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シルバーフェニックス戦記 ~護るべきものは~  作者: 夏八木 瀬莉乃
第二章 任務のパートナー
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13 仮初の相棒


 二人は朝食を済ますとタクシーで最寄り駅へ向かい、午前十一時の特急に乗ると、自由席に並んで座った。


 この大陸には小さな国がたくさんあるので、国に入るたびに入国検査を受けなければならないが、特急列車の場合、乗り込む駅で検査を受ければ、目的地までの通過パスをもらえる。


 列車は一旦海岸沿いを走るが、途中から内陸部へ向かうために進路を変える。

 大きな街を幾つも通り、二つ目の国境を越えたころになると、ランチを乗せた車内販売のワゴンが回ってきた。


 長距離を走る特急列車なので食堂車が付いているが、二人はサンドイッチとドリンクのセットを買い、席でお昼を済ませると、通路を挟んだ斜め後ろの席に座っているサラリーマン風の乗客二名が、お昼を食べて戻ってきた。


「さっきのニュース、驚いたな」


 三十代前半に見えるやり手風の男が、金縁メガネを掛けたインテリ風の連れの男に声を掛けると「さっき、ネットの裏情報サイトに、老師が複数ヶ所に幽閉してたシルバーフェニックスがすべて盗まれたと出てたぞ。あの爆発は、盗みに入った狩り人が例の鏡を壊すために仕掛けたものだろう? これで、老師の名は落ちたな」


「金融界はこれから荒れるぞ。なんと言っても、トップ二人が相次いで失脚したからな」


 アレンと老師のことである。


「噂では今、金融関係の大物が狙われてるそうだ。この前、大手銀行の頭取がやられたと言ってたのを聞いたぞ」

「あの頭取は仕方ないさ。銀行の金を横領して、その金で狩り人を(やと)い、シルバーフェニックスを捕まえてたんだからな」


「人生を掛けた大捕り物だな。まあ、俺たちには真似できないことだが」

「そうでもないぞ」急に小声で話しだす。

「どういう意味だ?」相方も声を潜める。


 少しの間、話し声が止まった。辺りに人がいないか確認しているらしい。

 キラたちが寝たフリをすると、また話し声が聞こえてきた。


「俺が担当してる大きな画廊の社長が、俺が銀行に内緒で融資したことにえらく感謝して、例の鏡を何枚か持ってるから、融資を続けるという条件で、一枚(ゆず)ってくれると言ってきたんだ」


「本物なのか?」

「もちろん。その証拠に……所有してるシルバーフェニックスを見せてくれたよ」


「実物を見たのか!」

「シッ! 声が大きい」

「あ、ああ、すまん。で、どうだった?」


「一回見たら、お前も(とりこ)になるぞ」

「そんなにすごいのか?」

「すごいなんてもんじゃない。どんな事をしても手に入れたくなるくらい神秘的だぞ。どうだ、お前もこの話しに乗らないか?」

「もちろん、加わらせてもらうよ」


 その時、近くの席の乗客が戻ってきたので、この話は終わってしまった。



 そして午後二時過ぎ、キラたちはお茶を飲むために食堂車へ行った。

 二人は一番奥の席に座り、それぞれ注文する。


「あの二人のこと、調べるんだろう?」ウエイトレスが下がるとショウが聞いてくる。

「もちろんよ。バカな二人ね。あの話は絶対成功しないのに、もう彼らを手に入れた気でいるわ」


 そんな彼女の前に小さな機器を置く。


「何これ」

「発信機だ。さっき奴らの一人に付けてきた。これで彼らが幽閉されてる居場所が(つか)めるだろう」

「……ショウ」


「俺たちには次の任務があるから、奴らを追えないだろう?」

「……ありがとう」受け取るとバッグにしまう。



 そして、目的の駅に着くと指定されたホテルにチェックインし、早速任務に取り掛かると幽閉されていた四名のシルバーフェニックスを救出し、彼らを幽閉していた金融関係の大物は数日後、失脚した。



『もしもし、私です。今回の任務は完了しました。彼らはそちらに着きましたか?……そうですか。ああ、あの銀行マンはどうなりましたか? ええ、画廊とつるんで狩りをやろうとしてた銀行マン二人です……そうですか、無事救出できたんですね。よかったです。ええ、そうですね。彼が発信機を付けてくれたお陰ですね……はい……では、次のデータを送ってください……じゃあ』


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