7-2 「風の貴族」
エミアは嬉しそうにしていたわりにプチケーキには手を付けず、「風の貴族」のトップだけが掛けられるという「螺旋の迷路」について、説明をはじめた。
『「螺旋の迷路」は、閉じ込めた者に同じ景色を繰り返し見せ、最終的に、その先にいるクリーチャーに始末させる罠よ』
「……そうか。わかった」ショウは立ち上がると、自分のノートPCを持って隣のキッチンへ移動する。
「どうしてそっちへ行くの?」ラルが聞くと「ちょっと考えることがあるから。その間、スイーツでも食べててくれ」と答えるので、ラルたちは立ち上がるとキッチンへ行き、ショウの両隣に座る。
「なにしてるんだ?」手を止めるショウ。
「なにをするの?」ショウを見るラル。
『ファルークはもういないの?』と聞くエミアに「……違う」言葉を濁す。
『どう違うの!』詰め寄るエミアに「そうじゃない」
『なにがそうじゃないの!』
「エミア」ラルが抑えると『私たちは、ファルークたちがいないと存在を維持できないの!』
「なんだって?」驚くショウが右側に座るエミアを見ると『言ったとおりよ。逆に、私たちがいないと、彼らは手足をもがれた状態になるの! だから! 私はずっとファルークを捜してたのよ!』
「風の精霊」の女王として、エミアはイータル ヴェンティたちの存在を守らなければならない。その為、「風の貴族」との関係を維持することが、女王の役目の一つとなっていた。
「そういうことなのか……」困惑するショウに「どんな予測をしてるの?」ラルが静かに聞く。
「それは……」言い渋るので「予測の段階なんだから、これから情報を集めて検証するんでしょう?」そういうラルを見ると「……そうだな」
『大丈夫。どんなことを言われても覚悟ができてるから。だから、どんなことを予測したのか、教えて』エミアの切実な表情を見て「ごめん。まだ言えない」と断る。
「ショウ」声を掛けるラル。「ファルークが向こう側に付いてるんでしょう?」と言うので「なぜそう思う?」逆に聞き返すと「そういう顔をしてるから」
「それは、あくまでも現段階での俺の予測だ」
「その予測。今まで大幅にズレたことがないよ」
「……そうか?」
『ショウ! ハッキリ言って!』大声を出すエミア。『ファルークになにが起きてるの!』
ショウは覚悟を決め、自分が予測したことを話す。
「今回の、主犯が彼かもしれない」
「どうして!」頭を抱えるラル。
『今回の主犯て、どういう意味?』さすがのエミアも困惑する。




