43-1 結界を張った森の秘密
『夜間の見回りの代わりに造ったんだ。いくら結界を張ったとはいえ、百パーセント安全とは言えないからね。念には念を入れたんだよ』
『だからといって、どうして森の中なのにサーバルキャットなんですか? 確か、サバンナに生息してませんか?』
『サーバルキャットが夜行性だからだよ。しかも俊敏で用心深い。見回りにうってつけだと思ったんだ』にこやかに答えるタンデルチェスト子爵。
『そういえば、お二方がこの森に結界を張られたんですよね?』
『そうだよ。しかし、そろそろ木の上にあがったほうがいいから、説明は明日でいいかな?』
『ああ、はい、わかりました』
三名はそれぞれ一晩明かすための木を選び、上にあがる。
ジェシーが『また木登りですか』登りやすそうな木を選んだので時間をかけずに上がると、ホッフマイスター侯爵は風を起こして風圧で上がり、タンデルチェスト子爵は足元の土を盛り上げて、難なく上にあがる。
『ここでそんなに力を使って大丈夫ですか?』ジェシーが心配すると『オイオイ、ここは我々が張った結界の中だよ』ホッフマイスター侯爵が苦笑するので『そうでした。すみません』
『それでは、明日は何時に起きるかね?』
『タンデルチェスト子爵。丸太小屋を探すと言われてましたけど』
『そうだよ。ここからだと少し時間が掛かるから、午前八時くらいにしようか?』向かいの木の上から返事をする。『朝食は丸太小屋に行ったときご馳走になれるだろうが、道すがら、木の実や果物があればそれを食べればいいだろう』
『その丸太小屋に、誰かいるんですか?』
『ああ、まだいるはずだよ。そういえば、彼に物資を届けてくれるように頼んだ彼女にも、会わないといけないな。ここから出たら、もう物資を届ける必要がなくなるからね』
『そうだな。ここから出たら会いにいこう』同意するホッフマイスター侯爵に『誰なんですか?』と聞くと『彼女は「水の準貴族」の娘だよ』
『私と同じ種族ですか?』
『ああ、そうだね。会ったときに紹介するよ。さあ、今夜はもう遅いから、そろそろ休もう』
その時、木の下をなにかが徘徊していることに気づき『下になにかいますよ』目を凝らして見ていると『あれは、さっき話した見回り役のサーバルキャットだよ。話し声を聞いて侵入者だと思ったんだろう。静かにすれば見回りにいくよ』
『そうなんですか?』さっきから驚くことばかり続くので、疲れてくるジェシー。
『では、おやすみ』タンデルチェスト子爵が会話から抜けると『ではジェシー、寝坊しないようにな』と言うホッフマイスター侯爵も『お休み』と言って目を閉じる。
しかし、さすがにジェシーは寝付くことができず、悶々といろんなことが頭の中を駆け巡っていた。
両隣の領主たちに捕まってしまったティスとシルビアのことが心配なうえに、ジュリアスとエミアも連絡が取れず、結界が張られている森の中にまた来てしまったので、ショウとも話すことができない状況となっていることに気づいてしまった。
『とはいえ、この森で起きている、いえ、ルナノヴァ国で起きている事件の真相を知るお二方を助けることができたのは、大きいですよね』
とにかく明日、どんなことが判明するのか、真相が明らかになるだろうと思うと少し落ち着いてきたので、そのまま寝ることにした。




