11-3 安全な場所の確保
『ティエリオ。少し休まないか? 今日は長距離を移動したから、さすがに疲れてしまったよ』「風の貴族」セカンドのホッフマイスター侯爵が、『少し横になりたいんだ』と言うので『タンデルチェスト子爵。無理はダメだと言われたばかりじゃないですか』「水の貴族」トップのジェシーが声を掛ける。『ティスは大丈夫ですよ。彼に会いに行くためにも、子爵も疲れを取ってください』
『……ああ、そうだな。どうしても気がせいてしまって……』ため息を吐いて肩を落とす。
『フライシュ、ティエリオ』ラルのノートパソコンに映っているグループのボス、キルシュが声を掛ける。『まずは、君たちが動けるように体力を回復させてくれ』
『……ああ、わかってる』
『組織と組んだほうがいいか、気になるのか?』
『当然だろう?』顔をあげるタンデルチェスト子爵が『私たちは、ほんの数日前まで、人間に拘束されていたんだぞ』
『我々の敵である悪しき人間にな。しかし、我々も全員が善者でないように、人間も全員が悪人ではないんだよ』
『……それは、理解してるつもりだよ。だが、今はそう思えないんだ……』
『キルシュ様は組織と組むことに対して、どう考えておられるのですか?』「水の貴族」トップのジェシーが話を逸らすと『私も気になっていたんだよ。どうするつもりなのかね?』「風の貴族」セカンドのホッフマイスター侯爵が話に入ってくる。
当然、「風の貴族」トップのファルークや「風の精霊」の女王エミアも、「水の貴族」サードのジュリアスもグループのボス、キルシュの言葉に耳を傾ける。
『それでは、先にグループの意思を伝えておくことにしよう。我々は、その組織と組む予定でいる』
この返答には、全員が衝撃を受けた。
しばらく沈黙が続き、誰も動かない。
『……そう、ですか』最初に口を開いたのは、「水の貴族」トップのジェシーだった。『では、その考えに至った理由を、教えていただけますか?』戸惑いつつ聞くと『そうだな』と言ってキルシュは少し間を開けると、理由を話しだす。
『理由は三つ。
一つ目は組織の責任者であるアディという青年と、闇のジルタニスの存在だ。
調査するために組織に入ってる姪とショウ君からの情報と、みんなも見てもらった動画に出てくる保護施設は、人間が造ったどの保護施設よりも完璧だ。
ショウ君たちが最後の仕上げを手伝ったそうだが、それでも、かなり我々について細かく調査し、造ってあるそうだ。
情報収集については、闇のジルタニス以上の調査員はいないだろう。
さらに、あの施設を短期間で造ってしまうくらい、協力する人材と行動力を持つアディという青年は、一種のカリスマだと言わざるを得ない。




