5-3 「螺旋の迷路」
その後、水の流れが螺旋状にあがっていくが、「風の蓋」が上にあるのか、竜巻状の風がジェシーの上に吹き降りてくるので彼の体が床に押しつぶされると、ティスが『我が大地の源』と右手を顔の前にかざし、続きを言おうとすると、ジェシーが
『水のうねりに交えし氷の刃にて、「風の蓋」を刺せ!』
ジェシーの体が水色に輝き、態勢を立て直して竜巻状の風を押し上げると、パーン! と何かが弾け、水しぶきが降ってくると、先ほどまで見えていた町並みが消えて、深い森の中に景色が変わっていく。
水色に輝くジェシーが立ち上がると『バカ野郎! こんなところで正体をバラすような力を使うんじゃねえ!』ティスが駆け寄ると、振り向くジェシーの体から輝きが消え、その場に倒れるのを、かろうじて受け止める。
『ジェシー、起きろ!』ティスがジェシーの頬を叩くと『……ああ。結界は、解けましたか?』
『周りを見ればわかるだろう?』
『……ああ、解けたんですね』
『どうして力を使った? 理由があるうだろう?』
『さあ、どうでしょうか』ゆっくり起き上がると『花を取りにいかないと』
『無理だな』
『「螺旋の迷路」の結界は解いたんですよ? なにを言ってるんですか?』
『お前は根本的なことを忘れてる。どうして俺がここに来たか、忘れたのか?』
『あ……そうでしたね。それで、「森林の迷宮」が掛けられてますか?』
『力を使ったあとのお前にはわからないだろうが、「森林の迷宮」は、この森全体に掛けられてる』
『……そうですか。それで、僕たちはその結界の中にいることになりますよね?』
『そう思うだろう?』ニヤッとティスが笑うので『ハァ』ジェシーはため息を吐き『なにがあるんですか?』面倒くさそうに聞くと『さらに「森林の迷宮」が張ってある』
『は?』
『だから、「森林の迷宮」の中に、さらに! 「森林の迷宮」が張ってある』
『……それで、それらの結界を解くことができるんですよね?』笑顔で聞くと『無理だな』笑顔で返してくるので『その理由は?』
『「螺旋の迷路」も張ってあるからだ』
『……なんですって?』
『「森林の迷宮」と一緒に「螺旋の迷路」も張ってあるからだ』
『本当ですか?』
『お前が寝てる間に周りを少し調べてみたんだが』ティスは立ち上がると『そこにある花とこっちに咲いてる花』と言って、右側の木の下に生えている赤い花と、左側の木の下に生えている赤い花を指し『どう見える?』
ジェシーは言われた二ヶ所の花を見ると、大きくため息を吐き『僕は、トラップが作動するスイッチを押してしまったんですね?』
『そうなるな』頷くティスはグルッと周りを見ると『ここも「螺旋の迷路」の中である限り、本当の森の中じゃない』
『力を使ったので、ちょっと疲れました。少し休んでいいですか?』その場に座り込むと『仕方ないな』近くの木の下へ行って腰を下ろす。




