10-2 結界からの脱出
二人は並んで周りをグルッと見ていくと『どっちへ行ったらいいと思いますか?』
今いる場所の周りに生えている木は思ったほど高くなく、葉は覆い茂っているが、まだ日が高いので木漏れ日が漏れてくる。
『それを俺に聞くのか? 結界の特徴について、ジェシーのほうが詳しいだろう?』
『それはそうですが、森の中はティスのほうが詳しいでしょう?』
『……埒があかないな。じゃあ、せ~ので、行きたい方角を指さしてみようか。せ~の!』
二人が刺した方角が見事なくらい一致しているので『どうしてこっちにしようと思ったんだ?』
『獣道だからです』左奥に伸びている細い獣道がずっと気になっていたジェシー。『最近、なにかが通った足跡があるので、小動物が結界に閉じ込められているんだと思います』
『まあ、小動物と言ってもキツネやタヌキだけじゃないから、注意して進むのは常識』
『では、行きましょうか?』
『そうだな、と言いたいが、獣道は結界の境界線にはいかないだろう。動物は正直だから、先へ進めない場所に何回も行くことはない。だから俺たちは、獣道と反対のほうへ行くべきだ』
『じゃあ、どうして獣道のほうを指さしたんですか?』
『ジェシーが指すだろうと思ったからだ』
『クイズをやってるんじゃないんですよ』
『でも当たったじゃないか』
『……わかりました』早く話を終わらせたほうがいいと思い『でも、ティスの見方もありますね』と言うと『森の中を探検したことないのか?』
『ありません。僕は「水の貴族」なので』
『……余計なこと言った』自分は子供のころ、いつも森の中を探検していたので、みんな同じだという先入観があった。
そのため、バツが悪そうな顔をして、獣道と逆のほうへ歩きだす。
『森の中ではありませんが、川下りやカヤックなら得意ですよ』結界の奥へ行きたい気持ちはあるが、今は結界から出ることが優先なので、諦めてティスのあとを付いていくジェシー。
しばらく歩いていくと、人の手が入っていないと聞いているが、妙に整えられている森の中を進んでいき、いつの間にか鳥のさえずりが聞こえてきて、のどかな雰囲気が漂ってくるので緊張感が抜けてくる。
『森の中も、暖かいと気持ちがいいですね』木の根元に印をつけていくジェシーがふと右奥を見ると、さっきティスが見ていた赤い花と同じ花が咲いている場所があった。
『あの花はこの森に自生してるんでしょうか。あちこちに咲いてますよね』と言ったとき『ジェシー! 戻れ!』振り返るティスがジェシーの腕を掴んで、来た道を走って戻っていく。
『どうしたんですか!』
『同じ場所を行ったり来たりしてるんだ!』
『どうしてそんなことがわかるんですか!』
『さっきは、あの赤い花が左側に見えてたんだ!』
『そんなことがあるんですか!』と言ったとき、後ろからドスドスドスと、地響きをさせて走ってくるなにかが現れた。




