4-3 再びご対面
バシャバシャバシャ。
「アーッ、ひどい目に遭った! あの匂いがまだ鼻に残ってるぞ」
靴についた汚水を公園の水道水で洗い流す。
「まったく、前回といい今回といい、もっとまともな逃げ道を考えられないのかよ」
「あんたを助けに行ったんじゃないのよ! 前回といい今回といい、どうして邪魔するの!」
「邪魔してんのはそっちだろう! お前がシャシャリ出てきたお陰で、俺たちの作戦がパアだよ!」
「なんですって!」
アンジュを挟んで火花を散らしていると「お兄ちゃんお姉ちゃん、アンジュ眠い」目をこすりながら訴えてくるので「アッ、ごめんね。そうだよね。まだ午前三時だもん、眠いよね」
「牢の中じゃ、ゆっくり寝られなかったからな」
彼女の存在をすっかり忘れていた二人、深く反省。
「早くお家へ帰ろうね」しゃがんで声を掛けると「うん」と小さく返事をする。
彼女の手をとり、歩きだすキラの後ろからショウも付いてくるので「なんで付いてくるのよ。自由になったんだから、自分の家に帰りなさいよ」
「アンジュをどこへ連れてくんだよ」
「あんたには関係ないでしょう?」
「関係なくないだろう。どこへ連れてくのか言えないんだったら、俺が連れて帰る」アンジュの腕をつかんで自分のほうへ引き寄せるので「何するのよ! 危険なあんたに預けられるわけないでしょう!」自分のほうへ引き戻す。
「何者なのかわからないお前に、アンジュのことは任せられない!」
「それはこっちの台詞だわ。あんたが何者なのかわからないのに、彼女のことを任せられますか!」
「そういやあ、エレナをどこへ連れてった」
「それこそあんたに関係ないでしょう?」
「あの時は不意を付かれて連れてかれたが、今回はそうはいかないぞ」
「今回も邪魔なんかさせない」言い返すと、ショウの前に立って目を合わせる。
「エッ、アッ、ブルーグレーの瞳……」
トントン。
「ちょっと」
警官に肩を叩かれて我に返ると「こんな時間に公園の真ん中に突っ立って、何してるんだね?」
「エッ? 何って、連れと……」
「連れ? どこにいるんだ?」
「どこって、あれ?」
辺りはすっかり明るくなっていて、ジョギングしている人がチラホラ見える。
「ハクショーン! さむっ」
どうやら三時間くらい立っていたらしい。
「彼女にフラれたのか?」
「どうなってんだ?」置かれている状況が理解できず、考え込むと「そうか、フラれちまったのか。かわいそうに。ショックで立ったまま気を失っちまったんだよ。あんまり気を落とすな。いい女は山ほどいるから」
同情の言葉を掛けると、警官は見回りを続けるために去っていった。
「なんでこんな所にいるんだ? 確かあの時、キラがいきなり目の前に来て……」
ドキッ!
「な、なに考えてんだ!」頭を振って妄想を払い除ける。
「それにしても、きれいなブルーグレーの瞳だったな……瞳、アアッ! 催眠術だ!」
見事に掛かって、またもや逃げられてしまった。
「あの野郎。今度会ったら、この借りは倍にして返してやるからな。チクショーッ!」




