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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第八章 ルナノヴァ国の秘密
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46-3 結界からの脱出

 

 それからしばらくの間、日が暮れていくモヤの中を歩いていき、洞窟の入り口前に着くと、タンデルチェスト子爵が振りかえって『これから結界の出口を開けてくるから、みんなはここで待っててくれ』


『子爵。私は洞窟の奥へ行けません。どうしたらいいですか?』エミアが心配そうに聞くので『出口を開けたら風が通るから、心配ないですよ』


『そうですか。良かった』笑顔でファルークと懐中電灯の確認をするエミア。


 その二名の横で、オルトが不思議そうな顔をしているので『オルト、どうしたんですか?』ジェシーが声を掛けると「エッ、いや、俺にはエミア様の姿も声も聞こえないからさ」


『ああ、そうでしたね』


「やっぱり俺たち人間と違うなって、こういうとき思うよ。俺たちにできないことができるから、羨ましいね」


『プラスマイナスはあるよ。ファルークはまだ視力が戻ってないし。優劣の差ではなく違いがあるからこそ、お互いを尊重し合うべきだと思うけど』


「そうだな。そうあるべきなんだろうな」


 その後、タンデルチェスト子爵が懐中電灯を点けて洞窟の中へ入っていき、しばらく待っていると、奥からバコッ、ギギギギギギギギギ―――ッ、と、背中がゾクゾクするようなすごい音が聞こえてきた。


『今の音を聞いて巨大ナメクジが来ませんか?』周りを警戒するジュリアス。

『今のはちょっとヤバいかもしれない』ジェシーはドスドスという足音と、地響きがしないか耳を澄ます。


『もし来たら洞窟の中に入ればいいから、そこまで神経質にならなくても大丈夫だよ』ホッフマイスター侯爵が落ち着くように言ったとき、洞窟の奥から風が吹いてきた。


『結界の出口が開いたのね』エミアの長い髪がたなびく。


「こんなに風が吹いてくるような穴なんか、奥にあったかな?」悩みはじめるオルト。「ファルーク。洞窟の奥に、風穴なんかなかったよな?」


『ああ。俺がいたとき風通しがなかったから、外に通じる穴はなかったぞ』ファルークは顔に当たる風の匂いを嗅いで、『これは結界の外から来る風だ』右手を上に向けると、吹いてくる風が掌の上で小さな竜巻を作る。


「さすが「風の貴族」。風の匂いだけでどこから吹いてきたのかわかって、掌の上で竜巻を作るなんて、すごいな」


『これで、外に出られると証明されたから、もう少しだよ』同じ「風の貴族」のホッフマイスター侯爵が笑顔で話す。


 すると、洞窟の奥からタンデルチェスト子爵が『出口を開けたから来てくれ!』と声を掛けてくるので、携帯用の懐中電灯を点けるエミアがファルークの手を引いて中に入ると、ジェシーたちも懐中電灯を点けて続く。


 奥へ歩いている途中、『どうやら巨大ナメクジに気付かれなかったようですね』ホッとするジュリアス。

『これで会うことはないだろう。やっと安心できるよ』笑顔のジェシー。


『巨大ナメクジはそんなに大きいのか?』前を歩くファルークが聞いてくるので『そういえば、この中でファルークだけが巨大ナメクジと会ってないのか』


『オルトから話は聞いてるけど、会ったことはないね』

「視力が回復したら、いくらでも会わせてやるよ」とオルトが言うので『喜んで遠慮させてもらうよ』


『なんなら、戻って洞窟の前にいたら会えますよ』

『じゃあジュリアス、一緒に行くか?』

『絶対行きません!』


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