46-3 結界からの脱出
それからしばらくの間、日が暮れていくモヤの中を歩いていき、洞窟の入り口前に着くと、タンデルチェスト子爵が振りかえって『これから結界の出口を開けてくるから、みんなはここで待っててくれ』
『子爵。私は洞窟の奥へ行けません。どうしたらいいですか?』エミアが心配そうに聞くので『出口を開けたら風が通るから、心配ないですよ』
『そうですか。良かった』笑顔でファルークと懐中電灯の確認をするエミア。
その二名の横で、オルトが不思議そうな顔をしているので『オルト、どうしたんですか?』ジェシーが声を掛けると「エッ、いや、俺にはエミア様の姿も声も聞こえないからさ」
『ああ、そうでしたね』
「やっぱり俺たち人間と違うなって、こういうとき思うよ。俺たちにできないことができるから、羨ましいね」
『プラスマイナスはあるよ。ファルークはまだ視力が戻ってないし。優劣の差ではなく違いがあるからこそ、お互いを尊重し合うべきだと思うけど』
「そうだな。そうあるべきなんだろうな」
その後、タンデルチェスト子爵が懐中電灯を点けて洞窟の中へ入っていき、しばらく待っていると、奥からバコッ、ギギギギギギギギギ―――ッ、と、背中がゾクゾクするようなすごい音が聞こえてきた。
『今の音を聞いて巨大ナメクジが来ませんか?』周りを警戒するジュリアス。
『今のはちょっとヤバいかもしれない』ジェシーはドスドスという足音と、地響きがしないか耳を澄ます。
『もし来たら洞窟の中に入ればいいから、そこまで神経質にならなくても大丈夫だよ』ホッフマイスター侯爵が落ち着くように言ったとき、洞窟の奥から風が吹いてきた。
『結界の出口が開いたのね』エミアの長い髪がたなびく。
「こんなに風が吹いてくるような穴なんか、奥にあったかな?」悩みはじめるオルト。「ファルーク。洞窟の奥に、風穴なんかなかったよな?」
『ああ。俺がいたとき風通しがなかったから、外に通じる穴はなかったぞ』ファルークは顔に当たる風の匂いを嗅いで、『これは結界の外から来る風だ』右手を上に向けると、吹いてくる風が掌の上で小さな竜巻を作る。
「さすが「風の貴族」。風の匂いだけでどこから吹いてきたのかわかって、掌の上で竜巻を作るなんて、すごいな」
『これで、外に出られると証明されたから、もう少しだよ』同じ「風の貴族」のホッフマイスター侯爵が笑顔で話す。
すると、洞窟の奥からタンデルチェスト子爵が『出口を開けたから来てくれ!』と声を掛けてくるので、携帯用の懐中電灯を点けるエミアがファルークの手を引いて中に入ると、ジェシーたちも懐中電灯を点けて続く。
奥へ歩いている途中、『どうやら巨大ナメクジに気付かれなかったようですね』ホッとするジュリアス。
『これで会うことはないだろう。やっと安心できるよ』笑顔のジェシー。
『巨大ナメクジはそんなに大きいのか?』前を歩くファルークが聞いてくるので『そういえば、この中でファルークだけが巨大ナメクジと会ってないのか』
『オルトから話は聞いてるけど、会ったことはないね』
「視力が回復したら、いくらでも会わせてやるよ」とオルトが言うので『喜んで遠慮させてもらうよ』
『なんなら、戻って洞窟の前にいたら会えますよ』
『じゃあジュリアス、一緒に行くか?』
『絶対行きません!』




