与えました。
ハーフソップの少年が温かい食事をねだれば、温かい食事を与え、ハーフソップの少年がキレイな洋服をねだれば、キレイな洋服を買い与え、ハーフソップの少年が馬をねだれば、馬を買い与えました。
そして、その度にうわ言のように
「ああ、美しい君。君が望むのなら、何でも与えよう。その代わりその美しい唇で私にキスをしておくれ。」
と、繰り返しました。
そんな日が毎日続けば、大きなお屋敷をもつ旦那様でもお金がなくなります。そのうちにリザードマンの旦那様の家は没落してしまいました。そしてその後、誰もリザードマンの旦那様を見かけなくなりました。
それから何年か後に、性悪でけちん坊のドワーフの旦那様が商売の取引ですっかり帰りが夜遅くになってしまいました。
そんな帰り道に道のわきに座り込むこの世の者とは思えぬほど美しいハーフソップの少年を見かけました。
お日様のように輝く金色の髪に、翡翠のように深い緑の瞳、ルビーのように鮮やかな唇をしたそれは美しい姿の少年でした。
ドワーフの旦那様は、生唾を飲んで馬車を止めて、ハーフソップの少年に話しかけてしまいました。
「これこれ、君。どうして道のわきに座っているのかね?もし困っているなら、私の屋敷で面倒を見てやってもよいぞ?」
そう、尋ねられたハーフソップの少年は、ゾッとするほどキレイな笑みを浮かべて
「ああ、旦那様。私は旦那様のように優しいご主人様を待っていました。どうぞお側でお仕事をさせてくださいませ。」
その声は、ガラスのように透き通っていたので、ドワーフの旦那様は、すっかり骨抜きになってしまいました。
そして、ドワーフの旦那様は、お屋敷につくとハーフソップの少年が望むものを何でも与えました。
ハーフソップの少年が温かい食事をねだれば、温かい食事を与え、ハーフソップの少年がキレイな洋服をねだれば、キレイな洋服を買い与え、ハーフソップの少年が馬をねだれば、馬を買い与えました。
そして、その度にドワーフの旦那様はうわ言のように
「ああ、美しい君。君が望むのなら、何でも与えよう。その代わりその美しい唇で私にキスをしておくれ。」
と、繰り返しました。
しかし、お屋敷で働く使用人達は、「あの使用人達のお給金まで出し渋る性悪でけちん坊の旦那様が、いくらあの少年が美しいからと言って、あのようにお金を使うだろうか?」と、怪しがり、ドワーフの旦那様には内緒で村のはしに住んでいた黒エルフの魔女に見てもらうことにしました。
黒エルフの魔女は、お部屋の影からドワーフの旦那様と美しいハーフソップの少年のやり取りを最初から最後まで覗き見ました。
すると、ハーフソップの少年の願い事を叶えた夜、旦那様は、ハーフソップの少年のルビーのように鮮やかな赤い唇に口づけをされるのではなく、ハーフソップの少年のルビーのように鮮やかな赤い唇に首すじを噛みつかれ、生き血を吸われていたのです。
しかも生き血を吸われているのにも関わらずドワーフの旦那様は、恍惚とした笑みを浮かべていたというのです。
使用人たちに一部始終を話して聞かすと黒エルフの魔女は
「あの少年は、ハーフソップではない。あれは、ラナンシーだ。」と、震えながら言いました。
黒エルフの魔女が言うには、ラナンシーとは、金持ちの男をたぶらかす吸血鬼の事で、ラナンシーに取りつかれたものは、吸血鬼の意のままに操られてしまうのだという。そして、取りつかれたものの財産が無くなると最後には血を吸い付くして殺してしまうのだという事だった。
使用人達は、震え上がり、黒エルフの魔女に何とか出来ないか頼みました。
黒エルフの魔女は、しばらく考え込んでいましたが、意を決して
「わかりました。あのラナンシーと戦うのは私も命が危ない。しかし、あのラナンシーを放っておくと、ドワーフの旦那様もその他の人の命も危ない。その為ならば、命を捨ててあのラナンシーを退治しましょう」と、言いました。
黒エルフの魔女は、使用人達に犬三匹と朝一番に畑に出ていたナメクジと鶏の足三匹ぶん、イモリを黒こげになるまで焼いたものを用意させると、大鍋にナメクジと鶏の足と黒こげのイモリと何やら妖しいハーブを入れて数時間煮込んだスープを作り、使用人に用意させた犬三匹に食べさせました。
そして、スープを食べ終わった犬たちの前に立ち、口のなかでゴニョゴニョと冥界の言葉を唱えると犬達はたちまち大きな4つ目の犬に変わりました。
魔女は、四つ目の犬たちを従えて、ドワーフの旦那様とラナンシーのいる部屋に駆け込みました。
「さぁ、惨めなラナンシーよ!冥界からのお迎えだよ!」
黒エルフの魔女がそういって叫ぶと三匹の四つ目の犬達は一斉にラナンシーに飛びかかりました!
ラナンシーは、慌てて正体を現して、長い髪と鋭い爪と血を吸う牙で三匹の四つ目の犬達と戦いました。
激しい戦いの末、三匹の四つ目の犬達はラナンシーに噛み殺され、黒エルフの魔女も片腕を食いちぎられてしまいましたが、どうにか、ラナンシーを殺すことが出来ました。
ラナンシーは、死んだら煙のように消えてしまい、それと同時にドワーフの旦那様も正気に戻りました。
ドワーフの旦那様は、使用人達から事の顛末を聞くと、使用人に感謝して、それからは、心を入れ換え使用人達のお給金を渋ることはなくなったそうです。
また、命を捨てて自分やこの先、ラナンシーに命を狙われるかもしれない人達の命を救ってくれた黒エルフの魔女の優しい心に胸をうたれ、黒エルフの魔女を妻に娶り、三人の子宝にも恵まれ、末長く幸せに暮らしたということです。
だから、この辺りの地方の人は口を揃えていうのだという。
「人は、見た目や生まれ育ちで判断しちゃいかん。心を見なさい。ドワーフと黒エルフの魔女でも結ばれたんだから」と。
これは、そんなお話だ。




