6-1 情報の相違
ティスはジェシーの様子を見ながら、これからどうするかを考えた。
(まずは、どうしてここまで結界を重ねて張ってるのか、だな)
普通では考えられない状態のため、どうやって攻略したらいいか、前例がないだけに、リスク覚悟で動くしかないと腹をくくった。
(それにしても、ここまで厳重に隔離してるということは、追ってくる者が強敵なのか、逆に強敵を閉じ込めるために厳重にしてるか、だろうな)
ティスはため息を吐くと(ヤツの予測が当たるのがムカつくが、どうやら当たってるらしい)
ジェシーは疲れからか、仰向けになって寝ている。
(今は動けないから、その間にこれからどうするか、ある程度決めておいたほうがいいだろう)
ティスたちが二重の結界に閉じ込められているとき、組織の調査員たちと行動しているシルビアが、面白い情報を拾ってきていた。
それは、数年前からフェスティバル期間になると両隣の領主がお忍びでやってきて、やはりお忍びでどこかへ出かけ、戻ってくると、領主の館に出向くでもなく、それぞれの国へ戻っていくらしいというもの。
『聞いてた情報と違うところがあるんだよ』
組織の調査員たちが起点としている、街の中心地にあるビルのレンタルオフィスで、調査員のリーダーのレグナル他、数名の調査員と、調べてきた情報について話し合うため、会議を開いていた。
「先の情報ではオルトが両国の領主を招き、イベントを楽しむというものだったが、今回はオルトの招待ではなく、お忍びで来るという点が違うが、なぜ違うのか」
三十代くらいに見える短髪で、中心となっているレグナルが問いかけると『情報は伝わるごとにどこかが変わるから、そのことを踏まえれば、とにかく両国の領主がフェスティバル期間中にルナノヴァへ来て、どこかへ行き、なにかをして戻ってくると、他のことには目もくれず、国へ戻るというところが共通してる事項だから、この点の一致が正確性を高めてると思う』
「確かにシルビアの説は一理ある。しかし、領主のオルトが招待するか、そうでないかの差は大きい。姿を現さない領主がどうやって招待するのか。接待しているところを見たことがないという証言もあるので、やはり、このポイントは調べる必要があると思う」
調査員の一人が意見を言うと『招待するのが、オルトの名を使った従事者だとしたら、なぜ両国の領主を招待するのか。もし、招待していないのだとしたら、どうしてこの時期に二領主が示し合わせたように来るのか。もしかしたら、ここ、ルナノヴァの領主がなにかの理由でどこかに監禁されてて、その確認のために、二領主が毎年来てるのかもしれないな』
シルビアが突拍子もないことを言うので「なんだって!」聞き返すレグナル。「なぜ領主であるオルトを監禁する必要があるんだ?」
『俺は可能性の一つを言ったに過ぎない。そもそも、二領主が自ら出向いてくるということ自体が、異様だからな』
「まあ、確かにその点はおかしいと思う。しかし、オルトを監禁する理由はなんだ?」別の調査員が質問すると『それをこれから調べるんだろう?』とあっさり返す。
「では、リサーチ班は過去、オルトを含む両隣の領主が関わった事件を洗い出せ。その他、裏サイトで情報収集。その他はまた聞き込みに行ってくれ」レグナルが締めくくると、それぞれ持ち場へ散っていく。




