45-1 館で行われたパーティの絡繰り
『まあまあ、この辺で一旦終わりにしよう。確証がないのに、一緒に行動してきた仲間を疑うのは良くないからね』
ホッフマイスター侯爵が、悪いほうへ話が進んでいきそうになるのを止め『そろそろいい匂いがしてきたので、我々の食事ができてきたんじゃないかね?』
オルトを見ると「これからパンを焼くので、腹の虫が鳴かないように気を付けてください」と冗談めかして言うと、温めておいたオーブンにパンの種を入れる。
その後、キッチンのテーブルでは人数分の椅子がないので、今いるソファで食事を取ることになり、ジュリアスとエミアがプレートに乗ったモーニングセットをそれぞれの前に置いていく。
「あり合わせですが、野菜と乳製品のモーニングセットを作ってみました」オルトが焼きたてのパンを持ってくる。
『これはおいしそうだね』フォークを取るホッフマイスタ―侯爵。
『私はマッシュポテトが好物でね。これは期待できそうだな』笑顔のタンデルチェスト子爵。
『このパンはオルトが手作りしたんですか?』ジェシーが目の前に置かれたバスケットの中で、焼きたてのパン独特の、パリパリという表面が冷えて音がする現象を聞くと「そうですよ。ここではネットも通じないからやることが限られてて、野菜作りと料理は本を送ってもらってマスターしたんだ」リビングの棚に置いてあるかなりの量の本を指す。
『このコーンスープはおいしいね。しかし、癖のあるこのミルクはどうやって手に入れたのかね?』ホッフマイスター侯爵が笑顔で聞くと「野生のヤギがいるんですよ。なので、餌付けをして、食べにくる時間に搾ってるんです」
『そんなことまでできるのか。それでは、どこへ行っても生活ができるね』タンデルチェスト子爵はバケットが気に入ったらしく、バリバリ音を立ててパンをちぎると、コーンスープに浸しておいしそうに食べている。
『館の料理はなにが入ってるかわからなかったから、量を食べることができなくてね。今日は腹いっぱい食べたいね』
「チーズも野菜もマッシュポテトもたくさんあるので、お替わりしてください」
『是非、このパンも焼いてもらいたいんだが』
「わかりました。まだ種があるのでもう少し焼きましょうか」
オルトが冷蔵庫からパンの種を取りだして、オーブンで焼きはじめる。
『ティスとシルビアは大丈夫でしょうか』ホッフマイスター侯爵の話を聞いて、心配になるジェシー。『あの鏡のせいで正体がバレてしまったので、心配です』
『両隣の領主たちが持ち込んだんですか!』驚くジュリアスに頷くと『招待客は順番にある部屋に通されて、そこで何もなかったら次の部屋に入って、そこでも何もなかったら奥の大広間に通されることになってたらしいんだ。
しかも、最初の部屋にはお二方がいらして、次の部屋に例の鏡が置いてあったんだ。
最初の部屋にお二方がいたのは、気付いたときの反応を見るためらしい。実に単純だけど、すぐに反応がわかるやり方だよね』




