8-4 ジュリアスの推理
「ジュリアス、どうしたんだ? 電話も通じるのか?」まさか、電話が来ると思っていなかったショウ。聞き返すと『実は、車のところまで戻ってきたんですよ』
「どうして!」
『その理由は、これから話します』
ジュリアスは先ほど確認したことを掻い摘んで話すと「「風の貴族」の誰かが隠れていることは確実だと思います。たぶんファルーク様ではないかと」
「そうなのか。まさか、他にも結界が張ってあるとは……その森には、一体、いくつの結界が張ってあるんだ? そもそも、そんなにたくさんの結界を、同じ場所に張ることができるのか?」
『異なる性質のものであれば、重ねて張ることは可能です』
「そうなのか?」
『「土の貴族」の「森林の迷宮」は霧や靄で方向感覚を狂わせ、「風の貴族」の「螺旋の迷路」はクリーチャーの餌食に。同じく「風の貴族」の「彷徨う影狼」は見張り兼、動く捕獲機というところでしょうか』
「対、不法侵入者、撲滅計画みたいだな」説明を聞いて、ショウの予測装置がフル稼働しはじめる。
「でも、これだけ騒ぎを起こしても、誰も姿を現さないのは、ティシャもファルークもあの森にはいないと考えることもできると思う」
ショウの隣で、オープン設定の携帯から聞こえてくるジュリアスの話を聞いて、ラルが意見を言うと『私もその可能性を考えましたが、いない、とは言い切れないと思います』
「どうして?」
『まだ森全体を調べたわけではありませんし、自分の周りに結界を掛けている可能性もあります。なにより、多種多様な植物が自生してるだけでなく、これだけ複雑で広大な森が長年存在していること自体、私たちの誰かがいると思わなければ説明が付きません』
「……確かにそうだね」納得するラル。「イベントのアイテムであるピンクのフルーツ シンチェリタス(真実)も、その森にだけ自生してると言われてる特別な植物だものね」
「それで、ジュリアスはどうしようと考えてるんだ?」ショウが聞くと『正直、もう一度、森の西端に行って、森の中を調べてみたいと考えてます』
「なにがあると思ってる?」
『たぶん、私たちだけが通れる道があると思います』
「……なるほど」
『ほかの場所も調査してみないとわかりませんが、おそらく、他の場所にはトラップが仕掛けられていて、森の中に入ることができないのでは、と考えてます』
「しかし、イベントの目的は、ピンクのフルーツ シンチェリタス(真実)を採ってくることだぞ。森に罠が仕掛けられてたら採りにいけないじゃないか」
『まだ私の予測ですが、例のフルーツは森の比較的南側に自生しているのではないかと推測しています。私は北側からアプローチしたのですが、そのようなフルーツは見かけませんでした。確か、西側の湿地帯近くに自生していると聞いていますが、広すぎて、探すには数日かかるかもしれません』
「そんなに広大な森なのか? 渡り鳥たちの休憩場所として欠かせないところだとは聞いてるが、そこまで広いのか?」
『地図で検索してないんですか?』
「いや、確認はしたが、地図上ではそれほど大きく見えないんだ」
『ルナノヴァの国自体、それほど大きくありませんから、そのことを知らないと、そう見えるのかもしれません』
「ああ、そうだな」
『それで、これからどうするか、あなたの意見を聞かせてください』




