9-3 森に隠れている者は
「ワアアアアアアッ」ラルが大声を出すので「どうした!」ショウが慌てて戻ってくると「ワアアアアアッ」大泣きしているので「わかった! ラルの言うとおりにするから泣くな!」
「ワアアアアアッ」
「これ以上泣いたら、また先生に怒られるぞ!」と言うと、ピタッと泣き止む。
「まったく、俺がキッチンで寝ればいいんだろう?」
そう言うと、唇をかみしめて上目遣いで見るので「じゃあ、どうすればいいんだよ。そういえば、ラルの部屋側の隣の部屋が空いてたな。そこを借りて、ファルークを養生させるのはどうだ?」
そう言っても、恨めしそうにショウを見上げるので「他にどうしろと言うんだよ」
「それは……それは……」
「また、貴族特有の何かがあるのか?」と言うと、また上目遣いに見るので「なにがあるんだ?」
「それは……」
「そこまで言って黙るのはなしだぞ」
「わかった。でも、誰にも言わないで」
「誰に言うんだよ」
「お友達の刑事さん」
「ああ、レンか。ラルたちのことは一言も言ってないし、言えないだろう?」
「でも、重要な情報と引き換えに……」
「引き換えにできることじゃないだろう?」
「でも……」
「じゃあ、細かいことは言わなくていい。なにがどうなるから、どうしたらいいんだ?」
すると、ラルは少し考えて「ファルークは、と言うより「風の貴族」は、同じ場所に留まっていると視力が低下するから、回復するまで、傍で手助けしてほしい」
「どうし……わかった」いろいろと聞きたい衝動に駆られるが、我慢すると「じゃあ、彼の受け入れ場所を用意してくる」部屋から出ていこうとすると振り返り「顔を拭いとけよ。ああ、ゴシゴシ擦るな」と言って出ていく。
そして、ジュリアスがショウと電話で話している頃、二重の結界に捕まってしまったティスとジェシーは、どうやって二つ目の「螺旋の迷路」を突破しようか、ところどころに日の光が差し込む森の中で、木の下に座って話し合っていた。
『また「水のエネルギー」は使えねえからな』
『わかってます』普通に答えるので『さっきも聞いたが、どうして「水のエネルギー」を使ったんだ?』
『それは……』
『どんな理由があるんだよ。お前自身、体力を消耗させてまで、「螺旋の迷路」を破る必要なかっただろう?』
『それはですね……僕たちの危機を知らせるためです』
『なんだって?』
『森の西側にある湿地帯には、女王ウィルシーたちやジュリアスがいるはずです。なので、僕らが罠にはまってしまったことと、彼らまで囚われないように注意するよう、わざと使いました』
『なるほどね……まあ、それしか手はないか』
『あの時は、ほかに思いつきませんでしたから』




