14-2 意外なキッカケ
ショウが出ていって少しすると、婦人が大きな花瓶を持って戻ってきた。
ソファ前に置いてあるテーブルに置くので「すごい存在感がありますね」
「わたくし、大きな花が大好きなんですよ。だから、花束にすると、どうしても大きくなってしまうの」
「プレゼントされる方は驚くでしょうね」笑みを浮かべると、しばらく目の前の花瓶に生けられた大きな花を見る。
「気に入っていただけたかしら?」
「ええ、もちろん。どうぞ、お茶をお入れしました」
「まあ、ありがとうございます」カップを取ると「仕事中にケガをされたとお聞きしましたが、どんなお仕事をされてるんですか?」
「フリーのルポライターをしてます」
「ルポライター、ですか?」
「記者です。今はいろんな国の文化や特色を取材して、雑誌に掲載してます」
「まあ、そうなんですか。それでは、一年中旅をされてるんですか?」
「そうですね」
「それではご両親が心配されるでしょう?」
「いえ、両親はいないので」
「まあ。失礼なことを言ってしまったわ」婦人は口を押えると「では、ショウさんもその、ルポライター、なんですか?」
「そうです」
「いつも一緒に取材に行かれるんですか?」
「そうですね。彼とは一年くらい一緒に仕事をしてます」
「そうなんですか。いろいろと大変だと思いますけど、無理はされないようにしてくださいね」
「はい。気を付けます」
「ところで、どこのお医者様に診ていただいてるんですか?」
「医者、ですか?」
「そうですよ。どこのお医者様に通ってるんですか?」
「いえ、医者には掛かってません」
「まあ! 診ていただいてないんですか!」
「こういう事は今まで何回かありましたし、常備薬を持ち歩いてますから」
「それはいけないわ。お元気になられたと言っても、まだお顔の色は良くないし、だるそうに見えます。いいお医者様を知ってますから、きちんと診ていただいたほうがいいわ」
「本当に大丈夫ですから、そこまで心配しないでください」
「いいえ、いけません。これから連れてきます!」
婦人は立ち上がると、サッサと部屋から出て行ってしまった。
「キャンベラ婦人!」
あとを追い駆けようと立ち上がるが、足がもつれて倒れてしまい「ショウ!」
キラの大声を聞いて部屋へ入ってくると「婦人を止めて! 医者を連れてくると言って出てっちゃったの!」
「なんだって!」慌てて婦人のあとを追い掛ける。




