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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第三章 運命の輪が作るストーリー
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10-2 立場の違い

今回も前回に引き続き残酷なシーンが出てきますので、苦手な方はブラウザバックしてください。

 

 彼らと接したときのことや、キラと会ってからのことを振り返った。

「どうすればいいんだ?」

 焦る気持ちを押さえ、思い出そうと意識を集中させる。


(そうだ。彼らを助けたとき、どんなことをした?)


 ひどい環境の部屋に閉じ込められ、みんなグッタリしていた。そんな彼らにどんなことをしたか、記憶をさかのぼっていく。


「薬、薬だ! それぞれの状態を見て、アイツは薬を飲ませてた!」


 ソファ前に置いてあるキラのトランクのところへ行き、薬が入っているポーチを探しはじめる。

「どこだ? どこにある?」

 トランク内をくまなく探すが見付らない。


「バッグだ!」

 今度はいつも持ち歩いているバッグを探す。


「どこに置いたんだ?」

 部屋中を探し回るが、なぜか見付らない。

「どうしてないんだ!」だんだん苛立ってくる。「帰ってきたときはあったのに!」

 立ち止まり、戻ってきたときのことを思い出す。


「戻ってきた時、カーテンを閉めた後に部屋の電気を点けて、傷の手当てをするために、抱えてたバッグを、ソファ前の床に置いた!」

 ソファの周りを丹念に調べると「あった!」バッグはソファの下に押し込められていた。


 引っ張りだすと中から薬が入ったポーチを出し、中身をソファ前のテーブルに引っくり返す。


「どれを飲ませたらいいんだ?」あまりにも種類があるので困惑する。「落ち着け。覚えてるはずだ。確かアルバートたちを助けたとき、薬の説明を聞いた」


「緑は栄養剤で赤が鎮痛剤。黒が解毒剤ね」


「黒だ。黒が解毒剤だ!」

 散らばっている薬の中から黒いパッケージの錠剤を()き集めるが、手が震えて思うように動かない。

「焦るな! 落ち着け!」テーブルから落ちた錠剤を、震える手で拾う。

 その後、何とか黒い錠剤を集めると「どれを何錠飲めばいいんだ?」錠剤の多さに戸惑う。


「パッケージの色で分けてるのか」

「誤飲しないようにね。それと、色の濃さによって強さがわかるようにもなってるの。色が薄いものは効きめが弱いから三錠。濃い色は強いから一錠ってね」


「強い効き目は濃い色で一錠!」

 濃い黒のパッケージから一錠取りだすとベッド脇へ行き、サイドテーブルのトレーに乗せてある水差しからコップに水を入れると錠剤を自分の口に入れ、水を含み、キラを抱き起こすと、喉に詰まらないよう慎重に口移しで飲ませる。


「頼む。間に合ってくれ! 頼む!」

 飲んだことを確認するとベッドへ寝かせ、椅子に座ると、震える手でキラの頭を撫でる。

「誰か、助けてくれ……誰でもいいから、助けてくれ……」


 この日は夜遅くから雨が本降りになり、日付が変わるころには雷雨となった。


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