8-2 ジュリアスの推理
ショウからの返信はすぐに返ってきた。
連絡することができて安心したこと。
エミアに様子を見てきてほしいと依頼しているので、合流して状況を伝えてほしいこと。
ジェシーたちは「風の貴族」が掛ける結界「螺旋の迷路」に閉じ込められているらしいと予測してること。
そのため、森の奥へは入らず安全であることを確認後、例のフルーツを見つけたらすぐ湿地帯から移動して、安全な場所へ着いたら連絡してほしいこと。
もし、安全でないと判断した場合は、速やかに移動して、安全な場所から森の様子を観察してほしいこと。
そして、可能性は低いが、「風の貴族」のファルーク、もしくは何者かが現れて攻撃してくるかもしれないので、その時は対応せず、すぐに後退して安全な場所へ避難後、連絡してほしい旨が書かれている。
『「螺旋の迷路」が張られてる? この森に「風の貴族」のファルーク様が隠れているというんですか?』このことにはジュリアスも驚いた。『まったくの予想外ですよ』
しばらくは困惑していたが、冷静になると状況を考え『この森には、目くらましの作用がある「森林の迷宮」が掛けられているはずですが「螺旋の迷路」は敵を一網打尽にする罠です。それを「森林の迷宮」と同時に掛ける理由は……鉄壁の護り。かなり重要な者が隠れてるようですね』
そして『エミア様が来られるのか。でも、女王ウィルシーには内緒にしておかなければなりませんから、どうやって接触したらいいですかね』
ジュリアスは朝早くにルナノヴァの首都ルナプレナを出て、例の森の北側まで車で移動すると、湿地帯のところまで歩き、そこから「水の貴族」らしく、湿地帯の水の上を波紋を作りながら静かに走っていき、森の西側に上がると、フロス アクアエたちに見つからないようにするため、少し森の奥に入った場所で休憩している。
『森の奥がどうなってるのか調べてみたい気もしますが、あのジェシーが抜け出せなかったのであれば、私なんか、到底太刀打ちできないでしょうね』
悔しくもあるが、ジェシーは「水の貴族」のトップ。その彼の力をもってしても、結界に閉じ込められてしまったのであれば、自分だけではどうにもできないことがわかっていた。
『仕方ないので、例のフルーツを探しましょうか』
お茶を飲んで立ち上がると、違和感を感じてすぐにその場にしゃがみこむ。
『急に景色が歪みました。ということは、ここは結界の中? まさか。さっきまでそんな感じはしませんでしたよ』慌てて湿地帯のほうへ四つん這いで移動すると、沼地沿いに北側へ移動していく。
『森の中を移動する結界。「風の貴族」の「彷徨う影狼」ですか。やはりファルーク様がいるのかもしれませんね』




