5-1 今度は鉢合わせ
チリンチリーン。
「いらっしゃいませ。どちら様でしょうか?」
「わたくしジェラードと申します。午後二時にアルド社長と会う約束をしてますの」
「ジェラード様、承っております。どうぞお入りください」
奥へ進むと別の受付嬢が待っていて「こちらでお待ちください」奥にある応接間のソファに案内する。
現在地。支店を二百店舗持つアルド宝石店、本店。
目的。もちろん社長のアルド氏と会うこと。
「虚栄心の塊ってことがよくわかるインテリアね。キンキラ御殿」
どうだ! 参ったか! と言わんばかりの見事な飾りつけで目がチカチカする。
呆れているところに、五分遅れて社長のアルドが姿を現した。
スーツのボタンが、絶対屈むなよ! と言っているかのような太鼓腹に、成金によくありがちな、どんなブッとい指でも隠れてしまう指輪を幾つもしている。
「どうも、お待たせしてしまって申し訳ありません。急に予定外のお客様がいらしたものですから」ヘラヘラ笑いながら声を掛けてくるので「……いいえ、どうぞ、お気遣いなく……」苦笑して答えると「では、こちらへどうぞ」奥へ招き入れる。
コキコキッ。
「アーッ、参った! あのスケベオヤジ、脚しか見てないんだから」玄関の階段を肩を叩きながらだるそうに降りると「ま、これも計画遂行のため、ガマンガマン」
道路を渡って反対側の歩道を歩いていると(見られてる)妙な視線を感じる。
「誰かしら?」
追跡者が誰なのか確かめるため、歩道の右側に隣接する公園に入った。
歩いていると(やっぱり付けられてる)
しばらく公園内を歩き回ったが、妙な視線はずっと付きまとっている。
(しつこいわね。こうなったら)
林の中へ入っていき、大木の陰に隠れると、少しして人影が現れた。
「アレッ? いない」慌てて辺りを見回しているので「動くな!」木陰から出て追跡者の背中に銃を突きつけ「何者? なぜ私のあとを付ける!」
「ワーッ! タンマタンマ! 公園前で美人の君を見掛けて、お茶にでも誘いたいなって思って付いてきたんだよ! でも、なかなか声を掛けられなくってさ!」
挙げた両手をバタバタさせながら、上ずった声で答える。
(あれ? この声、聞き覚えがある。まさか……)
「そのまま、ゆっくりこっちを向きなさい」
「撃たないでくれよ」バンザイの格好で振り向く男の顔を見ると「……やっぱり」全身の力が抜けていく。
「やっ、やあ、間近で見ると一段ときれい、やっぱり?」
「呆れた男ね! 誰を口説いてるかわかってるの? ショウ!」
「エッ! なんで俺の名前を知ってんの? どこかで会ったっけ? ンー、君みたいな美人なら忘れないんだけどなあ」上げた手を頭の後ろで組み、記憶を遡っている。
「日頃の素行が偲ばれるわね。ロリコンじゃなかったの?」
「その台詞、ま、まさか!」
「守備範囲は広いんだ」
「キラアアアアア!」驚きのあまり後づさる。