13-3 明かされる闇
「ショップでは、私たちをキャラクターとした商品がたくさん出回ってるわ。無責任な人間は、その商品を買って楽しんでる。私たちがこんなに苦しんでるのに、毎日人間の影に怯えながら暮してるのに、そんな事なんかまったく気付かずに楽しんでる」
「……」
「そんな事をしてる人間を信じろというの? 自分たちの生活が良ければ、自分たちが楽しめれば、私たちはどうなってもいいというの?」
「そんな事は思ってない」
「現に、人間はそういう事をしてるじゃないの」
「……」
「私たちを助けるための団体をたくさん作っても、その団体の人間がもっとひどい事をしてるじゃない」
「……PFSの、あの事件のことを言ってるのか?」
「あの事件は公になったけど、水面下では、もっとひどい事が行われてるじゃない」
「もっとひどいって?」
「知ってるはずよ。あなただって言ったじゃないの。幽閉されて動けなくなったシルバーフェニックスの女性が恐がるのを知ってるって」
「あ……」
「私たちは、各団体が水面下で行ってることを知ってるのよ。イヤラシイ人間が、私たちにどんな事をしてるか知ってるのよ! そんな事をしてる人間を信じろと言うの!」
「……」
「私たちはオモチャじゃないのよ!」
「……」
「若い女性の数が激減してるから、最優先に救うことが重要だなんて言ってるけど、自分たちの楽しみのために最優先にしてるんじゃないの! 減ってるからじゃなくて減らしてるんでしょう!」
「……」
「人間が作ったいい加減な団体のお陰で、どれだけの女性が死んでったか知ってるの! どれだけの覚悟をして死を選んだが知ってるの!」
「……」
「そんな事をしてる人間をどうして信じられるのよ!」
「……」
「私たちが何をしたっていうの? 何か迷惑掛けた? 恐怖に陥れるようなことをした?」
「……」
「何もしてないでしょう? なのに、どうしてこんなひどい事するの? どうして私たちだけがこんな目に遭わないといけないの!」
「……」
「私たちだって人間と同じように生きてるのよ!」
「……」
「あなたたち人間が、この世界で一番偉いと思ってるの? ねえ、そう思ってるんでしょう? 人間が一番偉いと思ってるんでしょう? だからあんなひどい事するんでしょう!」
「……」
「答えてよ」
「……」
「答えてよ! そう思ってるんでしょう!」
「……」
「なんで黙っちゃうの? なんで答えないの?」
「……」
「答える必要ないから? 本当は、私たちのことなんかどうでもいいと思ってるんでしょう?」
「そんなこと、思ってない」
「ウソ」
「ウソじゃない」
「じゃあ、私たちの生活を返して」
「……それは」
「元どおり戻して。メチャクチャにしたものを全部戻して!」
「……」
「また黙り込むの?」
「……」
「もういい。あなたに、私たちの気持ちはわからない」
「……キラ」
「もういい」
しばらくの間、沈黙が続くと「ごめん、ごめん。今の俺には、謝ることしかできない。なんの力もない俺には、今の状態を変えることができない。でも、いつか、いつか変えてみせる。だから、それまで頑張ってほしい」
「そんな無責任な言葉、聞きたくない」
「……」
「こんな状態が続いたら、私たちは滅びてしまう」
「そんな事させない」
「なんの力もないあなたが、どうやって食い止めるというの?」
「今はまだわからない。けど、必ず何かいい方法が見付かる」
「それまで、私たちが生き延びられるという、保証はないわ」
「お前は、俺が命に代えても護る」
「じゃあ、あなたが死んでしまったら?」
「エッ?」
「あなたが死んでしまったら、どうするの?」
「それは……」
「そんな無責任なこと言われても、嬉しくない」
「……」
「この先、何をするか決めてないんだったら、PFSに戻ればいい。そこで、あなたの思うようにすればいい」
「……」
「疲れたから、横になる」
背を向けるキラの肩が小刻みに震えているのを見て、傍に行くことができず、かといって部屋から出ることもできないので、微かに聞こえてくる泣き声が止むまで、彼女の背中を見ていた。




