2-2 宙に浮くお菓子
『申し訳ございません! 視力が落ちていらっしゃるのに、名乗りもせずお喋りをしてしまい、失礼しました』年上のアウラ リートレが謝罪すると「謝らなくていいよ。こっちこそ、聞いたことがある声なのに、名前が出てこなくて、申し訳ない」
『そんなことおっしゃらないでください! 私たちの名前を思い出していただけただけで、十分です!』自分たちの存在を認識してもらえて、ホッとする年下のアウラ マリスが『今度、ファルーク様とエミア様に、お菓子をお持ちしますね』
『すぐ持ってきて!』エミアが即答するので、オルト以外、大笑いする。
『よほどおいしいのだろうね。私たちもぜひ、食べてみたいものだな』「風の貴族」セカンドのホッフマイスター侯爵が、笑顔で隣の「土の貴族」サードのタンデルチェスト子爵に話を振ると『そんな話を聞くと、こちらでも名店を探しに行きたくなりますね』と盛り上がる。
しかし、一人、話に入れず、つまらなそうなオルトに気付くショウが「オルト、姿は見えないと思うけど、紹介するよ」と声を掛ける。「ラルの右側にいるのがイータル ヴェンティ(風の精霊)のアウラ リートレ。リートレ、チョコレートを左右に振ってみて」
すると、右手で持っている棒状のチョコレートを左右に振る。
「そして、俺の左側にいるのがアウラ マリス。クッキーを振ってみて」
すると、両手でクッキーの小袋を持ち、左右に振る。
「これで、ここに居るってわかるだろう? エミアは、そうだな、ハンカチかタオルとか持ってもらうと、存在がわかるんじゃないかな?」
『それはいい案ですね。タオルを持ってきますよ』立ち上がるジェシーが自分の部屋へタオルを取りにいくと、エミアに渡す。
すると、エミアがタオルを持って左右に振るので「ああ! わかるよ!」ファルーク越しに、宙に浮くタオルが左右に揺れるのを見て「丸太小屋にいたときはスプーンを持ってもらってたから、いることが分かったんだよね」
「エミア」声を掛けるラルが「タオルをショールのように肩に掛けてみて」と言うので広げて肩に掛けると「どう? エミアの輪郭が少しわかるでしょう?」
「すげえ。エミア様、小柄なんだ」感動するオルト。「最初からこうしてもらえばよかった」
「そうしたら、ラルはリートレ。俺はマリス。できれば、ファルークにエミアが言ったことを代弁してくれると、オルトも会話に付いてこれると思う。いいかな?」
『もちろん。オルトをのけ者になんかできないからな。気付かなくて悪かった。わからなかったらそう言ってくれ』
「ファルーク。悪いな」
『なに言ってるんだ。洞窟の中にいたとき、オルトは俺の目の代わりをしてくれてたじゃないか。今度は俺が耳の代わりをやるよ』
『それでは、全員の紹介が終わったので、そろそろ本題に入りましょうか』ジェシーが話を進める。
そして、エミア御所望のお菓子は、後日、改めてショウが買いに行き、年上のアウラ リートレと年下のアウラ マリスが持っていくことで収まり、本題に入る。




