9-2 キラの秘密
しばらくの間、沈黙が続く。
そして、先に口を開いたのはキラだった。
「本当に頭の回転が速いわね。一つのことでここまで解析するなんて」
「わかったキーワードが大きかったからな」
「私が話したこと、どのくらいがウソなのか、わかってるんでしょう?」
「たぶん、お前個人に関することは、すべてウソだ」
「フフッ。あなたって、本当はとても恐い人なのね」
「……そんなこと言われたのは初めてだな」
「あなたほどの人を、PFSはよく手放したわね」
「俺より優秀な奴がたくさんいるからな」
「そんなウソ、通じないわよ。私もあそこにいたんだから」
「……じゃあ、お前の買いかぶり過ぎだ」
少し間があった後「これから、どうするの?」
「エッ?」
「私を利用して、グループを乗っ取る?」
「何を言い出すんだ?」
「それとも、グループのことを公表して潰す?」
「俺が、そんな卑しいことをすると思ってんのか?」
「ええ」
「バカにするな!」
「バカになんかしてないわ」
「バカにしてんだろう! どうして俺がそんな事するんだよ!」
「……私の正体を、知ってしまったからよ」
「……確かに、その事については、正直、すごく驚いた。まったく予想してなかったから。お前の姿を見たとき、一体何が起こったのか、パニックを起して、頭の中が真っ白になった」
「……」
「俺は幻覚を見てるのか? これは現実なのか? それとも夢なのか? なんでお前がシルバーフェニックスの姿をしてるんだろう? それとも、俺の眼がどうにかなってしまったのか? 何がどうなってるのか、しばらく理解することができなかった」
「……」
「でも、これは夢や幻覚じゃなく、現実に起こってること。お前は、シルバーフェニックスだった」
「……」
「その事を受け入れられたとき、今まで疑問に思ってたことが、すべて解けた」
「……」
「そして、これからどうしたらいいか、考えた。グループのこと。お前のこと。任務のこと。俺の目標」
「……」
「一つずつ考えた。そして、出した答えは、このまま、今までどおり続けていく」
「エッ?」
「お前がシルバーフェニックスだったからといって、何か特別に変える必要はない」
「……」
「俺は、目標に一歩近づいたと思ってる」
「目標に?」
「前にも話しただろう。俺の目標はお前たちの人権を認めさせ、狩りを止めさせることだと。そのためにお前たちと話したいと」
「……」
「だから、その事について、お前と話したい」
「……」
「今の状況をどうしたらよくできるか。お前たちはどういう考えを持ってるのか。これからどうしていこうと考えてるのか。それらを話し合って、俺にできることがあったら、協力したい」
「……」
「今は、そう思ってる」
「……」
「だから、お前を利用して何かしようとか、グループを潰そうだなんて思ってない」
「信用すると、思う?」
「信用してほしい」
「……無理よ」
「……なぜ?」
「……今まで、同じようなことを言って、近づいてきた人間が、何人いると思う?」
「俺は、本気でそう思ってる」
キラは、信じられないと首を横に振る。
「俺は正直に話した。ウソ偽りは一切ない。お前が信じられないと言う気持ちはわかる。だが、一緒に保護活動してきて、俺がどういう人物なのか、理解してくれてると思う」
「……」
「できれば、このまま一緒に続けていきたい」
「……」
「俺は寝返ったりしない。絶対に!」
「……」
「とにかく、今日はゆっくり休め。体力を戻すほうが先だ」
立ち上がると部屋から出ていく。




