35-2 「森の幻想」と「水の貴族」
「そうすると、次の物資補給依頼はどうしたらいいかな?」ジュリアスに聞くと『まだしばらくここに居ますか?』
「いるわけねえだろう。一緒に行くよ」
『そうですか。では、いつもどのくらいの物資が届きますか?』
「そうだな。大体一週間から十日くらいだな。肉や魚類は長く持たないから」
『そうなると……ハーブ園に行って出口を確認後、ファルークの体調を確認してから、どうするか決めたほうがいいですね。今の時点では、本当にここから出られるかわかってませんから』
「そうだな。わかった」
その後、相変わらず数メートル先が見えないモヤの中を歩いて丸太小屋まで戻ると、エミア以外は中に入り、「隣の寝室に簡易ベッドを用意してあるから、手足を伸ばしてゆっくり寝ろよ。洞窟の中じゃ、硬い木の板の上で寝てたからよく寝られなかっただろう?」
『ああ、体が痛くて何回も起きることがあったよ。ベッドで寝るのは何年ぶりだろう』
『そういえば、土の格子の中に木でできた簡素なベッドがありましたけど、あれはオルトが運んだんですか?』
「そうだよ。さすがに土の上でずっと寝かせるわけにいかなかったから、格子の間を通せるくらい細いものを大量に作って、少しずつ中に入れたんだ」
『定期的にシーツとタオルケットを交換してくれたから、清潔な状態で寝られて助かったよ』
『そこまでしてくれるのはどうしてですか?』オルトに聞くと「エッ? 今さらそんなこと聞くのかよ」
『ジュリアスは、まだ人間かそうじゃないかを分けて考えてるのか?』
『当然ですよね?』
『……ジュリアスの気持ちはわかるが、オルトは人間でも、俺の古くからの友人なんだ。俺のために何年も世話をしてくれた。だからといって、ジュリアスの気持ちを軽んじるつもりはないよ。しかし、俺の友人を疑うことはしないでほしい』
「ファルーク、いいよ。彼の立場からしたら人間の俺は敵だろうからな。それは会ったときからわかってたよ」
『人間にも、私たち側に立ってくれている者がいることはわかってます。なので、ファルークのために何年も世話をしてくれたことに対しては、お礼を言わなければならないと思っています』
『そう言ってくれると嬉しいよ』ファルークは笑顔になるが「俺の立場を理解してくれたことは嬉しいけど、どうして考えが変わったのか、知りたいな」オルトが疑問を投げると『そのことは知る必要ないです』
「相変わらずそっけない奴だな」苦笑するが「とにかく、ファルークは横になって疲れを取れよ。昼食になったら起こすからさ」
『そうさせてもらうよ』
ジュリアスが寝室の簡易ベッドまで連れていくと、オルトが部屋の窓を開け「エミア様。窓を開けていれば入れますよね? 昼間は開けておいても大丈夫なので、ファルークの傍にいてやってください」窓の外にいるであろうエミアに声を掛けると、予想どおり窓から中を見ていたエミアが『いいの?』驚いた顔をする。




