6 まわりはじめる運命の輪
しばらく走ると「あら、この先にジュエリーハウスがあるらしいわ。ちょっと寄ってかない?」助手席のキラが道路脇に立っている案内板を指すので「食事はどうすんだよ」
「夕飯までまだ時間があるじゃない」
「……女性は宝石に目がないからな」
案内板どおりに車を走らせていくと「あれよ!」左側に、ジュエリーハウス入り口と書かれた大きな看板を指す。
左折して駐車場に入ると、正面奥にSF映画にでも出てきそうな変わった形の三階建ての建物が建っていて、ライトアップされていた。
「まあ! きれい!」
「女性が好きそうな作りだな」
建物の入り口に近いところに車を停めると受付でチケットを買い、中に入る。
時間が遅いせいか、中はガランとしていた。
「人が少ないほうがゆっくり見られるわ」キラは上機嫌。
男性にしてみれば、色の付いたガラス玉にしか見えないのだろう。
「まったく、疲れはどこに吹っ飛んだんだ?」ショーケースにへばり付いて歓声を上げる姿に呆れると「まあ、この作品の素晴らしさがわからないの?」
「芸術作品として見ればすごいけど、そんなもの、一体誰が付けんだよ」
「そんなこと言うんだったら、この前ショウが見てた腕時計にだって言えるじゃない」
「利用価値が無ければ意味がないだろう。腕時計には立派な利用価値がある」
「手の届かないようなバカ高い腕時計の、どこに利用価値があるのよ」
「あのモデルのデザインのよさや機能性を知らないから、そんなことが言えるんだ」
「そっくりそのまま言い返してやるわ。色や素材の特性を生かしたデザインの素晴らしさがわからないの?」
「何だと」
「なによ」
「そんな小さな宝石のどこに利用価値があるんだよ」
「ボンクラにはわからないわ」
「何!」
「さあ、次はどんなものが置いてあるのかしら?」無視して先へ進むので「ちょっと待て! 今の発言を取り消せ!」
次の展示室に入っていくキラを追っていくと、突然、ものすごい閃光とともに爆発が起こった。
一瞬にして部屋の中が瓦礫の山となり、モウモウと煙が立ち込めると、あちこちから火の手が上がる。
「キラ!」
警報装置が鳴り、スプリンクラーから水が噴き出してくると、部屋の南側にある窓ガラスが吹き飛んでしまったので、そこから風が入ってきた。
しばらくすると鎮火してきたので、ビショ濡れになりながら展示室へ入ったが、キラの姿がどこにもない。
「キラ!」
改めて部屋の中を見回すと、どうやらこの部屋には人がいなかったらしく、人影は見当たらない。
爆発物は部屋の北側にあったようで、壁に大きな穴があいている。
ショウはキラの携帯に電話するが、コール音が鳴るだけで一向に出ない。
もしかしたら、気絶してて電話が鳴っていることに気付かないのかもしれないと思い、バイブルの音が聞こえるか、幾つか部屋を回ってみたが見付からなかった。
そのため一旦捜すのをやめて、ケガ人の手当てに回った。
「警察に連絡したか?」傍にいた従業員に聞くと「先程しましたが、市内のコンサートホールでも爆発があったらしく、そちらへ行ってるので、到着が遅れると言われました」
(俺たちが仕掛けたヤツだ)
「じゃあ、救急車は?」
「それはすぐ来ると思います」
爆発が起きた時間が閉館時間に近かったこともあってケガ人は少なく、ケガをした人も大したことはなさそうだったので、一ヶ所に集めて救急車が来るのを待つよう言うと、再び建物の中へ入った。




